世界ランキングと日本版ランキングに見る地方国立大学

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東西の国立2大学を、THE世界大学ランキング2019(以下、世界ランキング2019)やTHE世界大学ランキング日本版2018(以下、日本版ランキング2018)で比較し、それぞれの特徴を探ります。

地方国立大学のランクイン状況

 日本には現在、約780の大学が存在し、そのうち86校が国立大学です。さらに、その中でも一般に地方国立大学と呼ばれる、旧帝国大学ではなく、東京都以外に所在する国立大学は69校あります。
 国立大学のメリットの一つは、私立大学と比較して学費が安いことでしょう。そのため、受験校を国立大学のみに絞る受験生もいます。また、自宅から通うことができたり、地域と共同したプロジェクトを行うことができたりする地方国立大学であれば、なお魅力的だといえます。
 現在では、各道府県に1~3校の国立大学が存在します。その中から、受験生が自分に合った大学を選ぶには、どうしたらよいでしょう。
 各大学の特徴を見いだす1つの方法として、日本版ランキング2018や世界ランキング2019を使った大学の比較が役立ちます。
 日本版ランキング2018の総合ランキングには、地方国立大学は47校がランクイン。世界ランキング2019では、ランクインした日本の大学103校のうち、42校が地方国立大学です。

         

東西の地方国立大学を2つのランキングからひもとく

 日本版ランキング2018と世界ランキング2019を用いて、2つの大学のスコアや順位の特徴を見てみましょう。
 ここでは、それぞれ東日本と西日本に所在し、ともに日本版ランキング2018、世界ランキング2019にランクインしている秋田大学と島根大学を取り上げます。

 まずは、2校の世界ランキング2019におけるランクイン状況を見てみましょう。総合順位も分野別のスコアも、ほぼ同程度といえます。
 世界ランキングは、比較的、大学院の研究力を重視しているため、ランクイン大学は、研究力が高い傾向があります。
 島根大学は、秋田大学と比較して、世界ランキング2019の「研究」「被引用論文」のスコアが高くなっています。これらは、研究力を重視する世界ランキングならではの特徴といえます。「研究」は研究者の評判、研究関連収入、学術生産性を基にスコア化され、また、「被引用論文」は、「学術論文が世界中の研究者にどれだけ引用されたか」という、新しい知識やアイデアの広まり具合を見ています。

 次に、日本版ランキング2018を見てみましょう。総合ランキングにおいて、秋田大学は58位、島根大学は111-120位で、差が出ていることがわかります。世界ランキング2019とは異なり、日本版ランキング2018では、各分野においても、秋田大学の方が高いスコアを獲得しています。
 秋田大学では、「教育成果」と「国際性」のスコアが島根大学を大きく上回りました。「教育成果」のスコアは、「どれだけ卒業生が活躍しているか」を表すもので、企業人事や研究者への評判調査を基にしています。また、「国際性」のスコアは、「どれだけ国際的な教育環境になっているか」を表すもので、外国人学生比率・外国人教員比率・日本人学生の留学比率・外国語で行われている講座の比率を基にスコア化されています。
 日本版ランキングでは、学部の教育力が重視されています。世界ランキングと日本版ランキングの指標の違いにより、このような順位の違いが生まれたと考えられます。

秋田大学と島根大学の取り組み

 秋田大学と島根大学におけるそれぞれの特徴的な取り組みを見ていきましょう。

秋田大学
 秋田大学では、「地方創生センター」などを通じ、地域の活性化にも力を入れています。このことが、周辺の学校や企業からの高評価につながっているのかもしれません。2017年度の研究では、「地方創生センター」を通じた外部研究員との共同で行われた新素材・機能性材料開発研究事業が、第64回日本金属学会論文賞などの賞を獲得しました。
 また、秋田大学は海外拠点の創出にも積極的で、国際研究に意欲を見せているといえます。2017年には、南アフリカに位置するボツワナ共和国のボツワナ国際科学技術大学内に、6つ目となる海外拠点を開所しました。この「秋田大学ボツワナ事務所」は、南部アフリカ地域での調査研究・教育活動を行うほか、国際資源学部必須科目「海外資源フィールドワーク」における海外フィールドの拠点となります。

世界の「資源」新時代をリードする 専門性の高いグローバル人材を育成

秋田大学


秋田鉱山専門学校以来、「資源」の教育と研究において長い歴史と日本屈指の実績を誇る秋田大学。当該分野における世界のハブ大学を目指し、海外大学との提携が順調に進む。同時に地元との産学連携にも力を注ぎ、地方国立大学としての存在感を高めている。


島根大学
 島根大学では、地域課題に立脚した研究を推進し、特色ある分野で世界水準の研究成果を創出するという目標を掲げ、研究に取り組んでいます。
 島根大学の「地域未来協創本部」では、地域との連携を強化することを目的とした研究内容の掘り起こしを行っています。さらに、産学官連携や外部研究資金獲得にも積極的です。これらの取り組みから、十分な研究資金を得て、地域に役立つ研究に充てていることが考えられます。
 例えば、地域未来協創本部地域医学共同研究部門および島根大学医学部の中村守彦教授による「食の概念を変え食事制限の悩みを一発解決する無限レシピシステム」は、糖尿病などの制限食のある患者に合わせた献立を提案するシステムです。これは、加熱処理した食材をパックで保存し、QRコードなどで管理して、自宅にある食材を使った理想的な献立を提案します。このように、医学、地域包括ケア、ICT技術など様々な分野が融合した研究は、地方国立大学ならではの強みになります。

地域密着型の教育・研究体制で 世界に貢献する人材を育てる

島根大学


「教育リソース」「教育成果」で高いランクを獲得している島根大学。国内外から高い研究力が評価される一方で、地域課題の解決に貢献する優秀な地域人材の育成にも定評がある。その背景には、広く地域を研究フィールドとし、学生主体で実践的な学びができる大学風土がある。

 このように、同じ「地方国立大学」というくくりでも、大学が重視する取り組み等には違いがあることがわかります。
 日本版ランキング2018、世界大学ランキング2019では、偏差値以外の様々な指標で大学を見ることができます。気になる大学を比較する際にランキングを使えば、新しい発見があるはずです。