ノーベル物理学賞を受賞した日本人
ノーベル物理学賞は、「自身の遺産を人類のために最大たる貢献をした人々に分配する」というアルフレッド・ノーベルの遺志に基づき、1901年に設立されました。現在、ノーベル賞はノーベル賞財団によって運営され、物理学賞・化学賞・医学生理学賞・文学賞・平和賞・経済学賞の6分野の発展に大きな貢献をした研究者を対象に、毎年授与されています。
2018年までに、26名の日本人がノーベル賞を受賞しています。分野別に見てみると、物理学賞が最も多く、11名が受賞しました。なお、ノーベル物理学賞は2018年までに延べ209名(2度受賞者1名)に授与されています。
近年の日本人ノーベル物理学賞受賞者4名の出身大学を見てみましょう。
2015年受賞の梶田隆章さんは埼玉大学出身、2014年受賞の赤﨑勇さんが京都大学、天野浩さんが名古屋大学、中村修二さんが徳島大学をそれぞれ卒業しています。
これらの出身大学には、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。THE世界大学ランキング日本版2018(以下、日本版ランキング2018)を使って、比較してみましょう。
旧帝国大学・地方国立大学の比較
先に挙げた4名はそれぞれ、国立大学に進学しました。ここからは、日本版ランキング2018を使って、出身大学を比較していきます。なお、旧帝国大学とその他の地方国公立大学ではスコアに大きな差があるため、ここでは分けて見ていきます。
■旧帝国大学(京都大学、名古屋大学)の比較
4名のノーベル物理学賞受賞者の出身校では、旧帝国大学は京都大学と名古屋大学の2大学です。日本版ランキング2018の順位を見てみると、京都大学は1位タイ、名古屋大学は7位と、両大学ともに総合力が高いことがわかります。特に「教育充実度」と「教育成果」のスコアが突出しています。
2大学間で差が出ているのは、「教育リソース」分野です。「教育リソース」は、どれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを示すもので、学生一人あたりの資金、学生一人あたりの教員比率、教員一人あたりの論文数、大学合格者の学力、教員一人あたりの競争的資金獲得数をもとに算出されています。
つまり、この2大学間では、学生一人あたりの資金や教員比率、教員が執筆した論文数などに差が出ている可能性があるということが読み取れます。こういった情報をもとに大学を調べると、これまでと違った視点で大学の特徴を見つけられるかもしれません。
■地方国立大学(埼玉大学、徳島大学)の比較
地方国立大学の埼玉大学、徳島大学について日本版ランキング2018のスコアを見ていきましょう。各分野のスコアを比較してみると、埼玉大学は「教育充実度」と「国際性」、徳島大学は「教育リソース」のスコアがそれぞれ高くなっています。
埼玉大学は日本版ランキング2018を構成する4分野すべてで150位以内にランクインしています。埼玉大学ではその総合力を生かし、文理融合教育プログラムなどの革新的な教育を推進しています。
続いて、「教育リソース」のスコアが高い徳島大学の取り組みを見てみましょう。徳島大学に設置されている学部のほとんどが理系学部です。一般に、理系の学部は文系の学部よりも研究費等が多く割り当てられる傾向があるため、このことが徳島大学の「教育リソース」分野のスコアを高めている要因の一つではないかと考えられます。研究支援活動と産学連携活動の連携を図り、2015年4月には研究支援・産官学連携センターが設置されています。
このように日本版ランキングでは、各大学の教育に関する分野や成果が数値化されているので、それぞれの大学の持つ特徴や強みを客観的に比較できます。
大学はそれぞれ個性的なカリキュラムや設備を持ち、偏差値では測りきれない魅力や教育環境を有しています。日本版ランキングを有効に活用して、大学研究の幅をさらに広げましょう。