THEが発表する大学ランキングの特徴

 THEでは、世界各国の大学について、様々なランキングを発表しています。その中でも特に有名なものが、THE世界大学ランキング(以下、世界ランキング)です。THEが2011年から毎年1回、発表し続け、15回目となるTHE世界大学ランキング2019では、世界86か国から1250校以上がランク付けされました。
 世界ランキングでは、「教育」「被引用論文」「研究」「産業界からの収入」「国際性」の5項目を総合的に判断したランク付けがなされます。おもに大学の「研究力」を重視したランキングですが、世界中には、研究力以外にも様々な強みを持つ大学がたくさんあります。
 そのため、近年、THEは様々な側面から大学に光を当て、それぞれの大学が持つ強みを可視化したユニークなランキングを発表しています。学生からの評価やグローバルな問題への取り組みなど、様々な側面に焦点を当てたランキングは、従来とは違った視点で大学を比較する機会を与えてくれます。

THEによるユニークな大学ランキング①:Europe Teaching Rankings

 2018年7月に、パイロット版として初めて「Europe Teaching Rankings」が発表されました。このランキングは、世界ランキングとは対照的に、学生の教育や学修環境といった「教育力」に焦点を当てたものです。
 Europe Teaching Rankingsでは、欧州の大学に通う大学生を対象に大規模な調査を行っているところが特徴で、その結果が最終スコアの 50%を占めます。
 学生への調査は、「教職員とのコミュニケーション」「協働学習の機会の豊富さ」「批判的思考力が涵養されたか」など11の設問について、主に10段階で回答する形式で行われました。実際に通学している学生の“生の声”が反映されやすいランキングとも言え、教育現場としての大学が、よりリアルに映し出されています。

 日本でも、Europe Teaching Rankingsと同じように大学の「教育力」に焦点を当てたランキングとして、「THE世界大学ランキング日本版(以下、日本版ランキング)」があります。日本版ランキングでは、2019年3月発表予定の日本版ランキング2019から学生調査が取り入れられる予定です。
 さらに、文部科学省は、2019 年度に、大学1・4年次生を対象とした教育満足度調査を試行予定です。大学改革の方向性を決めるうえで、学生視点の重要性がうかがえます。

THEによるユニークな大学ランキング②:University Impact Rankings

 2019年4月に公開予定の「University Impact Rankings」は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:以下、SDGs)に対する各大学の取り組みを基にランク付けされます。
 SDGsとは、2015年の「国連持続可能な開発サミット」で採択された、各国が2030年までに達成すべき目標を17の目標と169のターゲットにまとめたものです。17の項目には、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」などの様々な課題が、先進国・発展途上国に関わらない全世界的な目標として掲げられています。

 University Impact Rankingsでは、これらの17の目標のうち、大学と関連が深い11目標を取り上げ、大学のランク付けを行います。大学の持つ役割のうち「社会貢献」 をクローズアップしているため、従来のランキングとは、かなり異なった視点に主軸を置いたランキングだといえます。11目標に関するランクを総合した全体ランキングだけでなく、それぞれの目標ごとのランキングも算出される予定であるため、分野ごとにランクインする大学の特徴が出やすいことが予想されます。

 このほかにも、創立年や地域ごとの特色を生かしたランキングが多数発表されています。ランクインした日本の大学を調べることはもちろん、留学先の大学選びにも活用してみてはいかがでしょうか。