リベラルアーツとは何か?リベラルアーツが注目される理由

 リベラルアーツは、もともと古代ギリシャで生まれ、古代ローマで「自由七科(文法、修辞、倫理、算術、幾何、天文、音楽)」として体系づけられたのが起源とされている学問です。専門教育の準備段階としての一般教養科目ではなく、人文科学、社会科学、自然科学の分野や、外国語、芸術などの幅広い学問の視点を身に付け、多角的な考え方を学びます。
 これにより、リベラルアーツ教育は、グローバル化が進む世界の諸問題を解決できる人材育成に役立つと期待されています。また、変化が激しい企業においても、新しい視点をもたらす人材として活躍できる可能性があります。
 このような理由から、近年、リベラルアーツ教育を取り入れる大学が増加しています。 

大学によるリベラルアーツ教育の取り入れ方

 アメリカにはユニバーシティ(総合大学)とは別に、リベラルアーツ・カレッジがあります。学生は大学院への進学を前提として入学します。大学の4年間で幅広く教養を学び、専門は大学院で学ぶという考えです。一方日本では、学士課程修了者の大学院進学率が1割程度と、あまり高くありません。
 リベラルアーツ教育を日本の大学で導入するにあたっては、大学教育過程の中で、リベラルアーツ教育と専門分野の教育をどのように両立させるかが課題となります。

 大学でリベラルアーツを取り入れる方法としては、いくつかの方法が挙げられます。

①全ての学部生が、一定の学年または全学年でリベラルアーツを学ぶ
②学部教育の前半で様々な分野について学ぶことができるカリキュラムを編成する
③リベラルアーツ学部を設置する
④全学共通のリベラルアーツ科目を充実させる
⑤ダブルディグリー、副専攻制度でリベラルアーツ専攻を選択できるようにする

 これらのうち、いくつかの方法の中間的な方法をとっている大学や、複数の方法を組み合わせて導入している大学も存在します。

リベラルアーツ教育を取り入れている大学の事例

 THE世界大学ランキング日本版2018(以下、日本版ランキング2018)では、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」という4分野13項目を指標に、大学をランク付けしています。日本版ランキング2018にランクインしている大学の中から、リベラルアーツ教育を導入している特徴的な大学の取り組みを紹介します。

■東京医科歯科大学
 東京医科歯科大学の医学部医学科では、第1学年の前期の授業がすべて教養科目で構成されたカリキュラムとなっています。また、第1学年の後期の授業も、1週間のうち1日が医学の基礎科目に充てられ、それ以外の授業はすべて教養科目です。
 東京医科歯科大学では、教養科目を提供する教養部を設置しています。教養教育については、市民社会の一員を養成するための教育という「一般教育」と、人間性豊かな自由な市民を育てるための「リベラル・アーツ」の2つを融合させたものであると考え、それに基づいて、教養教育と、医療人としての基礎となる教育の両立を目指しています。
 教養科目として、哲学、芸術、文学、法学、歴史、言語、スポーツなど様々な種類の科目が開講され、学生は、それぞれの興味に応じて授業を選択することができます。全学科の学生が教養部の授業を共通科目として学び、世間に通用する医療人の基盤となる、「様々な文化を理解できる教養」と「他者を理解するための共感性」を身に付けます。

■東海大学
 東海大学では、各学部での専門科目に加え、全学部生が必修科目として履修できるリベラルアーツ科目を設置しています。
 2年次で履修する現代教養科目、習熟度別の英語コミュニケーション科目を通して、学部特有の知識以外にも、様々な分野における知識や多角的な視点を身に付けることができます。
 また、サブメジャー(副専攻)、ダブルメジャー制度が充実しています。サブメジャーは70以上のコースから、学生が各々の興味に応じて履修することができます。サブメジャーをさらに発展させたダブルメジャー制度では、もう一つの専攻についてより詳細な知識を身に付けることができます。
 日本一の学部数を擁する東海大学の豊富なリソースによって、このような幅広い学修機会の提供が可能となっています。

 このように、リベラルアーツ教育を導入している大学では、専攻以外にも興味のある様々な分野について学び、多角的な視点を養うことができる環境が整えられています。ランキングで気になる大学があれば、その大学のカリキュラムについても調べてみると、新たな発見があるでしょう。