「教育成果」分野の指標項目と2019の初ランクイン大学

 日本版ランキング2019は、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」という4分野で構成されています。
 「教育成果」分野は、「どれだけ卒業生が活躍しているか」を示す指標で、「企業人事の評判調査」と「研究者の評判調査」を基にスコア化したものです。2018のランキングから指標項目の変更はありませんが、総合ランキングの指標全体における「教育成果」分野の割合は、20%から16%になりました。
 「教育成果」分野に初ランクインした大学は、15校に上ります。設置区分内の内訳をみると、国立大学2校、公立大学2校、私立大学11校で、私立大学の比率が高いことがわかります。

「教育成果」分野で初ランクインした上位3大学の取り組み

 「教育成果」分野のランキングで初ランクインを果たした大学のうち、上位3大学の取り組みを紹介します。

■神戸市外国語大学
 「教育成果」分野のランキングで68位にランクインした神戸市外国語大学は、総合ランキング51位にランクインしました。
 神戸市外国語大学のキャリアサポートセンターでは、在学生にインターンシップ先を紹介しています。紹介する企業の中には、海外の企業も含まれ、海外でインターンシップを経験することもできます。さらに、2018年度より、キャリアサポートセンターで紹介されたインターンシップは単位付与の対象となりました。学生がインターンシップに参加しやすい環境がそろっているといえます。
 神戸市外国語大学では、積極的な教職支援が行われています。黒板、机やいすを備えた模擬授業のための「教職サロン」の設置、採用試験の模擬面接・場面指導、教員採用予定者の報告会などを定期的に行う「教職セミナー」などが特徴的です。
 また、神戸市外国語大学の学生は、地域のボランティア活動にも取り組んでいます。主な活動は、神戸市でのイベントの通訳や、外国人観光客のガイドなどです。学生は、大学で得た語学力を生かし、さらなる成長につなげています。
 このような取り組みが、企業からの高評価につながったのではないでしょうか。

■豊田工業大学
 「教育成果」分野のランキングで105位タイにランクインした豊田工業大学は、トヨタ自動車が設立した私立大学です。教育・研究・学費や奨学金など多岐にわたってトヨタ自動車によるサポートが行われていることが特徴的です。
 「体験的教育」を重視する豊田工業大学では、充実した装置や設備を用いて工業実習を行うことができます。「創造性開発工房-Eiji工房」では、ものづくりの原点を学ぶことができる設備を使用し、学生が自ら実験部品や、装置などを製作しています。また、「クリーンルーム」という、工業実習のために塵埃を取り除き清潔な状態を保つことができる施設は、国内の大学で最大級の規模を誇っています。この「クリーンルーム」では、半導体プロセス及び微細加工技術を応用した実践的教育と研究が行われています。
 豊田工業大学の教育の特徴は、分野の枠を超えて学習する「先端ハイブリット工学」の考え方をベースにした、分野横断型のカリキュラムです。さらに、学生は、「副専攻」として、自分の専門以外の分野も学ぶことができます。2015~2017年度の学部卒業生では、42%が副専攻を修了するなど、多くの学生が制度を利用して専門性の幅を広げているようです。
 さらに、豊田工業大学には、全学生が履修する必修のインターンシップがあります。インターンシップの期間は1~1.5か月と比較的長く、学生は、一人ひとりが異なるテーマの課題解決を目指す中で、技術者としての仕事を体験します。
 これらの取り組みにより、豊田工業大学の就職決定率は、開学以来、毎年100%を達成しています。

■桜美林大学
 桜美林大学は「教育成果」分野のランキングで105位タイにランクインしました。
 桜美林大学では、創立者の清水安三がモットーとして掲げた『学而事人(がくじじじん)~学びて人に事(つか)える』教育を実践に移すため、「大学での講義」と「フィールドでの活動」を両輪とするサービスラーニングを行っています。サービスラーニングでは、大学近隣地域や被災地、海外において授業で学んだ知識を生かし、社会貢献活動を行います。このことが、座学だけではない体験型・課題解決型の学修を可能としています。
 また、キャリア開発センターでは、多くのキャリアアドバイザーが学生一人ひとりの進路支援を行っています。個別の進路支援・相談や、各種業界の研究会・各見学会の開催されるほか、珍しい取り組みとしては、大学独自の「就職準備アプリ」の提供が挙げられます。
 このように、学修・就職活動ともに、学生に寄り添ったサポートが、学生の能力を伸ばす秘訣といえそうです。

 「教育成果」分野のランキングに初ランクインした大学を見てみると、学修環境やキャリアサポートの充実のほか、大学内の制度を学生が利用しやすくする工夫も見られました。ぜひ、さまざまな大学の取り組みに注目してください。