「教育充実度」の指標項目に「学生調査」追加
日本版ランキング2019では、「教育充実度」のランキング指標が変更されました。これに伴い、ランキング指標全体における「教育充実度」分野の割合は、26%から30%になりました。
2018年版までの指標項目は、高校教員の評判調査のみの2項目でしたが、2019年版からは、学生調査を加えた5項目となりました。大学にとって重要なステークホルダーである学生の声をランキングに反映させるべく、「学生調査」が加わったのです。
新規に追加された項目は「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」の3項目。これらはいずれも学生調査をスコア化した項目です。学生調査の調査項目のうち、ランキングに反映されたのは、以下の7つです。
「教育充実度」で躍進した大学を紹介
「教育充実度」分野のランキングで、2018のランキングと比べ、めざましい躍進ぶりを示した大学を紹介します。
■昭和女子大学
日本版ランキング2018で115位だった昭和女子大学は、2019年版では39位にランクアップしました。特徴的な取り組みを紹介します。
1つ目は、教員と学生全員が1年に1度、学科単位で3泊4日の宿泊研修を行う「学寮研修」のプログラムです。学生は、テーマに沿ったブレインストーミング、プレゼンテーション、ディベートなどを行い、「議論する力」を磨きます。また、グループワークを通じて自主性や協調性を養うことにもつながります。
2つ目には、「昭和ボストン(ボストンキャンパス)」への留学が挙げられます。昭和ボストンとは、学校法人昭和女子大学が設立した教育施設で、語学学校としてアメリカの認可も得ています。
昭和ボストンへの留学では、少人数クラスで英語を集中的に学べるほか、コミュニティサービスやフィールドワークが充実していることも特徴です。例えば、「食と健康と運動」を学ぶ生活科学部健康デザイン学科の学生は、昭和ボストン留学において、「日米の菓子に関する仮説検証型の研究」「フードバンクでのボランティア活動」などを通し、専門を生かした実践的な学びを経験しました。
3つ目の特徴として、「コミュニティサービスラーニング」や「S-LABO」があります。「コミュニティサービスラーニング」とは、学生が興味や専門知識を活かして、社会貢献やボランティア活動をする活動です。また、「S-LABOプロジェクト」では、学生発信の地域貢献活動などを大学がサポートしています。
■公立はこだて未来大学
公立はこだて未来大学は、日本版ランキング2018で112位でしたが、2019年版では43位タイと、100位以内にランクインしました。
特徴的な取り組みとしては、公立はこだて未来大学で3年次の学生全員に必修として課されている「プロジェクト学習」が挙げられます。この授業では、学生たちが学科・コースを横断してグループをつくり、メンバーが協力して問題発見から報告までを行います。学生たちの問題意識に根差したプロジェクトは、ご当地キャラクターのデザインや、脳波を使ったコミュニケーションツールの制作など、さまざまです。また、教員とも連絡を取り合い、助言をもらいながら進めます。これにより、学生たちはチームワークだけでなく、研究者やビジネスマンが行うような「プロジェクト」の進め方を身に付けることができます。
そのほかには、コミュニケーションを楽しみながら英語を実践的に学べる「コネクションズカフェ」も特徴的です。「コネクションズカフェ」は、毎日、昼休みに開催されている課外の英語学習支援です。国籍やバックグラウンドの異なる4人の教員がファシリテーターを務め、英語でのゲーム・スポーツ大会、TOEICの勉強など、学生のニーズに合わせて臨機応変な英語教育を行います。
■共愛学園前橋国際大学
日本版ランキング2018で126位だった共愛学園前橋国際大学は、2019年版では75位にランクアップしました。特徴的な取り組みを紹介します。
共愛学園前橋国際大学では、ディスカッションやフィールドワークといった豊富な授業形態を取り入れています。中でも、心理・人間文化コースの「教育心理学」では、学生が友人以外との積極的なディスカッションを行うことや、授業内でのSNSの活用が特徴的です。また、英語コースの「Multi-Cultural Communication」では、英語での発表やロールプレイを行い、考える力と英語のアウトプット能力を養います。
そのほかにも、さまざまな分野での演習や地域連携を行っています。地域と連携した課外活動や体験型の活動には単位認定されるものも多く、学生生活の負担になりにくいということが特徴です。また、ボランティアも単位認定されています。共愛学園前橋国際大学では、大学を通じて行ったボランティア以外でも、報告書を出せば認定されます。期限は卒業までの最長4年間で、そのうち30日間の活動をすれば単位を修得できます。こういった条件が、学生にボランティア活動の習慣をつけることに役立っていると考えられます。実績としては、パソコン講座や児童の学習支援、日本語教室支援など、情報や児童教育、言語について学べるコースのある共愛学園前橋国際大学の学びを生かせるボランティアが挙げられます。
「教育充実度」分野でランクアップした大学は、学生の交流や協働学修の機会を促進しているようです。学生視点の新たな取り組みに注目が集まります。