PBL(Project Based Learning)とは何か?
PBL(Project Based Learning)は、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育方法で、学生が主体的に学ぶアクティブ・ラーニングの一種とされています。日本語では「プロジェクト型学習」「問題解決型学習」などとも呼ばれます。
PBLには、いくつかの特徴があります。
① 学生自身が学修の計画を立てること:PBLでは、提示された問題に対して学生自身が仮説・学修計画を立て、それに基づいて学修します。
② 学修の結果だけではなく、過程に注目すること:その課題が解決できるかどうかだけではなく、課題を通して、他の問題にも応用できる問題解決能力が得られるかどうかを重視します。
③ グループで行うこと:PBLでは、多くの学修プロセスにおいて、グループ単位で協働します。学生同士で各自の役割を果たすチームワークや、時間などのマネジメント能力を養います。
以下、この記事では、PBLの手順や、実際にPBLを行う大学の取り組みと、その成果について紹介します。
PBLの手順
もともと、PBLの考え方は、医学の教育方法として始まりました。従来の教育では、基礎から応用へという順で知識を積み上げ、試験問題などで知識の定着度合いを評価するという方法をとることが大半でした。それに比べて、PBLは、基礎と現場での実践を結び付けて学修しやすいことや、それにより、問題解決能力を身に付けやすいことなどのメリットがあります。
PBLの手順の例は、以下の通りです。
PBLを行う大学の取り組みを紹介
PBLを取り入れている大学の事例を紹介します。
■千葉大学
千葉大学は「社会環境の向上に貢献する教育」をめざし、PBLを含むさまざまな社会貢献の取り組みを行っています。また、大学全体として6ターム制を採用し、PBLなどの学修時間を柔軟に確保することが必要な授業を行いやすい環境を整えています。
千葉大学は、地方創生の中心となる「ひと」の地方への集積を目的とした「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の一環として、全学生を対象とする「地域産業イノベーション学」「コミュニティ再生ケア学」においてPBLを採用しています。その中の「ローカル・プロジェクト実習」として、これまでに、千葉県内に増える空き家のリノベーション提言プロジェクトや、実際に空き家をリノベーションして大学のサテライトキャンパス化するプロジェクトなどが行われました。
「地域産業イノベーション学」を履修した学生は、「その土地で生活している人だからこそできる活動があると感じ、プロジェクトでの連携の経験を学生自身の地元に生かした仕事をしたいと考えるようになった」との感想を述べています。さまざまな人と関わるPBLを通して、将来、役立つ知識・経験を得られたことがうかがえます。
■成蹊大学
成蹊大学は、アクティブ・ラーニングを推進するために、プロジェクト型授業(PBL)の実施を奨励することを目的とした「プロジェクト型授業奨励金制度」を実施。全学を挙げてPBLを推進しています。
理工学部システムデザイン学科では、「プロジェクト型科目」(PBL)を各学年で取り入れています。また、PBL科目では成績評価も多角的に行うことが特徴的です。
中でも「吉祥寺プロジェクト」では、成蹊大学のキャンパスがある吉祥寺(東京都)の街の問題に取り組みます。これまでに扱った問題は、通過交通問題、武蔵野市の福祉作業施設における作業改善などです。
そのほか、ゼミ単位でも、ゼミのテーマに合わせた様々なPBLの取り組みが行われています。経済学部のゼミでは観光と地域活性化のプロジェクト、文学部のゼミでは神社と共同での「歌占」に関する企画展の開催などが挙げられます。さらに、2020年度に新設予定の経営学部総合経営学科では、4年間を通してゼミがあり、2年次で広告コピーの考案やCM作成などのプロジェクト型の演習を行う計画になっています。
PBLを取り入れている大学の成果
PBLを取り入れている千葉大学や成蹊大学は、THE大学インパクトランキング2019(以下、インパクトランキング2019)で上位にランクインしています。
インパクトランキング2019は、大学の社会貢献の取り組みを、国連のSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の枠組みでランク付けしたものです。
千葉大学は、総合ランキング101‐200位にランクイン。日本の大学の中ではトップから4番目という結果です。また、目標別ランキングでも、いくつかのSDGで上位にランクインしています。特に、SDG11「住み続けられるまちづくりを」の目標別ランキングでは92位でした。地域の課題解決に向けたPBLの取り組みが、このような結果に貢献したと考えられます。
成蹊大学は、総合ランキング301+位。目標別ランキングにおいては、SDG11「住み続けられるまちづくりを」、SDG12「つくる責任つかう責任」、SDG13「気候変動に具体的な対策を」で上位にランクインしました。成蹊大学における、まちづくりや工業に関するPBLの取り組みが、このような結果に結びついたと考えられます。
インパクトランキングには、実践的な取り組みを行う大学が多くランクインしています。大学の社会貢献度合いを知りたい方は、記事下の関連リンクよりインパクトランキング2019の記事をご覧ください。