「教育充実度」の指標項目と学生調査の概要

 THE世界大学ランキング日本版2019(以下、日本版ランキング2019)では、「教育充実度」の指標項目が変更され、ランキング指標全体における「教育充実度」分野の割合が、26%から30%になりました。
 変更後の「教育充実度」の項目は、「グローバル人材育成の重視」「入学後の能力伸長」に関する高校教員への評判調査と、「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」に関する学生調査で成り立っています。
 詳しい学生調査の調査項目は、以下のとおりです。

「教育充実度」上位ランクインの地方国立大学の取り組み

 「教育充実度」分野のランキングで30位以内にランクインした大学の中から、地方国立大学の取り組みについて紹介します。
※ここでは、関東エリア・東海エリア・近畿エリアを除く地域の国立大学を対象としています。

■広島大学
 広島大学は、「教育充実度」分野のランキングで17位にランクインしています。
 「教育充実度」分野に関係のある特徴的な取り組みとして、「HiPROSPECTS(到達目標型教育プログラム)」が挙げられます。広島大学では、学生が卒業までに高い知識や能力を身に付け、専門以外にもさまざまな分野を学べるように、主専攻プログラム・副専攻プログラム・特定プログラムの3つを設置しています。
 これが、「HiPROSPECTS(到達目標型教育プログラム)」です。
 副専攻プログラムは、他の主専攻プログラムの内容を学修できるよう編成されたプログラムです。また、特定プログラムは、主専攻プログラムでは専門的に扱わない、情報教育に関する分野や高度な外国語能力を養成する分野、または、学芸員や司書教諭などの資格取得を目的とした内容で編成されたプログラムです。
 地域に根差したボランティア活動が盛んなところも特徴です。西日本豪雨の際には、土地の復旧、学修支援、炊き出しなどの活動に、広島大学の学生が携わりました。
 学生団体「東広島ひとむすび」が開催する東広島マーケット「ひとむすびの場」は、2016年2月から、月1回開催されています。マーケット以外にも農業体験、自然体験や東広島市の情報発信など、さまざまな活動に、広島大学の多くの学生が参加しています。
 これらの取り組みが、高校教員や学生自身にとって印象的なのではないでしょうか。
※「HiPROSPECTS」は広島大学の登録商標です。

■金沢大学
 「教育充実度」分野のランキングで29位にランクインした金沢大学では、「学部学科」よりも大枠の「学類」を採っています。これにより、学生は自分の専門を探しながら、興味のある幅広い分野を学ぶことができます。
 それぞれの学類・コースにおける必要最小限の科目を「コア・カリキュラム」とし、学びの核を作ります。そのうえで、主専攻・副専攻を選ぶため、学生は深い専門性と学際的・横断的な視野を得ることができます。
 さらに、特徴的な取り組みは、金沢大学独自の教育方針として「KUGS(金沢大学<グローバル>スタンダード)」を定め、目標とする学習成果を達成できるよう「GS科目」を体系的に整備しています。GS科目は、5つあるKUGSに対応して5群に分かれています。その中には、クリティカル・シンキングやプレゼン・ディベート論など「考え・価値観を表現する」科目群や、統計学や人権・ジェンダー論などから「未来の課題に取り組む」方法を学ぶ科目群などがあります。すべての学生が、各科目群から3科目以上を履修することが定められています。
 そのほか、金沢大学は、アクティブ・ラーニングおよびFD(ファカルティ・ディベロップメント)・SD(スタッフ・ディベロップメント)活動に積極的です。国際機関教育院高等教育開発・支援系/部門を設置し、年に数回、学内でのアクティブ・ラーニングやFDの研修会を開催しています。また、スーパーグローバル大学創成支援事業の一環としても、「タフツ大学ELP(English Language Programs)による英語力強化」を目標の一つに掲げ、金沢大学スーパーグローバルELPセンターを設置。教員を対象とした英語による教授法、職員を対象としたビジネス英語、学生の留学向けの英語力の向上を図っています。
 このように、全学を挙げて授業やカリキュラムの改善に取り組んでいることが、高いスコアにつながったのではないでしょうか。

 大学進学希望者は地元の国立大学を選びやすいのが現状です。しかし、日本版ランキング2019を参考にすれば、別エリアの魅力的な大学が見つかるかもしれません。

*FD:教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組み。
 SD:職員全員を対象とした、管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取り組み。