THE世界大学ランキング2019で1位の「オックスフォード大学」の研究力

 まず、THE世界大学ランキング2019で1位のオックスフォード大学について、特徴を見ていきましょう。

 オックスフォード大学は、2017年のランキングから3回連続で、THE世界大学ランキングのトップにランクインしています。
 オックスフォード大学の歴史は古く、イギリスで最も歴史ある大学の一つといわれています。「Humanities(人文科学)」「Mathematical, Physical and Life Sciences(数学、物理、生命科学)」「Medical Science(医学)」「Social Science(社会科学)」の4専攻があり、人工知能などの最新技術はもちろん、音楽などの芸術も学べる総合大学です。

 THE世界大学ランキング2019において、オックスフォード大学は、「研究」分野のスコアで最高スコアを獲得しました。また、「被引用論文」の分野でも高いスコアを誇ります。

 オックスフォード大学は、ランクインの要因を「革新的な研究とイノベーション」としています。実際に、オックスフォード大学では、様々な研究が行われ、その成果は世界に影響を与えています。
 眼科学のRobert MacLaren教授の率いる研究チームは、5万人に1人の割合で遺伝的要因により視力低下や失明を招く「全脈絡膜萎縮」の患者の視力を復元させる治療法を発見しました。マクラーレン教授らは、症状を引き起こす遺伝子異常を特定し、正常な遺伝子を注入するという方法で、6人の患者について症状の改善が見込まれる結果を得ました。今後、臨床試験が成功すれば、副作用のない治療法として注目されるでしょう。
 また、物理学のAchillefs Kapanidis教授の率いる研究チームは、生きている細胞の中にある個々の分子さえもリアルタイムで観察できる顕微鏡を開発しました。この研究は、BBSRC(バイオテクノロジー・生物科学研究会議)のInnovator of the Year Award 2019を獲得しました。

THE世界大学ランキング2019の指標

 オックスフォード大学が1位にランクインしたTHE世界大学ランキング2019の特徴は、大学院の研究力を重視しているという点です。
 ランキングの指標を見ると、研究に関する項目である「研究」と「被引用論文」が合わせて60%を占めていることがわかります。
 世界ランキングの指標の分野は5つあり、「教育(学習環境)」「研究(量・収入・評判)」「被引用論文(研究影響力)」がそれぞれ30%、「国際性(教職員・学生・研究)」が7.5%、「産業界からの収入(知の移転)」が2.5%という比重となっています。

日本版ランキング2019で1位の「京都大学」の高い教育成果

 次に、日本版ランキング2019で1位にランクインした京都大学について、その特徴を見ていきましょう。

 京都大学は、2019のランキングで、初めて単独トップにランクインしました。スコアを見てみると、特に「教育成果」のスコアにおいて、全ての大学の中で最高スコアを獲得しています。また、「国際性」のスコアで、2位の東京大学を引き離していることがわかります。

 これらのスコアから、京都大学の躍進は、就職支援や研究支援、グローバル教育の推進などが要因となっていると考えられています。
 京都大学は日本の大学の中で、最も有名な大学の一つですが、大学の知名度だけでなく、就職支援イベントが豊富に行われていることも、学生の就職活動に役立っています。2018年度は、20の業界ごとのOB・OGによるセミナー、50回以上の実践セミナーを含め、計116回の就職支援イベントが開催されました。
また、約40人のリサーチ・アドミニストレーターが所属し、研究者を支援するURA組織「KURA」の活動なども、「教育成果」を押し上げていると考えられます。
 さらに、京都大学では、海外の大学との大学間交流協定数が850校に上ります。外国語習得のサポートも充実、米国の高等教育機関が京都で提供する英語講義を、米国大学生と共に受講する「KCJS(Kyoto Consortium for Japanese Studies)/SJC(Stanford Japan Center)英語講義」の受講制度があるほか、英語で学ぶ教養・共通科目が設けられています。

日本版ランキング2019の指標

 京都大学が1位にランクインした日本版ランキング2019は、大学の学部の教育力を重視したランキングです。
 どれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを示す「教育リソース」が34%、どれだけ教育への期待が実現されているかを示す「教育充実度」が30%、どれだけ卒業生が活躍しているかを示す「教育成果」が16%、どれだけ国際的な教育環境になっているかを示す「国際性」が20%という、4つの指標分野の割合を基にスコア化されます。これらを見ると、4つの指標分野すべてが、「教育」に焦点を当てられたものであることがわかります。

2019年9月12日に「THE世界大学ランキング2020」発表

 THE世界大学ランキング2020は、2019年9月12日に発表されます。
 世界の大学、日本の大学のランクイン状況や順位変動だけでなく、日本版ランキングとの違いにも注目してみると、別の視点から大学が見えてくるのではないでしょうか。