AO入試とは何か?
大学入試の方法の1つであるAO入試の「AO」とは、「アドミッションズ・オフィス」の略称です。AO入試では、生徒の「その大学で学びたい」という意欲、かつ、大学のアドミッション・ポリシーに合致するかどうかが重視されます。アドミッション・ポリシーとは、大学の「入学者受入れの方針」のことです。
文部科学省によると、AO入試は「詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する入試方法」とされています。
現在では、私立大学入学者の約5割が推薦・AO入試での合格者です。AO入試は、推薦入試とともに一般入試と並ぶメジャーな入試方法になっているといえます。
AO入試を取り巻く変化
旧来のAO入試には、「定員確保が目的の青田買い」「学力不問の入試」というネガティブなイメージがありました。しかし、AO入試の実態は変わりつつあります。2020年度からスタートする新入試では、学力検査のある一般入試だけでなく、学校推薦型選抜(現行の推薦入試)、総合型選抜(現行のAO 入試)でも知識・技能を評価しなければいけないというルール変更がなされます。また、大学無償化などにより、大学は受験生の市場が拡大できると予測されます。
大学は、拡大するAO入試をチャンスととらえて、2020年の大学入試改革に向け、推薦・AO入試の改革に取り組んでいます。自学のアドミッション・ポリシーにマッチする高校生を受け入れるために、特徴のあるAO入試を実施している大学を紹介しましょう。
特徴的なAO入試を行う大学
■京都外国語大学
京都外国語大学の外国語学部と国際貢献学部では、プレゼンテーション型のAO入学試験を行っています。
第一次選考では、学部・学科によって異なりますが、志望理由や活動内容をまとめた書類を作成します。そして、第一次選考で作成した志望理由書の概要に沿って、第二次選考でプレゼンテーションと個別面接を行います。面接、プレゼンテーションの時間は、ともに約15分間です。
2020年度の具体的なプレゼンテーションのテーマは、例えば外国語学部は「志望する学科の言語圏の国や地域が抱える問題を挙げ、その解決方法について」です。このようなテーマについて、自分自身の考えを交え、英語または志望する学科の言語でプレゼンテーションを行います。
また、国際貢献学部のプレゼンテーションのテーマは「これまで携わってきた活動内容および志望理由書を発展させた内容」です。グローバルスタディーズ学科は英語で、グローバル観光学科は日本語でプレゼンテーションを行います。
相手に伝わるように話す力だけではなく、入学後の学修への熱意や適性、自分自身をアピールする力、外国語の運用能力などが問われる試験だといえます。
■日本大学
日本大学の文理学部情報科学科のAO入試では、アプリケーション開発を取り入れた「ハッカソン入試」を行います。
まず、第一次選考では、志望理由書や出身学校の調査書のほかに、開発したいアプリケーションの概要説明書等、提出した書類を基に第二次選考対象者を決定します。
第二次選考では、2日間にわたりハッカソン(アプリケーション開発)を行います。ハッカソンとは、ソフトウェアの開発を表すハック(hack)とマラソン(marathon)を合わせた造語で、短期間で集中的にソフトウェア開発を行い、そのアイデアや技能を競うイベントのことを指します。その後、開発したアプリケーションの概要説明書をレポートして提出します。
さらに、開発したアプリケーションに関するプレゼンテーションと面接を行います。面接は、開発したアプリケーションおよびプレゼンテーションに関する口述諮問です。
日本大学文理学部は、人文系・社会系・理学系の18学科からなる総合的な学部です。学生は、専攻する分野の専門知識だけでなく、他分野の講義も自由に履修できるという特徴があります。情報科学科のAO入試においても、専門的な技術に関する知識・技術・経験だけでなく、文章にまとめる能力や、プレゼンテーションや質疑応答でのコミュニケーション能力など、多面的な能力を測るものとなっています。
■大阪女学院大学
大阪女学院大学の国際・英語学部 国際・英語学科では、大学での学修の一部を体験するAO入試を行います。
受験希望者は、事前課題を行ったのち、国際・英語学科の学びと関連のある4つのフィールドワークから、興味のあるものに参加します。4つのフィールドワークは、実際の店舗を訪れてビジネスについて考えを深める「大阪で世界のビジネスを学ぼう」、国際協力の現場を訪れる「神戸でOJ生と一緒に国際協力を学ぼう」、空港でコミュニケーションをテーマに観察を行う「関空で異文化コミュニケーションを学ぼう」、コリアンタウンで韓国の文化に触れる「鶴橋界隈で K-pop、ハングル、コリアタウンを学ぼう」です。
これまでにフィールドワークに参加した生徒の体験談を見ると、入学試験の一環としての経験だけではなく、生徒の興味のある分野での深い学びにつながったことがわかります。
フィールドワークに参加した後で、生徒はAO入試に出願するかどうかを選択することができます。出願すると、面接試験ののち、合否が決まります。なお、AO入試で受験した合格者は、入学金が免除されます。
これらの大学は、THE世界大学ランキング日本版2019の総合ランキングおよび「教育充実度」分野のランキングにランクインしています。
「教育充実度」分野は、どれだけ教育への期待が実現されているかを示すもので、学生調査や高校教員の評判調査を基にスコア化されます。学生調査では、協同学習の機会や、学習内容を実社会に応用する機会の有無などが問われます。このような調査で高いスコアを得るような取り組みを行う大学は、入試の時点から、協働学習できるコミュニケーション能力や、学修内容の応用などを重視していることがうかがえます。
THE世界大学ランキング日本版2019は、記事下の関連リンクよりご覧ください。