地球規模で注目を集める環境保全

 2019年9月23日、ニューヨークで行われた国連気候行動サミットにおいて、65か国およびEUやカリフォルニア州などが、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると誓うなど、地球規模の環境問題が重大かつ緊急の問題であると再確認されました。特に、フランスは、2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」に反する政策をとる国とは、貿易協定を締結しないことを発表しました。さらに、環境問題に取り組む若きリーダーであるグレタ・トゥーンベリ氏のスピーチは、世界中で大きな反響を呼びました。
 SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)にも、環境保全に関わる目標があります。日本では、環境省が、SDGsの17の目標のうち、SDG6(安全な水とトイレを世界中に)やSDG15(陸の豊かさも守ろう)など、少なくとも12項目が環境に関連しているとし、国内外での取り組みを進めています。
 環境保全の取り組みは急を要し、世界中の注目を集めているといえます。

環境保全に関する教育・研究を行う大学を紹介する

 環境保全に関する教育・研究に取り組む大学を紹介します。

■中央大学
 中央大学の理工学部人間総合理工学科では、「人間」をテーマにした理工学の教育・研究を行っています。
 学科の専門分野は、4つのフィールドに分かれています。環境に配慮しながら人が健やかに生きるための住まいや暮らしを考える「人と生活環境」、持続可能な社会を実現するために資源の循環や再生可能エネルギーについて学ぶ「人と物質エネルギー」、クリティカルシンキングや認知、情報処理について学ぶ「人を知る・測る」、人の健康や安心して暮らせる社会をめざして理工学の視点から生命倫理、防災教育、健康を考える「人の健康」です。
 さまざまな分野にまたがった教育・研究を行う人間総合理工学科では、教員の専門分野や研究室もバラエティに富んでいます。2019年4月に着任したシュテファン・ホーテス教授の「環境デザイン研究室」では、持続可能性という観点から環境政策・環境計画をとらえ、人に「自然の恩恵」を与えてくれる水や物質の循環や野生生物の分布、個体群の動態などを研究しています。
 檀一平太教授の「応用認知脳科学研究室」では、「脳機能解析学」と「食認知科学」を研究しています。「脳機能解析学」では、近赤外線を利用して脳の働きを観察する「光トポグラフィ」に脳構造画像のデータベースを組み合わせ、新しい脳機能の診断方法を開発することをめざしています。また、「食認知科学」では、人の思考を定量化するサイコメトリクス(心理測定法)を用いて、食品や食事を人の脳がどうとらえるかを研究しています。

■法政大学
 法政大学の生命科学部環境応用化学科では、環境に優しい化学技術や機能性物質の研究・開発を行っています。人間・環境にやさしく持続可能な社会をめざす化学である「グリーンケミストリ」の考え方がベースになっています。
 環境応用化学科は、物質創製化学コース、グリーンケミストリコース、環境化学工学コースの3コースに分かれています。物質創製化学コースでは、持続型社会を実現するための機能性物質の開発をめざします。グリーンケミストリコースでは、環境やエネルギーに関する重要課題を科学的手法により解決することをめざします。環境化学工学コースでは、省エネルギー、低環境負荷で化学製品を生成するプロセスを考えます。
 基盤科目として、化学物質が人や環境に与える影響や省エネルギー、資源の循環再利用などの「グリーンケミストリ関連科目」を学びます。
 グリーンケミストリの考え方は、研究室でも一貫しています。無機材料化学分野の無機固体化学研究室では、「良いものを作り、長く使う」という理念のもと、燃料電池、粒子状物質集塵フィルター、タービンなどに使われる耐熱材料の研究や、廃棄されたスマートフォンなどの電化製品から金属を取り出してリサイクルする「都市鉱山」の研究を行っています。また、有機化学分野の高分子化学研究室では、環境負荷の少ない新しい高分子素材(ポリマー)、特にディスプレイなどの材料となる「π共役系ポリマー」や、一定期間で自然に還る「生分解性ポリマー」などの開発を行っています。

■山梨大学
 山梨大学生命環境学部地域社会システム学科では、学生は人と自然の共生に向け、自然環境とビジネスについて学びます。食糧問題や環境問題の解決をめざすとともに、流通経済、企業経営、地域経済、地域行政について学ぶカリキュラムにより、地域社会の繁栄に貢献する人材を育てます。
 1・2年生で履修する学部共通科目では、共生科学、生命科学、生物資源、環境科学などの基礎を学びます。また、経済学と経営学の基礎についても、専門の学部と同じくらい詳しく学びます。その後、学生は自分の興味や進路に合わせて、経済・経営学、法律・政治学、観光政策などについて深く学びます。地域社会システム学科の開設科目は、サービス産業、憲法、国際政治学、地方自治、データサイエンス、農作物栽培など多様で、幅広い分野の学修を可能としています。
 ファイナンシャル・プランナー、証券アナリスト、中小企業診断士、簿記などの資格を取得することができます。環境リテラシーを生かして、新たなキャリアを狙うことができます。

 この記事で紹介した3校は、THE世界大学ランキング日本版2019の総合ランキングおよび、分野別ランキングにランクインしています。今後も、環境問題に挑む大学に注目してみませんか。