社会の情報化とセキュリティエンジニアの需要拡大
情報セキュリティは、一般的にはコンピュータのウイルス感染予防や、情報漏洩・ハッキング被害などの防止を指します。
世界の情報化進展に伴い、日本へのサイバー攻撃は年々増加しています。また、近年では、サイバー攻撃の内容が高度化し、巧妙になっています。サイバー攻撃はこれからも増え続けていくと予想され、被害を未然に防止するセキュリティエンジニアの需要は非常に高まっています。
情報処理推進機構(IPA)によると、国内のユーザー企業において、情報セキュリティ人材は約8万人不足しています。このような背景から、情報セキュリティの専門家であるセキュリティエンジニアが注目を集めています。
情報セキュリティを学べる日本の大学
情報セキュリティについての教育・研究を行う日本の大学を紹介します。
■岡山大学
岡山大学工学部情報系学科には、情報システムを総合的に開発する能力を身に付けることができる計算機工学コースや、人工知能や言語処理などに関する基礎や応用力を養う知能ソフトウェアコースがあります。
岡山大学は、高度IT人材の育成を目指す取り組みである、文部科学省の「平成28年度成長を支える情報技術人材の育成拠点の形成」のセキュリティ分野の取り組みに、連携校の1校として選定されています。この取り組みでは、サイバーセキュリティ分野の人材として、先進技術の知識に加え、理解・応用できる実践的能力の育成を指向して、教育コースを開発・実施します。
岡山大学では、企業でセキュリティに関する業務を行う人を講師として招くなど、情報セキュリティについて実践的に学修できる環境といえます。
セキュリティ技術に関する研究を行う山内利宏准教授の研究室では、「安全に利用できるコンピュータを実現するセキュリティ技術」および「OSを中心とした新しいシステムソフトウェアの基盤技術」をテーマにしています。コンピュータのオペレーティングシステム(OS)のセキュリティや機密情報の伝搬の追跡と漏えい防止、スマートフォンのセキュリティや迷惑メール対策など、人々の日常生活でかかわりの深い情報セキュリティについて研究しています。
■横浜国立大学
横浜国立大学理工学部数物・電子情報系学科は、数学・物理学の基礎教育と情報・通信・電気・電子・物理の各工学分野の数理科学の専門教育を行っています。情報システムを創造できる力を培うことを目標とし、情報・物理セキュリティ研究室では、ネットワーク攻撃の検知や分析、Webセキュリティをテーマとした専門的で実践的な研究をすることができます。
さらに、情報・物理セキュリティ研究拠点では、サーバー攻撃などに対抗する情報・物理セキュリティ未解決問題への挑戦をテーマに教育・研究を行っています。研究内容は、車載ネットワークなど組み込みシステムのセキュリティといった実社会と深く関わりのある分野、暗号プロトコルの構成法などのセキュリティの基本理論となる分野、バイオメトリクス(生体認証技術)のセキュリティといった注目の集まる分野など、さまざまな分野を扱っています。
また、吉岡克成准教授の研究室では、さまざまな機器をインターネットに接続して情報共有を行うIoT(モノのインターネット)のマルウェア(悪意のあるソフトウェア)感染について、囮観測システム(ハニーポット)を使って、世界で初めて詳細に観測、分析しました。
■立命館大学
立命館大学情報理工学部には、セキュリティネットワークコースが設置されています。セキュリティネットワークコースでは、ネットワーク技術全般に関する広範な知識と、情報化社会のニーズに対応できる高度な実践能力を持つ人材の育成を目指した教育を行っています。セキュリティ、ネットワーク、コンピュータの仕組みを基礎から学び、セキュリティ分野では、セキュリティや暗号技術の根幹となっている暗号や認証、電子署名についての知識を、演習で実践的に高める点が特徴です。
サイバーセキュリティ研究室では、デジタルフォレンジック(データの証拠を扱う技術)やIoT(モノのインターネット)などの新しい分野、OSや無線通信技術、暗号理論など、さまざまな分野を研究しています。例えば、他のソフトウェアに危害を与えるようなソフトウェアを発見して排除するOSを専門的に研究している研究室、離島に生息している海鳥などの野生生物の生態を、インターネット経由で自動的かつ長期的に観測するセンサネットワークシステムを開発している研究室などがあります。
この記事で紹介した岡山大学、横浜国立大学、立命館大学の3大学は、THE世界大学ランキング日本版2019にランクインしています。総合ランキングだけではなく、どれだけ卒業生が活躍しているかを表す「教育成果」分野のランキングにもランクインしています。
詳しくは、記事下の関連リンクより、ランキングページをご覧ください。