2019年版で「教育充実度」に指標項目追加、4大学のランクに変動は?

 2018年以前のランキングにおいても、上位にランクインしていたいわゆる「関関同立」の4大学。THE世界大学ランキング日本版2019(以下、日本版ランキング2019)では、いずれの大学も4つの分野(教育リソース、教育充実度、教育成果、国際性)すべてにランクインしています。中でも「教育充実度」は、4大学が共通して持つ強みであり、日本版ランキング2018の分野別ランキングでは18位(同志社大学)~37位(関西大学)に位置していました。
 日本版ランキング2019では、「教育充実度」分野の指標項目として、新たに学生調査が加わり、各大学の順位の変化が注目されました。関関同立の4大学は、16位(関西学院大学)~41位(関西大学)と、これまでと同様の高い順位をキープ。学生からも高い支持を得ていることがわかりました。
 学生調査の項目は、「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」となっています。今回はこれらの項目に着目し、各大学の特徴を見ていきましょう。

<立命館大学><同志社大学>「教育充実度」分野に強い理由は?

 立命館大学の日本版ランキング2019「教育充実度」のスコアは77.9。「教育充実度」分野のランキングで見ると、18位(前年のランキングでは20位)でした。
 立命館大学には、多様な学生と共に学ぶ「協働学修」の機会があふれています。1年次から4年次にわたって高校までと同じような「クラス」があるため、同じ授業で学ぶ仲間が自然と増えていきます。また、新入生が大学生活になじめるように、先輩学生が学習面や生活面をサポートする「オリター」または「エンター」と呼ばれる相互学修のしくみが、古くから根付いています。このような学生同士のかかわりが、よりよい協働学修の素地となっています。
 さらに、教養科目の1つである「教養ゼミナール」では、学部や学年の異なる学生が集まり、調査やディスカッションなどを行います。2019年度は、「きもの」「アフリカ文学」「スポーツビジネス」「SDGs」など、さまざまな分野のテーマで、約40科目が開講されました。専門分野の異なる学生が集まることにより、いろいろな視点から物事を考える大切さを学ぶことができます。
 こうした、様々な学生と学び合える環境が、学生調査の「協働学習の機会」の項目で肯定的な回答を多く引き出したと言えそうです。

 同志社大学は、日本版ランキング2019「教育充実度」分野のランキングで20位タイ(前年は18位)、スコアは77.5でした。
 同志社大学は、学生の協働学習スペースであるラーニング・コモンズの整備に力を入れています。2013年、今出川キャンパス良心館に大規模なラーニング・コモンズを設置。京田辺キャンパスにもラーネッド記念図書館にラーニング・コモンズを備えています。グループワークや留学生との交流、映像の編集などを行うためのスペースが多数設置され、「協働学習の機会」の項目に好影響をもたらしたかもしれません。
 また、ラーニング・コモンズは、学生と教員との交流の場にもなっています。アカデミック・インストラクターと呼ばれる専属教職員が、学生の調べものやレポート作成の相談に応じるほか、教員による、肩の力を抜いた講演会やワークショップ形式のイベントが随時開催されています。その中でも「コモンズカフェ」は、コーヒーや紅茶を飲みながら教員と気軽に話し合える人気のイベント。授業を履修していない他学部の教員と知り合う機会にもなり得ます。教員との接点の多さは、学生調査の「教員・学生の交流」の項目にいい影響を与えたと考えられます。

<関西学院大学><関西大学>国際交流や実践的な授業で「教育充実度」分野に強み

 関西学院大学は、THE世界大学ランキング日本版2019の「教育充実度」分野のランキングで、前年の23位から16位にランクアップ。スコアは78.3でした。その結果、「教育充実度」の分野では、4大学中でトップにランクインしました。
 国際交流を重視する大学として知られる関西学院大学は、外国語で行われる授業の割合が10.5%と4大学中最も高く、外国人留学生が学びやすい環境です。日本人学生にとっても、学内で外国人留学生と交流するチャンスが多く、国際感覚を身につけたい学生にとって満足度が高まりやすい環境だと言えます。これらの取り組みが、学生調査の「協働学習の機会」「大学の推奨度」などの評価を押し上げているのではないでしょうか。
 ほかにも、キャンパス内の国際化を高める取り組みが多くなされています。例えば、留学生と共に学べる「融合科目」、アメリカの大学が日本で開く授業に参加できる科目、中国の学生と日本文化を学ぶ科目などがあります。また、関西学院大学で学ぶ交換留学生向けの「現代日本プログラム」のうち、英語で開講される「総合日本学習科目」は、日本人学生も履修できます。さらに、授業以外に、留学生の生活や日本語習得をサポートする「日本語パートナー」「インターナショナルパートナー」「ラーニング・アシスタント」といった制度も利用すれば、外国人と接点の多い学生生活を送ることができます。

 関西大学は、THE世界大学ランキング日本版2019「教育充実度」分野のランキングで41位(前年は37位)でした。
 関西大学は、自ら考え行動する力「考動力」を育成するため、課題解決型授業の拡大に取り組んでいます。1年次の科目「プロジェクト学習1」で、学生は、グループで課題解決にあたる過程を通し、主体的な学習に不可欠な調査、議論、発表等のスキルを身に付けます。「新しい楽器を作る」「映画で学ぶLGBT+」「関大植物ガイドブックを作ろう」などさまざまなテーマの科目が設けられています。
 さらに、3年次の「プロジェクト学習2」では、企業や団体の協力を得て、実社会の課題解決に挑みます。グループは学部横断で構成され、それぞれの専門性を掛け合わせて新しい価値を生み出すことがねらいです。例えば、「航空業界を知る」をテーマにした授業では、学生たちは神戸空港のフィールドワークを経て、航空会社の顧客満足度向上や地域連携などの課題に臨みました。
 これら実践的な授業の拡充が、学生調査の「協働学習の機会」「授業・指導の充実度」などの評価に結びついたと考えられます。