日本と世界が直面するエネルギー問題
日本では、発電量の多くを火力発電でまかなっています。火力発電で使われる化石燃料には、温室効果ガスを多く排出するというデメリットがあります。
温室効果ガス削減や、発電での安全確保などを目指し、日本では、自給率(Energy Security)、電力コスト(Economic Efficiency)、温室効果ガス排出量(Environment)、安全性(Safety)という「3E+S」の取り組みを進めています。
しかし、日本では、再生可能エネルギーの割合が2017年の時点で16%と、先進国の中でも低い現状があります。このため、太陽光発電など、さまざまな再生可能エネルギーの普及・開発が行われています。
2019年には、国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)がスペインで開催されましたが、交渉が難航し、閉会日が延長となりました。世界中で環境問題への対策が注目を集めているものの、排出量削減目標の達成は容易ではなく、課題が残されています。
エネルギー工学の教育・研究に力を入れる日本の大学
エネルギー工学についての教育や研究を行う大学を紹介します。
■東京工業大学
東京工業大学では、環境・社会理工学院の融合理工学系で、エネルギー資源の枯渇などをグローバルな問題として学びます。
研究室では、液体金属を用いた革新的な原子炉システム構築、使用済み核燃料などのリサイクル技術、さまざまなエネルギー供給技術の経済性評価など、エネルギーに関する専門的な研究が行われています。
融合理工学系では、理工学の知識について、既存の学問体系の枠にとらわれず、超域的に学ぶシステムにしています。さらに、専門分野の教育だけでなく、国際社会全体が抱える複合的問題を解決するための知識やスキルを備えた人材の育成を目指しています。PBL(Project-Based Learning)や、デザインの考え方を問題解決に応用する「デザイン思考」を取り入れ、学んだことを社会に役立てる力を育みます。
さらに、大学院には「エネルギーコース」を設けているため、学生は、エネルギー分野について、大学院でより深めることができます。
■名城大学
名城大学の理工学部応用化学科では、資源・エネルギー問題や環境問題を解決に導く技術者の育成を目指した教育を行っています。「合成化学」「物質・材料化学」「環境・エネルギー材料」の3領域を設置しています。学生は、1・2年生では、3領域の基礎を学び、3年生からは、興味のある領域を中心に学修します。
永田央教授の有機化学研究室では、「人工光合成」について研究しています。具体的には、化学の視点から、光合成を光のエネルギーから高エネルギー物質を取り出す過程ととらえ、有機分子を使った新しい光化学反応・電気化学反応の開拓を進めています。
■神奈川大学
神奈川大学では、学生が、自分の興味・関心に合った形で、エネルギーについて幅広く学べることが特徴的です。
工学部物質生命化学科では、「物質・ナノサイエンス」「生体・生命機能」「環境・エネルギー」を学修します。学生は、3年生までに、工業、医薬、環境など幅広い分野を学んでから、興味のある研究室に所属します。
環境・エネルギー分野では、新エネルギーや省エネルギー技術の創成を目指し、バイオマス、水素を用いた発電、エネルギー蓄積などについて教育・研究しています。
特徴的な取り組みとして、物質生命化学科では、少人数で行われる「基礎化学演習」において、多数の教員が、高校で化学を学んでいなかった学生をフォローアップしています。低学年のうちに基礎知識を固めることにより、学生の理解度を高めることができます。
また、工学部総合工学プログラムは、学科の垣根を越えて工学全域を学べるプログラムです。環境・エネルギー工学の領域では、効率の良いエネルギーの利用・輸送・貯蔵など、持続可能な社会を目指して学びます。
この記事で紹介した、東京工業大学、名城大学、神奈川大学の3校は、THE世界大学ランキング日本版2019にランクインしています。詳しいスコアについては、記事下の関連リンクよりご覧ください。