教育環境の充実を表す「教育リソース」分野

 「教育リソース」分野のランキングでは、私立トップ10校のほとんどが医科大学であるということが特徴的です。
 2位の豊田工業大学は例外で、医学部を設置していません。豊田工業大学は、1981年にトヨタ自動車の社会貢献事業として設立された大学です。トヨタ自動車をはじめとするグループ各社の支援により、私立大学であるにもかかわらず、学生は国立大学とほぼ同額の学費で学べます。また、講義や実習でも、トヨタ自動車の協力で実践的な教育が行われています。
 さらに、少人数教育ならではの取り組みとして、教員が学生の学修計画をフォローアップする「アカデミック・アドバイザー」制度があります。アカデミック・アドバイザー制度により、教員と学生が関わる機会が増えるため、学生は、履修や進路などにまつわる相談をしやすくなります。

学生調査で注目を集める「教育充実度」分野

 「教育充実度」分野の私立大学1位は、2019年版ランキングに引き続き、国際基督教大学です。立命館アジア太平洋大学は、2019年版のランキングでは、5位タイでしたが、2020年版のランキングでは、スコアアップにより、2位に順位を上げました。
 私立大学で1位の国際基督教大学は、リベラルアーツ教育に力を入れています。学生は1・2年次に幅広い分野の科目で学問的基礎力を養い、2年次の終わりに専門とする分野(メジャー)を決定します。多くの科目が開講されているため、学生にとって、自分の興味ある分野を横断的に学べる環境といえます。
 また、講義はディスカッション・対話を中心とし、学生からのフィードバックの機会が多いことも特徴です。このような取り組みが、学生調査のスコアを向上させたのではないでしょうか。

卒業生の活躍度合いが反映される「教育成果」分野

 私立大学のうち、「教育成果」分野の1位~3位の大学は、2019年版ランキングと比べて順位変動はありませんでした。また、私立大学で9位の学習院大学、10位の芝浦工業大学は、2019年版の「教育成果」と比べ、スコアアップを果たしました。学習院大学は、2019年版のランキングでは56.6だった「教育成果」のスコアが、2020年版では62.6となり、6ポイント上昇。芝浦工業大学は、2019年版のランキングでは57.8だった「教育成果」のスコアが、2020年版では61.6となりました。
 私立大学1位の慶應義塾大学は、全キャンパスで年間計140回程度、就職ガイダンスを開催するなど、キャリア教育に積極的です。また、先輩学生の就職活動について情報収集のできる「就職活動体験記システム」、慶応義塾大学の卒業生にOB・OG訪問の連絡を行える「OB・OG訪問システム」、求人票や企業情報を閲覧できる「求人ナビ」という3つの就職活動支援ツールを導入していることも特徴です。
 さらに、研究面でも、「長寿」「安全」「創造」の3つのクラスターで文理融合研究を行っています。例えば、「長寿」クラスターでは再生医療や高齢者の雇用、「安全」クラスターでは安全保障や環境問題、サイバーセキュリティ、「創造」クラスターでは新素材や次世代通信技術など、現代社会に求められる研究を行っています。
 このような取り組みが、企業人事や研究者の評判につながったのではないでしょうか。

国際的な教育環境を表す「国際性」分野

 「国際性」分野のランキングにランクインした私立大学1位は立命館アジア太平洋大学、2位は国際基督教大学という結果でした。2019年版の「国際性」分野ランキングから、2大学の順位が入れ替わる形になりました。また、私立大学で4位の梅光学院大学と、5位の創価大学は、2019年版ランキングでは私立大学の中で12位・13位と大きく順位を上げました。
 私立大学で1位の立命館アジア太平洋大学は、2019年5月1日時点で、2,906人の外国人留学生を受け入れています。この数は、全学生の約半数に上ります。また、さまざまな国際交流や海外研修のプログラム・留学制度が整っているほか、言語教育サポートも充実、学生がキャンパス内外で国際交流をしやすい環境といえます。
 特徴的なグローバル教育プログラムとして、FIRST(Freshman Intercultural Relations Study Trip)があります。これは、1回生がアジアの文化・社会に触れるためのプログラムで、日本人学生は海外へ、留学生は国内の目的地で4、5日間の実習を体験します。学生が慣れない土地・文化・言語の中で調査活動を行うことを目的に、くじ引きで目的地を決め、学生たちのチャレンジ精神を育みます。2019年度では、日本人学生のおよそ2人に1人が参加しました。