THE世界大学ランキング日本版2020「教育充実度」分野のランキングでわかること
教育充実度のスコアは「どれだけ教育への期待が実現されているか」を表します。「教育充実度」分野の指標項目には「グローバル人材育成の重視」「入学後の能力伸長」についての高校教員への評判調査と、学生調査による項目があります。
2018年版までのランキング指標項目は、高校教員の評判調査の2項目のみでしたが、2019年版からは、学生調査を加えた5項目となりました。大学にとって重要なステークホルダーである在学生の声をランキングに反映させるべく、学生調査が加わったのです。2019年版から2020年版にかけては、指標項目の変更はありませんでした。
学生調査の項目は「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」の3つ。それぞれに紐づく質問項目は、以下の7つです。
「教育充実度」分野のランキングで注目の大学を紹介
日本版ランキング2020の「教育充実度」分野のランキングで、2019年版のランクから大きく躍進した注目の大学を紹介します。
■徳島大学
徳島大学は「教育充実度」分野の順位が2019年版では150位でしたが、2020年版で130位にランクアップしました。
特徴的な教育の取り組みとして「語学マイレージ・プログラム」があります。「語学マイレージ・プログラム」は、学生が定められた活動や科目の履修を通して「マイレージ」を貯め、700ポイント以上に達することを卒業要件とするものです。マイレージは、外国語教育科目の成績、外国語技能検定試験の成績、語学留学や語学学習プログラムへの参加、eラーニングでの学習などによって得ることができます。
また、徳島大学では、教育改善の取り組みが盛んです。文部科学省の大学教育再生加速プログラム(AP)テーマI「アクティブ・ラーニング」に採択され、学生と教員がともにアクティブ・ラーニングを実践する活動を行っています。反転授業、グループワーク、学修ポートフォリオ、専門領域早期体験等によるリフレクションを基盤としたアクティブ・ラーニングの体験を通して、初年度の学生と教員が共に学び合い成長する科目である「SIH道場-アクティブ・ラーニング入門-」を導入しています。
さらに、大学による学生調査が、「学生生活実態調査」「学生の学修に関する実態調査」「学生支援に関するアンケート」と、3種類も行われています。それらの結果や、結果を踏まえた対応についても公開されています。
これらの取り組みが、教育充実度のランクアップにつながったのではないでしょうか。
■東京工業大学
東京工業大学の「教育充実度」分野のランクは2019年版では25位でした。2020年版で9位にランクアップしています。
東京工業大学では、2016年から教育改革を実施。クォーター制導入やアクティブ・ラーニングの強化など、学生が将来のビジョンに合わせて、大学院教育を含めたさまざまな進路を選べるカリキュラムへの進化を遂げています。日本の大学で初めて、学部と大学院を統一した「学院」教育のもと、異分野を融合させた、エネルギー、ライフエンジニアリングなど6つのコースを設置しました。
また、アクティブ・ラーニングやリーダーシップ教育を取り入れた教養教育にも力を入れています。「リベラルアーツ研究教育院」を新設し、学部課程から博士後期課程までのリベラルアーツ教育を行っています。学士課程入学直後の学生向けの「東工大立志プロジェクト」では、「人間性」「社会性」「創造性」の三本柱を育てるため、正解のない問題に取り組みます。学生は、講堂でさまざまなテーマに詳しいゲスト講師の講義を聞いた後、30人規模のクラスに分かれ、さらに4~5人程度の少人数でグループワークを行います。学生にインプットとアウトプットを促し、テーマについてより深く学修できるようにすることを目指しています。
これらの取り組みが、教育充実度のランクアップにつながったのではないでしょうか。
■秋田大学
2019年版の「教育充実度」分野で96位タイだった秋田大学は、2020では82位タイにランクアップしました。
秋田大学は、「学生第一」を大学のモットーに掲げています。学生の声を取り入れ、学生目線での教育環境や教育方法、学生生活支援などの充実・改善を図ることを目的として「学長カフェ」を行っています。これは、さまざまな学部や部活動などの学生6人程度と学長が、学長室でケーキなどを食べながら、学生生活について話し合うものです。
そのほか、「学生による学生のための自律学習」をテーマに設立された「ALL Rooms」では、英会話の練習や民間試験の勉強、留学生との交流などができます。学生の運営スタッフも在籍し、実際に学生スタッフが経験した語学学習に基づいた生のアドバイスを聞くことができます。学生目線のグローバル教育といえるでしょう。
また、緊急の場合に備え、学生相談窓口を24時間開催していることも特徴的です。
これらの取り組みが、教育充実度のランクアップにつながったのではないでしょうか。
これらの大学の共通点として、学生の交流や協働学修の機会を促進していることが挙げられます。学生視点の新たな取り組みに注目が集まります。