東京工業大学が初の単独2位に
●ランキング対象は278校
●東京工業大学は2年連続のランクアップで2位に
●私立大学は「教育充実度」と「国際性」で強みを発揮
イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)」は3月25日、「THE世界大学ランキング日本版2021」のランキング対象となった278大学を発表しました。トップは2年連続で東北大です。2位は前年3位タイだった東京工業大学で、東京大学は前年と同じ3位。京都大学は4位、大阪大学は3つ上げて5位になりました。私立大学トップは前年と同じ国際基督教大学で11位をキープ。今回も日本の大学の多様性、各大学の特色を浮かび上がらせるランキングとなりました。
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ランキング対象は国立67校、公立44校、私立167校
THEは各大学が自らの強みや個性を明確にして一層強化できるよう、様々な大学ランキングを作成しています。教育力重視の「THE世界大学ランキング日本版」は学生の学びの質や成長性に焦点を当て、大学の教学改革やグローバル化の推進に活用してもらうことを目的に、教員との交流や協働学習の機会について聞く学生調査を組み込んでいます。受験生や社会に対して入試難易度以外の大学の価値を示すとともに、日本の大学の多様性を世界に発信するねらいもあります。
5年目となる今回は278校がランキング対象になりました。これまでと同様、ランキング指標は「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野で構成、前年までと同じ比重が維持されました。「教育充実度」のスコアに反映される学生調査も過去2回と同じ設問で実施されました。
東京工業大学は「教育充実度」の順位が年々アップ
ランキング対象となった大学は国立67校、公立44校、私立167校でした。
以下、ランキングの「トップ10」「11位~50位」「51位~201+」の各ゾーンについて概要を見ていきます。
■トップ10
1位の東北大学は、スコアを前年から大きく伸ばして15位になった「国際性」をはじめ、「教育成果」(2位)、「教育リソース」(5位)、「教育充実度」(8位)など、分野のバランスの良さが強みです。
2位の東京工業大学は、学生や高校教員の声を反映した「教育充実度」が2019年度以降、25位タイ→9位→5位と上昇し、総合ランキングも2年連続のアップしました。5位の大阪大学は「教育充実度」が前年の26位から17位、「国際性」は38位から27位と大きく上昇しました。12位から順位を上げて10位の広島大学は初のトップ10入りとなります。
■11位~50位
前年と同じ11位の国際基督教大学は「教育成果」の順位が85位→43位→18位と年々、大きく上昇しています。12位の慶應義塾大学は、「国際性」(65位→45位)の順位上昇が前年から2ランクアップの主な要因です。早稲田大学は前年と同じ13位でした。
国際教養大学は「教育充実度」と「国際性」の両分野でトップを維持する一方、「教育成果」が17位から52位に下がって総合ランキングが10位から14位に。「教育リソース」で前回トップの東京大学(今回の「教育リソース」は4位)を抜いてトップになった東京医科歯科大学は、総合ランキングで29位タイから17位に躍進しました。
ほかに総合ランキングを5つ以上上げたのは岡山大学(28位→23位)、芝浦工業大学(35位→30位タイ)、東京理科大学(39位→32位)、長崎大学(43位→33位タイ)、明治大学(53位タイ→39位タイ)、中央大学(60位→50位)です。明治大学は国際性が91位タイから71位に上昇、教育充実度も24位から15位に。初のトップ50入りとなる中央大学は国際性が121位から87位タイに躍進し、教育成果も58位から49位タイに上がりました。
■51位~201+
明治大学、中央大学と共にMARCHの一角をなす青山学院大学(72位タイ→52位)は、国際性(89位→78位)をはじめ、4分野すべてで順位を上げました。滋賀医科大学(95位)、奈良女子大学(97位)は初のトップ100入りとなりました。
学生数400人の宮崎国際大学が「国際性」で8位に
私立大学は今回も「教育充実度」と「国際性」で強みを発揮しました。
「教育充実度」でトップ50に入った私立大学は23校。この分野では津田塾大学(15位タイ→9位)、東京理科大学(22位→12位)、芝浦工業大学(46位→34位)、南山大学(55位→39位タイ)などのランクアップが目を引きます。津田塾大学は「教育充実度」の順位が2年連続で上昇し、明確な強みとなっています。
「国際性」ではトップ50の31校を私立大学が占め、関西外国語大学(10位→5位)、宮崎国際大学(19位タイ→8位)、立教大学(53位→32位)、立命館大学(43位→33位タイ)、拓殖大学(56位→43位タイ)などのランクアップが目を引きます。宮崎国際大学は英語教育とリベラルアーツを掲げる学生数約400人の小規模大学です。総合ランキングも前年の151-200位から121-130位にアップし、大学の多様性に光を当てる「THE世界大学ランキング日本版」の象徴的存在と言えます。
「コロナ禍の中にあっても、日本の大学は競争力向上に有利な立場」
THEチーフ・ナレッジ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は、今回のランキングで躍進した大学の名前を挙げて讃えたうえで、「これらの例は今年度、日本の大学が達成した成果と、日本全国の高等教育機関の強さのほんの一端に過ぎない」とコメントしました。「10兆円規模の大学研究基金設立という素晴らしいニュースを受けて今後、数年にわたって日本の高等教育界の動向からますます目が離せない」と期待を示しました。
同氏は、新型コロナウィルス問題が留学生の動向や人材の流れなど、世界的な混乱を引き起こし、当面の間、高等教育に大きな影響を与え続けるとしながらも、「日本の大学は国内的にも世界的にも、競争力を高め続けることができる有利な立場にある」と述べています。