コロナ禍の大学における学生調査
コロナ禍にもかかわらず、より高いレベルの教育充実度が学生調査結果に表れている一方で、伝統的な代学のヒエラルキーはさらに変動しています。
日本の大学に通う学生の学習経験に対する満足度は高まっており、新型コロナウイルスの流行が学生の認識レベルにほとんど影響を与えていないことが、THEのデータで明らかになりました。
この調査は毎年8月から12月の間に実施され、4年間で合計140,400件の回答が集まっています。
過去4年間の学生調査結果を見ると、2020年は前年および3年前と比較して、回答者が授業・指導の充実度の4つの側面において満足していることがわかりました。それらは、クリティカル・シンキングの支援、学びの関連付け、学びの実社会への応用、挑戦/やりがい です。
また、学生は、授業や大学の運営の改善に関して提案する機会に満足しており、提案が実行されていると感じる傾向が強く、全体的に自分の大学を友人や家族に推薦する可能性が高いことがわかりました。
しかし、教員・学生の交流に関する2つの項目についての学生の認識は、パンデミックが交流のレベルにある程度の影響を与えたことを示唆しています。学生は、過去3年間と比較して、2020年は教員との交流の機会や、仲間との協働学習の機会に満足していませんでした。この後者の指標は2018年から低下しているため、2020年にさらに低下したのはパンデミックの影響だけではないと考えられます。
また、今回の調査結果によると、2020年に完全な対面式で学習していた学生は、ほとんどまたは完全にオンラインで学習していた学生に比べて、一般的に授業への参加意識が高く、交流の機会も多かったようです。これは科目の違いによるものと思われます。例えば、保健衛生系と医学系の学部学科で学ぶ学生は、学びを実社会に応用できると感じていると答えた人が最も多く、また対面授業で学んでいる人が多いという結果が出ています。
一方、調査に寄せられた学生のコメントを分析したところ、2019年と比較して2020年は自学のオンラインリソースに満足していることが示唆されました。これは、パンデミックの際に大学がデジタル教育・学習に力を入れたことを反映していると考えられます。
THEのデータサイエンティストであるエマ・デレーズは、「過去数年間の日本の学生の意見を追跡した結果、彼らの回答に明確な変化が見られたのは非常に興味深い」と述べています。
「私たちが学生調査を実施している国の中でも、日本は特に批判的な学生が多い傾向がありました。しかし、日本の高等教育では、大学の学生エンゲージメント(学生の学びへの関与)への取り組み方に変化が見られるようで、オンライン学習への移行がその影響を受けていないことは心強いことです」。
2020年と2019年の学生調査データは、3月25日に発表された「THE世界大学ランキング日本版2021」のランキング指標の一部を構成しており、250以上の大学がランキング対象となっています。
東北大学は2年連続で首位に立ち、東京工業大学は、学生調査の授業・指導の充実度や教員・学生の交流、協働学習の機会など、いくつかの分野でわずかな改善が見られたことにより、同率3位から2位へとさらに上昇しました。一方、東京大学は3位にとどまり、京都大学は4位となりました。これは、日本の高等教育における伝統的なヒエラルキー(東京大学と京都大学は日本で最も権威のある教育機関と考えられている)がさらに変動したことを示しています。