トップは3年連続で東北大学
●ランキング対象は国立67校、公立42校、私立164校
●東京大学は2位にランクアップ、大阪大学と東京工業大学が3位タイ
●慶應義塾大学は2年連続ランクアップで私立トップに
●コロナ禍にあっても学生調査の平均スコアが上昇
イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)」は3月24日、「THE世界大学ランキング日本版2022」のランキング対象となった273大学を発表しました。東北大学が3年連続のトップで、東京大学は前年から順位を1つ上げて2位。大阪大学と東京工業大学が3位タイでした。私立大学の中では、前年から順位を1つ上げて11位の慶應義塾大学がトップに。コロナ禍の中、学生の成長支援に奮闘する大学の様子もうかがい知れる結果となりました。
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「日本人学生の留学比率」の項目でコロナ禍の影響に配慮
THEは各大学の強みや個性の明確化と一層の強化を支援する目的で、さまざまな大学ランキングを作成しています。教育力重視の「THE世界大学ランキング日本版」は2017年にスタート。学生の学びの質や成長性に焦点を当て、大学の教学改革やグローバル化の推進に活用してもらおうと、学生調査も取り入れています。受験生や社会に対して、入試難易度以外の大学の価値を示すとともに、日本の大学の多様性を世界に発信するねらいもあります。
6年目となる今回は、273校がランキング対象になりました。これまでと同様、ランキング指標は「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野で構成。それぞれの項目と比重も従来通りですが、コロナ禍の影響で留学の送り出しが困難になったことをふまえ、「国際性」分野の「日本人学生の留学比率」は、前回と同じ2019年度のデータを使用しました(前回、不参加の大学は2020年度のデータを使用)。「教育充実度」のスコアに反映される学生調査は、これまでと同じ設問で実施されています。
慶應義塾大学は2年連続のランクアップ
ランキング対象となった大学は国立67校、公立42校、私立164校でした。
以下、ランキングの「トップ10」「11位~50位」「51位~201+」の各ゾーンについて概要を見ていきます。
■トップ10
1位の東北大学は「国際性」の順位が6つ上がって9位、国立大学の中ではトップになりました。トップから3位までの差が0.1ポイントずつで拮抗する「教育成果」も3位。「教育充実度」は順位を4つ上げて4位タイ、「教育リソース」は6位でした。高いレベルでバランスのよさを発揮し、3年連続のトップとなりました。
東京大学は「教育リソース」で前年の4位からトップに上がり、総合ランキングで3年ぶりに2位となりました。
3位タイの大阪大学は「国際性」で27位から19位と大きく順位を上げています。3位タイの東京工業大学は、学生や高校教員の声を反映する「教育充実度」が強みで、今回は6位でした。
5位から10位は前年と同じ顔ぶれで、1つ以内の順位の変動にとどまっています。
■11位~50位
11位の慶應義塾大学は2年連続のランクアップ。
国際基督教大学は総合ランキング(12位)で順位を1つ落としたものの、ここ数年大きく上昇してきた「教育成果」の順位は今回も1つ上げて17位でした。
早稲田大学は4年連続の13位です。
24位の立命館アジア太平洋大学は総合ランキングこそ2つ下げましたが、「国際性」で初のトップに躍り出ました。
総合ランキングの順位を6つ上げた18位の会津大学は、「教育成果」が151-200位から67位タイと大きく上昇。ほかに順位の上昇幅が目立つのは、横浜市立大学(39位タイ→34位)、信州大学(54位→47位)などです。総合ランキングが6つ下がった大学、10下がった大学が1つずつありますが、全体としては上昇、下降とも小幅な変動にとどまりました。
■51位~201+
100位内の大学で前年から10ランク以上アップしたのは名古屋市立大学(83位→61位)、獨協大学(98位→83位タイ)、奈良女子大学(97位→83位タイ)、三重大学(101-110位→88位)です。
今回、新たにランキング対象になったのは151-200位の埼玉医科大学、いずれも201+の金城学院大学、國學院大學、岡山商科大学の計4校でした。
THEはパンデミックの中での上位大学の安定ぶりを称賛
コロナ禍が長引き大学が困難に向き合い続ける中、今回のランキングからは日本の大学の“底力”も読み取れます。「教育充実度」に反映される「学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会」では、多くの項目の平均スコアが、2019年版ランキングでの調査導入以来、継続的に上昇。教員との交流の機会、共同(協働)学習の機会などの平均スコアは前回、初めて下降に転じましたが、今回、再び上昇しました。各大学におけるオンライン授業の導入・改善などの取り組みが、学生満足度の維持・回復につながったとも推測されます。
同じく「教育充実度」に反映される「高校教員の評判調査」では、「グローバル人材育成に力を入れている大学」「生徒の力を伸ばしている大学」を含む、優れた大学として挙げる数が増えた高校が、減った高校や変わらなかった高校を大きく上回りました。大学の取り組みに対する高校の関心が高まり、積極的な記入につながったと考えられます。
THEチーフ・ナレッジ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は日本の大学について、「THE世界大学ランキング」と「THEインパクトランキング」に世界で2番目に多くランクインするなど、主要ランキングへの積極的な参加を説明しました。「日本の大学にとって非常に困難なこの時期に、3年連続でトップの座を維持した東北大学は称賛に価する。このような一貫した卓越性の実証は、歓迎されるべきことだ」とコメントしています。さらに、「東京大学が2位の座を獲得したことが注目されるが、世界的なパンデミックによる社会の混乱にもかかわらず、ランキング上位層がおおむね安定していることは、日本の上位大学の回復力と不屈の精神の証と言える」と称賛しています。