自学の強みに合ったSDGsの目標を選んでエントリー

 「THEインパクトランキング」は気候変動に対する活動やジェンダーの平等、健康と福祉など、大学がもたらす社会的・経済的インパクトの尺度を国連のSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)が掲げる17の目標(ゴール)に合わせて設定。サステナビリティに対する大学の貢献度をランク付けします。
 大学は自学の強みに合った目標を選んでエントリー可能です。総合ランキングに参加する場合は「SDG17(実施手段)」が必須項目で、これに加えて3つ以上のSDGについてデータを提出し、「SDG17」以外でスコアの高い3つがランキングに反映されます。SDG別のランキングもあり、こちらに参加する場合は自学が強みとする分野のSDGを1つ以上選びデータを提出します。

トップ層の順位が大きく変動

 2022年版のインパクトランキングでは、110の国・地域から過去最多の1,524校(前年から23%増)が参加。世界の高等教育機関においてSDGsの重要性が高まっていることがうかがえます。
 総合ランキングトップになったオーストラリアのWestern Sydney UniversityはSDG6(水・衛生)で1位、SDG12(生産・消費)で2位を獲得し、前年の17位から躍進しました。総合2位はアメリカのArizona State University (Tempe)(前年9位タイ)、3位はカナダのWestern University(前年52位)。4位はサウジアラビアのKing Abdulaziz University(前年46位タイ)とマレーシアのUniversiti Sains Malaysia(前年39位タイ)が同率でした。
 北海道大学は総合10位(前年101-200位)、京都大学が19位タイ(前年101-200位)で、日本から2校がトップ20にランクインしたことになります。
 トップ層の順位が大きく変動するのがこのランキングの特徴です。トップ10の大学の中で前年もトップ10入りしていたのは、2位のArizona State University (Tempe)(アメリカ)、6位のUniversity of Auckland(ニュージーランド、前年は9位タイ)、7位のQueen's University(カナダ、前年は5位)の3校のみ。オーストラリアの大学に替わってアジアの大学が入る傾向が見られました。
 トップ20にはいずれも前出のKing Abdulaziz University、Universiti Sains Malaysia、北海道大学、京都大学のほか、韓国の慶北大学校(13位タイ、前年54位タイ)、タイのChulalongkorn University(16位タイ、前年23位タイ)、インドネシアのUniversity of Indonesia(18位、前年85位タイ)などが新たにランクイン、アジア勢の台頭が目を引きます。
 トップ100に入った大学の数はイギリスが最多で20校。オーストラリア17校、カナダ16校、ニュージーランド7校と続きます。

北海道大学はSDG2(飢餓)でトップ

 日本からの参加は世界で2番目に多い84校で、そのうち76校が総合ランキングにランクインしました。総合ランキングトップ200への7校のランクインは、アジアでは韓国が8校と最も多く、日本はタイと並んで2番目に多いです。
 前述した通り、総合ランキングで北海道大学が10位、京都大学が19位タイでした。過去3回における日本勢の最上位は2020年の北海道大学の76位。2021年は両大学とも101-200位で、今回のそろってのトップ20入りは大躍進と言えます。  
 北海道大学はSDG2(飢餓)で1位、SDG14(海洋資源)17位、SDG15(陸上資源)18位タイ、SDG17(パートナーシップ)12位タイなどで総合スコアを伸ばしています。京都大学はSDG2(飢餓)で3位、SDG9(イノベーション)16位タイ、SDG14(海洋資源)で15位と、3つのSDGでトップ20に入りました。
 この2校を含め14校が総合ランキングの300位までに入りました。そのうち私立大学は慶應義塾大学(101-200位)、立命館大学と早稲田大学(いずれも201-300位)の3校です。

日本からのSDG14(海洋資源)トップ100入りは前年の3校から9校に

 各SDGランキングでトップ100にランクインした日本の大学は延べ74校。SDG2(飢餓)は11校に上り、日本の強みの分野となっています。ほかにトップ100入りが多いのはSDG14(海洋資源)9校、SDG6(水・衛生)8校、SDG1(貧困)7校などです。

 日本の大学のランキングをSDG別に見ていきましょう。
・SDG1(貧困):筑波大学(28位)、立命館大学(35位)、京都大学(38位)、慶應義塾大学(49位)の4校がトップ50入り。
・SDG2(飢餓):北海道大学(1位)、京都大学(3位)。神戸大学(25位)。日本からSDG別トップが出るのは、2020年の「SDG9(イノベーション)」における東大の1位タイ以来。
・SDG3(保健):名古屋市立大学(21位)、獨協医科大学(27位)、徳島大学(34位タイ)の3校がトップ50入り。
・SDG9(イノベーション):東北大学(12位)、大阪大学(13位タイ)、京都大学(16位タイ)など、6校がトップ50入り。
・SDG11(都市):東北大学(52位タイ)、慶應義塾大学(87位タイ)、筑波大学(90位タイ)。
・SDG13(気候変動):東北大学(97位)が日本で唯一のトップ100入り。
・SDG14(海洋資源):京都大学(15位)、北海道大学(17位)がトップ20入り。トップ100入りは前年の3校から9校に大幅増。
・SDG16(平和):神戸大学(8位)、慶應義塾大学(16位)。

「大学の多様性を示し、進学先の選択先を拡大」

 THEチーフ・ナレッジ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は「THEインパクトランキング」について、「社会の改善にどう貢献しているかという観点から大学の卓越性を再定義するもの」と説明。「世界中の大学コミュニティが自らの社会改善へのインパクトを測定し、SDGs達成のためのベストプラクティスを紹介していることは感動に値する。学生だけでなく政府も大学にこうしたコミットメントを求めるようになっていて、その要請は今後さらに強まるだろう」とコメントしました。欧米の著名な大学以外の大学が上位に多くランク付けされていることについて、「大学の多様性を示し、進学先の選択肢を広げていることが非常に喜ばしい」と述べています。