ラーニングコモンズの概要や目的について

 「ラーニングコモンズ」とは、学生の主体的な学修を支援する空間のことを指します。
 個人の自習に使うことはもちろん、グループでディスカッションをする場としても利用できるのが、通常の自習室との違いです。協調性やコミュニケーション能力を養う空間づくりも、ラーニングコモンズの設置目的の一つといえます。
 さらに、豊富な書籍の設置や、わからないことがあれば質問できるスタッフの常駐など、ラーニングコモンズには学生が快適に学修できる設備が整っています。
 また、近年のコロナ禍においては、ラーニングコモンズを拠点として、オンラインでも参加できるイベントや講座を開催している大学もあり、より広い領域での交流・情報交換のハブにもなっています。
 オンラインでより広い地域の学生と交流することで、学修意欲の向上やコミュニティの広がりが期待でき、より充実した大学生活を送れることが期待できます。

大規模大学のラーニングコモンズ:東北学院大学

 ここからは、ラーニングコモンズを設置している大学の中から、学校の規模別に1校ずつ取り上げ、各校の取り組みについて紹介していきます。
※大学の規模の定義:収容定員を➀「4,000人未満」(小規模校)/➁「4,000人以上、8,000人未満」(中規模校)/➂「8,000人以上」(大規模校)

 まず、大規模校に当たる東北学院大学の取り組みについて説明します。
 東北学院大学には、「コラトリエ」というラーニングコモンズが設置されており、イベントスペースやグループ学修やディスカッションを行う空間など、目的によってさまざまなスペースが備わっています。コラトリエは、授業の準備やゼミ学修、部活、サークル活動などで学生が集まり、教えあったり学びあったりすることで、多様な価値観や問題を共有することを目的としています。
 レポートや卒業論文の作成やプレゼンに関するセミナーの開催や個別相談なども実施しており、学生の悩みを解決できるようなサービスも存在します。
 例えば、対面とZoom(オンライン)で2021年12月に開催された「レポート自己診断講座」では、これまで作成したレポートを振り返り、構成や表現、引用の仕方などについての講座が行われました。
 このように学修・コミュニケーションの場が提供されているだけでなく、実用性の高い多様な催しに参加できることも、学生にとって大きなメリットといえるでしょう。

中規模大学のラーニングコモンズ:日本女子大学

 日本女子大学は、学修支援と社会連携を目的としている「かえで」と、学修支援と研究関連の支援を目的としている「さくら」の2つのラーニングコモンズを設置しています。
 「かえで」は、ディスカッションやプレゼンの練習の場としても使え、課外活動などの相談ができるコンシェルジュが駐在しています。
 一方「さくら」には、勉強方法やレポートの書き方など学修に関することを相談できる、「ラーニングサポーター」が存在しています。ラーニングサポーターは大学院生や学部3・4年生が担当しており、身近な学生同士で相談やアドバイスの交換が可能です。ラーニングコモンズを利用した交流はもちろん、2020年以降はオンラインでの学修相談やミニ講座も開催されています。
 用途に合わせた2種類のラーニングコモンズが設置されているため、同じ目的を持った学生が集い、お互いの姿を見て学ぶことで、学生同士のコミュニケーションが活性化されることが大きなメリットであるといえます。

小規模大学のラーニングコモンズ:九州工業大学

 九州工業大学は、戸畑と飯塚の2つのキャンパスにラーニングコモンズが設置されています。
 ラーニングコモンズでは、現役学生のサポーターによる学修支援やイベントの開催を行っており、試験問題や過去問に対するアドバイスや、TOEICや就職活動に関する講座を実施しています。このサポーター制度により、学年の枠を超えた学生同士の交流が生まれています。
 さらに、サポーター制度は学内の交流だけでなく、他校との交流にもつながっています。2019年から始まった北九州市立大学図書館のサポーターとの合同研修会は、2021年までに5回開催。定期的な意見交換が行われています。
 また、教員による学修支援も充実しており、主に基礎科目の個別指導が実施されています。
 このように、九州工業大学のラーニングコモンズは、学生と教員、両方から支援が受けられる場であること、学内外の学生との交流のきっかけになっていることが大きな特色です。