日本の食料問題の現状

 2021年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで38%です。2019年度のカナダ、オーストラリアの食料自給率は150%以上、ヨーロッパの多くの国が60%以上であることと比較すると、日本の38%という食料自給率は先進国の中でかなり低い数値であることがわかります。
 日本では、国内で消費される食料の大部分を海外からの輸入に頼る一方で、大量の食品ロスが発生しており、農林水産省の発表によると1年間で522万トンもの食料が廃棄されています(2020年度推計値)。
 日本のように食品ロスが問題になる国もあれば、食料不足が深刻となっている国もあります。世界中の人口を賄うのに十分な量の食料が生産されているにもかかわらず、世界では約10人に1人が飢餓や食料不足の状態にあると言われています。
 SDGsの目標の中に、食料問題に関連する目標(目標2「飢餓をゼロに」)があります。この記事では、この目標2にかかわる研究や取り組みを行っている大学の中から、3校の取り組みをご紹介します。

【未来を創る大学】食料問題の解決策を探る①岡山大学

 まず、岡山大学の取り組みについて説明します。
 岡山大学は、THE世界大学ランキング日本版2022総合21位タイ、THEインパクトランキング2022総合201-300位にランクインしています。
 岡山大学農学部の生物生産システム工学研究室では、地球人口の増大に対処可能で、長期にわたって持続的に安定した食糧生産を行い、人類が地球と共存するための仕組みづくりに関する研究・教育活動が行われています。
 具体的には、農業人口問題を解決するための自動化技術の開発、機械やロボットを用いた新しい農業生産システムの構築などを目標としています。
 大学全体でもSDGsに関する取り組みに力を入れており、大学のHPには各目標と関連した取り組み事例がアップされています。食糧問題と関連する目標2に対する取り組みとして、持続可能な農業生産に資する植物病害防除剤(抵抗性誘導剤)の研究開発や、作物健康診断による農作業CO2産出削減などの活動が実施されています。

【未来を創る大学】食料問題の解決策を探る②東京農業大学

 東京農業大学は、THE世界大学ランキング日本版2022総合151-200位、THEインパクトランキング2022総合401-600位、目標2では101-200位にランクインしています。
 東京農業大学は、農業大学として実践的な農業やバイオテクノロジー、その他畜産から水産まで、幅広く農学について学ぶことができるのが特色です。国際食料情報学部、生物産業学部、地域環境科学部など、多くの学部で食料問題に関する研究を行っています。
 その中でも、SDGsの目標2に対する取り組みには、国際食料情報学部国際農業開発学科による、ケニアにおける生活・栄養改善の取り組みが挙げられます。この取り組みでは、学部生・院生が実際にケニアに滞在し、モバイルやタブレット端末を用いた食習慣調査のためのICT(Information and Communication Technology)システムツールの開発、地域農産物の栄養成分分析、機能性評価などの協力を行っています。

【未来を創る大学】食料問題の解決策を探る③東海大学

 東海大学は、THE世界大学ランキング日本版2022総合131-140位、THEインパクトランキング2022総合1001+、目標2では201–300位にランクインしています。
 東海大学農学部は熊本にキャンパスを構え、日常的に熊本の農業や自然に接することができるのが特徴です。「食料生産」「環境」「生命」をキーワードに、食料問題を軸にしたさまざまな研究テーマを追求しています。
 また、健康学部では、学生と教員がフードバンク湘南と連携して食品を配布する取り組みが2022年6月に実施されました。賞味期限が近くなり、企業が廃棄する予定だった飲料やお菓子、レトルト食品など約400人分を配布し、フードロスや貧困といった社会問題について実践学修を行いました。