前年までと同様、4分野の指標でランキング
THEは各大学の強みや個性の明確化と一層の強化を支援する目的で、様々な大学ランキングを作成しています。教育力重視の「THE 日本大学ランキング」は2017年にスタートし、今年が7回目。学生の学びの質や成長性に焦点を当て、大学の教学改革やグローバル化の推進に活用してもらおうと、学生調査も取り入れています。受験生や社会に対して入試難易度以外の大学の価値を示すとともに、日本の大学の多様性を世界に発信するねらいもあります。
これまでと同様、ランキング指標は「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野で構成。それぞれの項目と比重も従来通りです。「教育充実度」のスコアに反映される学生調査も、これまでと同じ設問で実施されました。
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東北大学は「教育リソース」5位、「教育成果」2位
ランキング対象となった大学は、国立66校、公立41校、私立164校。
分野別ランキングも参照しながら、総合ランキングを概観してみましょう。
総合1位の東北大学は、「教育リソース」と「教育成果」の分野で1つずつ順位を上げてそれぞれ5位と2位。「国際性」は国立大学トップの11位、「教育充実度」は5つ順位を落としたものの9位と、バランスの良さで総合トップを不動のものにしています。
総合2位の東京大学は「国際性」こそ20位以内に入っていませんが、「教育リソース」2位、「教育充実度」7位、「教育成果」7位といずれも上位をキープ。
大阪大学は2018年から3年間、8位にとどまっていましたが、2021年5位→2022年3位タイと、この2年で順位を上げ、今回もトップ3のポジションを守りました。前年から順位を1つ上げた「教育成果」(5位)が強みです。
総合10位の国際基督教大学は「教育充実度」の順位が前年から1つ上がって初の1位に。「国際性」は前年と同じ2位で、これらが突出した強みとなって初のトップ10入りを果たしました。
トップ10の4位以降を前年と比べると、分野別では多少の入れ替わりがあるものの、顔ぶれ、総合順位とも大きな変動はありません。東京工業大学が1ランクダウンの4位、九州大学(6位)と北海道大学(7位)の順位が入れ替わり、広島大学は1ランクダウンで11位になりました。
20ランクアップの帯広畜産大学はじめ、地方国立大学が健闘
私立大学で総合ランキングが国際基督教大学に続く慶應義塾大学と早稲田大学は、それぞれ順位を1つずつ落として12位と14位。公立大学トップは前年に続き国際教養大学で15位でした。
トップ100の中で前年より10ランク以上アップしたのは、名古屋市立大学(61位→47位タイ)、帯広畜産大学(75位→55位)、群馬大学(72位→58位)、奈良女子大学(83位タイ→61位タイ)、鹿児島大学(78位タイ→65位)、佐賀大学(80位→66位タイ)、富山大学(87位→71位タイ)、愛知県立大学(100位→81位タイ)、香川大学(98位→88位)、琉球大学(111-120位→98位)の10校で、地方国立大学の健闘が目立ちます。
大阪市立大学(前年50位タイ)と大阪府立大学(前年68位)の統合により2022年4月に開学した大阪公立大学は40位タイでした。「教育充実度」63位タイ(前年は市立大学100位、府立大学141位タイ)、「教育成果」19位(前年は市立大学40位、府立大学27位タイ)で、大きく順位を上げました。
国際教養大学が「教育成果」で45位→16位と躍進
分野別ランキング(上位20位)に着目してみましょう。
「教育充実度」で大きく順位を上げたのは一橋大学(19位→4位)、神田外語大学(9位タイ→5位)、京都大学(29位→18位)、早稲田大学(24位→19位)など。
「教育成果」では国際教養大学(45位→16位)、熊本大学(35位→18位)の躍進が目を引きます。
「国際性」は、立命館アジア太平洋大学が今回もトップを堅持。関西外国語大学(7位→4位)、京都外国語大学(20位→7位)、長崎外国語大学(ランキング対象外→17位)など、外国語大学の躍進が目立ちます。トップ10のうち9 校、トップ20のうち13校が私立大学でした。
THEは「小規模大学はコロナ禍からの回復に苦労」と指摘
THE Chief Global Affairs Officerのフィル・ベイティ氏は「日本大学ランキングは、国内外から日本で教育を受けようとする全ての学生にとって、素晴らしいカスタムメイドのリソースであると同時に、大学の経営者や政策立案者にとって強固なベンチマークと意思決定のツールといえる」と述べました。同氏はさらに、「上位層の安定感は、日本を代表する大学の泰然性と回復力を証明している」と評価しました。
今回、THEが学生数の規模別にデータを分析した結果、「コロナ禍後の回復ペースは規模によって若干異なる」と指摘。「全体的に小規模大学は、コロナ禍前は学生のエンゲージメントが高い傾向にあったが、パンデミックでより大きな影響を受け、教員と学生の交流や協働学習のレベルをコロナ禍前のレベルに回復させるのに苦労しているようだ」と説明しています。