教育成果ランキングがいくつかの大学で上昇

 THE 日本大学ランキングの「教育成果」とは、企業人事や研究者の評判調査結果から、どれだけ卒業生の活躍が期待できるかを表す指標です。
 2023年度の教育成果ランキングにおいて、順位が上がった私立大学が複数ありました。
 以下の表は、教育成果ランキング100位以内かつ、昨年の教育成果分野の順位からの上昇幅が大きい東日本の私立大学です。今回はこの中から、湘南工科大学、玉川大学、多摩美術大学の取り組みを見ていきましょう。

湘南工科大学の取り組み

 湘南工科大学は、THE 日本大学ランキング2023の教育成果分野で66位にランクインしています。昨年に比べて69位アップと、教育成果分野が大幅に伸びています。 
 湘南工科大学の特色の一つして、さまざまなテーマに対して1年次は35人程度、2年次は25人程度の小規模クラスでグループワークを行うワークショップが1~2年次の必修科目であることが挙げられます。学生はこの必修科目を通して、情報収集→課題発見→解決策立案→プレゼンテーションという、社会でも役立つ実践的な流れを習得することができます。
 また、湘南工科大学はキャリア教育が充実しています。就活前後だけでなく、1年次から「キャリアデザインプログラム」という授業としてキャリア教育を実施しています。共通基盤ワークショップや自己診断テスト、講演会などを通して、将来の進路や働き方に対する意識を高めています。3年次前学期には自己分析、業界研究などで社会人基礎力を養い、後学期は履歴書、エントリーシートの書き方、面接の対策など、より実践的な対策を学びます。
 さらに特徴的な取り組みとして、正課の授業科目として「インターンシップ」を受けることができることが挙げられます。実際の企業勤務を体験(研修)し、専門知識を実社会においてどのように活かしていくべきか、今後の自分にとって何が必要かを考える能力を身に付けることを目的とした授業です。研修は、企業において定められたプログラムに従い60時間程度の企業勤務を行います。就労体験を通して、就職に対する意識の醸成や、社会的マナーを身に付けることができます。

玉川大学の取り組み

 玉川大学は、THE 日本大学ランキング2023の教育成果分野で85位にランクインしています。昨年に比べて61位アップしており、教育成果分野が大きく伸びていることが分かります。
 玉川大学の取り組みの一つに、「ESTEAM教育」の推進があります。ESTEAM教育とは、科学や技術などを統合的に学ぶ「STEAM教育」に、ELF(English as a Lingua Franca:共通語としての英語)を加えたもので、学部ごとに独立していた教育・研究を融合し、新しい価値を創出する学びを指します。複雑な諸問題を解決し、社会に貢献できる人材を輩出することを目的としています。
 また、玉川大学は教員養成に力を入れています。3人に1人の学生が教員免許状取得を目指して学んでおり、魅力的な教員、充実した施設・設備、教員採用試験合格までのサポート体制が整っています。
 教員志望に限らず、学生の進路に対しては、正課(授業)、キャリアセンター・教師教育リサーチセンター、学級担任・就職担当教員からなるサポート体制が確立されています。さらに、企業から直接大学に届く求人票を学生が検索できるシステム「たまナビ」を通して、玉川大学の卒業生を求める企業とのマッチングが行われています。

多摩美術大学の取り組み

 多摩美術大学はTHE 日本大学ランキング2023の教育成果分野で57位にランクイン。昨年の順位からは48位アップしています。
 多摩美術大学は、多文化主義の国際的な広まりに対応する幅広い教養を身につけた、現代社会に貢献する優れた芸術家、デザイナー等の育成を目的として教育研究の内容の充実と高度化を図っています。具体的には少人数教育の実施、ゼミナールの強化、人間的接触による指導の徹底などを行っています。
 またPBL(Project Based Learning)科目を2006年から開講しています。PBL科目は所属学科や学年の枠を超えて、横断的研究や社会課題に取り組むプロジェクト型授業です。デザインやアートの領域に捉われない教育で、大学生としての幅広い視野と教養を身に付け、人間形成を図ることができます。学外から依頼されるプロジェクトも多く、生きた現場からも学ぶことが可能です。
 多摩美術大学は、教育研究だけでなく、キャリア支援も充実しています。キャリアセンターでは、企業への就職のみならず、フリーランスのデザイナー、アーティストや教員など、美術大学出身者としてのキャリア形成を総合的に支援し、進路指導をしています。また、低学年次からそれぞれの段階や状況に合わせたキャリアガイダンスや講座などを実施。自身の進路を考えるガイダンスや、社会で活躍しているOBの講演、各種業界講座なども開催されます。
 さらに就職支援だけでなく、起業家の育成事業も行われています。多摩美術大学は2020年から、早稲田大学を主幹に国内外の関係機関と連携して実施する起業家育成プロジェクト、「EDGE-NEXT」に協働機関として参画。プロダクトデザイン、アートに関するノウハウ等の提供を行っており、学生はグループワークやプレゼンなどの実践的な取り組みに参加しています。