4年連続ランクアップを実現した「学生第一」のモットー

秋田大学は、国際資源、教育文化、医、理工の4つの学部と大学院研究科のほか、附属病院や多くのセンターを備える総合大学だ。「学修者中心の大学たること」を基本的な姿勢とし、「学生第一」のスローガンの下、学生の声を傾聴した大学運営を行っている。その成果は日本版ランキングの結果にも表れ、総合順位では4年連続ランクアップした。

2018年から行っている「学長カフェ」は「学生第一」を象徴する取り組みだ。山本文雄学長が学長室に学生を招き、1時間以上かけて対話する。入室直後は緊張の面持ちの学生たちも、時間の経過とともに本音を語り始めるそうだ。ここで出た要望には迅速に対応。「駐輪場を増設してほしい」といった生活環境面の声も親身に受け入れ、改善している。

また、新型コロナウイルスの感染拡大により新しい生活様式への順応が求められる中、秋田大学は対面とオンラインの利点を生かしたハイブリッドの授業を提供するなど、学生の安全と意欲の維持に配慮した学習環境を整備している。

「本学は、次代を担う人材を大切に育てることによって、地域に貢献し、世界に通じる大学となることを目指しています。学生が卒業時に胸をはって社会へ踏み出せるよう、教職員一丸となって学生を支援します」と山本学長は語る。

「地域に貢献し世界を目指す」。このビジョンを実現するための全学的な取り組みの一つが、英語教育の底上げだ。具体的には、英語が公用語のラウンジ「The ALL Rooms」を運営。全学生に開かれているこのスペースには、専門の教員から研修を受け、高い英語力を備えた学生スタッフが常駐し、利用学生に対して留学や学習のサポートを英語で行っている。

そして、1年かけて英語の総合力を高めるプログラム「イングリッシュマラソン」では、The ALL Roomsで日常的に英会話のトレーニングを積みながら、夏休みの短期留学やTOEICなどの特別講座に参加する。2020年度は従来の渡航しての留学に代わり、Web会議システムで海外の大学生とつながる国際交流プログラムを提供した。大学側は、留学費用や講座費用を援助するなど、学生への支援も充実している。

これらの英語プログラムに参加してTO-EICのスコアが著しく伸び、800点を突破する学生も珍しくない。高い国際性と専門性を兼ね備えた学生は、大手企業への就職や教員採用試験合格を果たし、未来への大きな一歩を踏み出している。

【学長カフェ】学生と懇談しながら意見や要望を直に確認している
【学長カフェ】学生と懇談しながら意見や要望を直に確認している

国際社会の発展に寄与する先進的な研究活動

もう一つ、ビジョンの実現に欠かせないのが最先端の研究活動だ。

国際資源学研究科では、AIやIoTなどの情報工学を駆使した資源開発を「スマートマイニング」と名付け、地下資源を豊富に有する南部アフリカ諸国と共同で、スマートマイニングを実践する人材を育成する。また、中央アジア5カ国と連携し、資源情報学の発展に寄与する若手研究者の育成拠点を構築している。

理工学研究科は、グリーン社会の実現を担う再生可能エネルギーの研究で、一目置かれる存在だ。近年では、CO2排出量の少ない電気自動車の開発や航空機の電動化が加速。開発の鍵を握る小型高性能モーターの研究でも世界を牽引する。一方、「VR(仮想現実)」と、動きをデータ化する「モーションキャプチャ」の技術を組み合わせたシミュレータを開発するなど、仮想空間と現実を融合した「XR(クロスリアリティ)」の分野でも、先進的な技術開発を行っている。

医学系研究科の社会貢献度も高い。好酸球が関連し根治が難しいとされるアレルギー疾患に対して、まったく新しい治療戦略を提案し、世界的な医学ジャーナルで高く評価された。コロナ禍で露呈した地方の専門医不足に対しても、高速通信ネットワークを使って大学病院の専門医が中核病院の医療従事者に遠隔で指導するという実証実験を続けている。

教育文化学部では、子どもの自主性や課題解決力を高める「探究型」の授業を追究。この教育手法は、新学習指導要領で重要視される「思考力、判断力、表現力」を育むうえで極めて有効で、全国の教育現場へと着実に広がりを見せている。

英語が堪能な学生が常駐するThe ALL Rooms
英語が堪能な学生が常駐するThe ALL Rooms

10年後を見据えた教育改革で変化に対応できる人材を輩出

日本ではロボットやAIが駆使される超スマート社会に向けて技術革新が進む一方で、環境破壊や貧困問題など地球規模の課題を解決し、持続可能な社会を実現しようという国際的な動きも活発化している。秋田大学は、「大学における喫緊の課題は、不確実で変容スピードが速い現代において、柔軟に対応できる人材を輩出すること」と考え、10年先の未来を見据えた教育改革に取り組んでいる。

特筆されるのが、新時代にますます求められる「AI・数理データサイエンス教育」だ。2020年から全学共通の教養基礎教育の中に、プログラミングやデータ解析、AIなどに関する科目を盛り込み、充実を図っている。また、国連で採択されたSDGsに対しても、17あるゴールに照らしながら、教職員と学生が共に社会的課題を解決する多様な場を設けている。

2019年に創立70年を迎えた秋田大学。学生第一の伝統と、柔軟に挑戦する姿勢を武器に、さらなるステイタスアップを目指して飛躍を続ける。

医学と工学の融合。外科手術訓練用VRシミュレータを操作する様子
医学と工学の融合。外科手術訓練用VRシミュレータを操作する様子
学長、医学博士
山本 文雄
山本 文雄
やまもと・ふみお
1979年鳥取大学医学研究科博士課程修了。鳥取大学医学部附属病院助手、国立循環器病センター厚生技官を経て、1998年秋田大学医学部教授に就任。大学院医学系研究科教授、学長補佐(病院機能拡充担当)、副学長(国際戦略担当)、理事(研究・国際・産学連携・情報担当)を歴任し、2016年より現職。