学部等を超えて展開する国際性の高い教育

1946年に小倉外事専門学校として開校以来、世界で活躍する人材を多く育成してきた北九州市立大学。公立の総合大学として、外国語、経済、文、法、国際環境工学部及び地域創生学群の5学部1学群を擁する。各学部等の専門教育はもちろん、全学的な国際性の高い教育プログラムも充実している。海外14カ国・地域の30大学(2021年4月時点)と留学協定を締結、2019年度の派遣決定者数は141名で、朝日新聞出版の大学ランキング2022年版「海外留学制度ランキング」において、国公立大学2位の結果を得ている。また、留学等の海外体験を原則必修とする外国語学部英米学科では、新型コロナウイルス感染症の影響等で留学ができない学生向けの科目として、オンラインを活用した海外協定校との国際協働授業やグループワーク等を行う「Global Research Project」を提供するなど、手厚い支援を行っている。

各学部等における専門分野の教育課程とは別に、世界を視野に幅広い教養と語学力の修得を目的とした「Kitakyushu Global Education Program」を2019年度に開設。高い英語運用能力と実践力の修得を目指すAdvancedコースでは、英語で学ぶ専門科目を中心とした科目の受講に加え、留学プログラムへの参加などを修了要件とし、真のグローバル人材の育成を行っている。

【外国語学部英米学科】全教員がバイリンガルで留学制度も充実。
【外国語学部英米学科】全教員がバイリンガルで留学制度も充実。

多様な機関と連携しSDGsの実現に向けた取り組み

北九州市立大学では、エネルギー問題や環境問題等に関連した多様な研究を通じて持続可能な社会へ貢献する「環境技術研究所」を中心に、SDGs達成に向けた技術開発や人材育成に取り組んでいる。例えば、洋上風力発電分野の世界的な拠点であるドイツのブレーマーハーフェン大学と2018年に大学間協定を締結し、洋上風力発電、水素エネルギーに関する研究テーマや人材育成の意見交換、共同教育プロジェクト等の連携を進めている。

また、2050年カーボンニュートラル実現に向け、大学と国、自治体、企業等との連携強化を目的とした「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」が2021年7月に設立され、北九州市立大学も参加。地域ゼロカーボンと人材育成のテーマに関して、今後も市の地域モデルを踏まえた仕組みづくりを行っていく姿勢を打ち出した。

2021年4月には、文部科学省「特色ある共同利用・共同研究拠点」制度において、北九州市立大学の先制医療工学研究センター及び計測・分析センターが「超高齢社会に対応する先制医療工学研究拠点」として認定。九州では初の導入となるクライオ型透過電子顕微鏡をはじめ最新の装置を活用し、コロナウイルスのワクチンや副作用が少ない次世代抗がん剤の品質・有効性・安全性を保証するために、バイオナノ粒子の精密解析技術とAI・スパースモデリング技術の融合分野に関して、国内外の研究者と共同研究を推進する。

北九州市立大学のSDGs達成に向けた取り組みは、地域とのつながりの中でも実践されている。地域貢献の一躍を担う「地域共生教育センター(通称:421Lab.)」では、地域を活動フィールドに、学生が教育プロジェクトとして様々な地域課題に取り組んでいる。学生が地域と連携して実施しているプロジェクト活動は多岐にわたり、その中の一つが、「国際交流プロジェクト FIVA」だ。FIVAでは、地域に暮らす留学生や外国人研修生と地域をつなげるための交流活動の企画・運営を行い、多文化共生社会の実現に向けた課題解決に取り組んでいる。

また、北九州市と連携してeラーニング動画「北九州ご当地SDGs」を制作した。これは、学生が市役所のSDGs関連部門や市民による活動を取材し、まとめたもので、市民や若い世代にSDGsの大切さを伝え、地域で個人がどのように行動すべきかを学べる。この活動に参加した学生にとっても、SDGsの本質の学びにつながり、北九州市との連携は次世代を担うSDGs人材育成の場にもなっている。

大学の設立自治体である北九州市は、公害を克服した経験を生かしてSDGs先進都市を目指している。「本学においても、大学の中だけではなく、地域や社会における取り組みをより加速させ、世界の共通課題にSDGs推進を通じて貢献していきたい」と松尾太加志学長は語る。

【クライオ型透過電子顕微鏡】国内外の研究者と共同研究を推進。
【クライオ型透過電子顕微鏡】国内外の研究者と共同研究を推進。

グローバルな視点に立った社会人教育を提供

社会人のキャリアアップや学び直しを支援する教育プログラム「i-Designコミュニティカレッジ」を2019年度に開設した。学生と社会人が一緒に学べる科目を設け、相互に交流できる機会を提供。2020年度には、新領域「多様な世界との対話」を開設。地域のアクティブシニアに対しても、グローバルな視点から、多様性等をテーマに、日本語と英語のバイリンガルなワークショップやゼミ等による教育を実施している。

このような国際性の高い教育をはじめとした様々な取り組みにより、日本版ランキング「国際性」分野では九州・沖縄エリアで公立大学2位というスコアを得た。全国平均を上回る高い就職率(2020年度98.3%)や日本版ランキング「教育成果」分野における九州・沖縄エリア公立大学1位という実績にもつながっている。

【i-Designコミュニティカレッジ】2019年、社会人やシニア向けに創設。
【i-Designコミュニティカレッジ】2019年、社会人やシニア向けに創設。
学長
松尾 太加志
松尾 太加志
まつお・たかし
1980年九州大学文学部哲学科心理学専攻卒業、1988年九州大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学、同大学にて博士(心理学)取得。1993年より北九州大学(現北九州市立大学)文学部助教授、教授を歴任し、2017年学長に就任。専門分野は、認知工学・認知心理学。