文理を問わずに学ぶ DX推進のための知識と技能
我が国では今、Society 5.0を実現するためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進められている。秋田大学でも、2022年4月からの第4期中期目標期間において、教育、研究、社会貢献等でDXを推進することとしており、国際資源、教育文化、医、理工からなる全ての学生が、DXを推進するために必要な「数理・データサイエンス・AI教育」で知識と技能を身に付けている。
新型コロナウイルスは社会に甚大な影響を与え、大学教育においてはこれまでの対面授業が一変し、遠隔授業を行わざるを得ない状況となった。しかし、遠隔授業ではICTを活用するため、これをITスキル向上の好機と捉え、2021年度の新入生からPC必携化を導入し、遠隔授業やオンデマンド教材による予習・復習等に活用し効果的な教育を行っている。さらに、2022年度より全学生がいつでもAI等を学習できるソフトウエア環境を整備し、授業のみならず研究においても活用しており、新時代を生き抜くためのスキルアップを図っている。
Society 5.0を牽引する人材育成
秋田大学では、全学的な「数理・データサイエンス・AI教育」に加え、各学部の専門教育においてICTを活用した人材育成を行っている。
●国際資源学部は、金属資源や石油資源等の資源形成メカニズムの解明から、探査・開発手法、資源経済・鉱業法までの資源学を、各国と連携しながら学ぶことができる我が国唯一の文理融合学部だ。本学部では、英語による専門教育、海外資源フィールドワーク、日常的な留学生との交流等を通して、高い語学力と国際性を身に付けることができる。また、海外での鉱山実習等、現場で体験できないことはVR等のデジタル技術を活用した教育も実施。情報工学を積極的に取り入れたこれからの資源情報学(スマートマイニング)を実践でき、将来の資源分野の中核を担うグローバル人材を育成している。
●教育文化学部の学校教育課程は、全国学力・学習状況調査においてトップレベルの学力を支える探求型授業を継承し、高い教員就職率を維持している。本課程では、GIGAスクール構想に対応できるICT教育・プログラミング教育の知識と実践力を備えた教員養成を行う仕組みを構築している。地域文化学科では、地域と連携した授業やフィールドワークを通じて地域の諸課題を実践的に学ぶことができることに加え、将来必須となるビジネス情報等の知識を身に付け、各種公務員や企業等で活躍する人材を輩出している。
●医学部医学科においては「秋田モデル」とも称する卒前~卒後をシームレスに繋ぐ一貫教育に加え、卒業時の診療能力を評価する実技試験等により、高い医師国家試験合格率を誇っている。その能力は、地域の医療機関で行う実習に加えて、東北最大規模のシミュレーション教育センターにおいて、最新のVR手術環境による手技習得実習等により身に付けている。さらに、地域の中核病院として高度医療を提供する附属病院では、県内の過疎地の病院と連携した遠隔診療の実証試験を進めており、学生教育においても医療情報等の知識を涵養しながら、地域医療を支える人材を輩出している。
●医学部保健学科においては、看護、理学療法、作業療法の高度な知識や専門技術の習得のみならず、eラーニングコンテンツやVR・AR等の教材コンテンツを活用して、高いコミュニケーション能力と倫理観を有する人材を育成している。
●理工学部は、科学技術の進歩とともに深刻化している環境問題等に対応するため、理学から工学にいたるさまざまな分野の教育と最先端の研究を行っている。なかでも、グリーン社会の構築に貢献するため、航空機や自動車等の電動化に欠かすことができない高性能モーターの開発に力を入れており、国内有数の電動化研究施設である「電動化システム共同研究センター」を拠点に研究を進めている。また、「超スマート社会の情報技術人財育成プログラム」として、情報学やAI、IoTのほか医療・介護・福祉、ものづくり等における実例を紹介する等の教育を行っている。
Society 5.0の構築においては、グローバル化に対応する国際性を身に付けることも必要であり、教養基礎教育や各学部における英語教育に加え、「イングリッシュマラソン」、語学自習室「The ALL Rooms」でのトレーニング等により語学力を向上させている。
「人間力」を養う「道徳」教育を実施
コロナ禍では、適切な感染対策を施したうえで「感染を拡大させない」という強い責任感が求められ、また、技術の進展が著しいデジタル機器の活用においても一人ひとりに高いモラルが求められる。秋田大学では、このような社会を生き抜くために必要な「人間力」として、社会を構成し運営するとともに自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力を養う「道徳」教育を行っている。一方、例年多くの留学生を受け入れているが、この春からは緊急人道支援として、ウクライナからの避難学生も受け入れており、さまざまな環境で育った留学生と日本人が親密な交流を持ち、「グローバルな視点での人間力形成」にも役立っている。