建学時から受け継がれる学生主体の学び

学生主体の学び──東京都市大学が有するこの精神は、その前身である武蔵高等工科学校設立時から脈々と受け継がれてきたものだ。1929年、学びたいと心から願う学生たちが、教師や校舎、支援者を求めて奔走、創立した同校は、1949年、武蔵工業大学に昇格。さらに2009年、東横学園女子短期大学との統合を経て、最新テクノロジーから生活に根差す福祉分野まで、学びの領域はさらに拡大した。理工学部、建築都市デザイン学部、情報工学部、環境学部、メディア情報学部、デザイン・データ科学部、都市生活学部、人間科学部の8学部と18学科を有する総合大学へと進化を遂げた今も、キャンパスにはこの精神が満ち満ちている。

こうした学びの文化は、画期的な形で学外にも発信されている。それが、2022年度にスタートした高校生向けの探究ゼミナール「オープンミッション」である。参加費無料とはいえ、学びに対する本気度が試される気の抜けないプログラムだ。参加者は、大学のウェブサイトに提示されたミッション動画を視聴し、関心ある探究テーマに登録、それぞれがまとめたレポートを持参して大学で開催されるグループワークに参加し、大学教員から直接指導を受ける。その後もさらに探究ワークを続け、最終発表に臨むという画期的なプログラムだ。この間、担当教員からのアドバイスが受けられるほか、大学図書館も利用できるなど、高校生にとっては、入学前に自らの探究心を育て、大学への理解を深めることができる貴重な機会となっている。

高校生に多彩な探究学習の機会を提供するオープンミッション。
高校生に多彩な探究学習の機会を提供するオープンミッション。

10年後、15年後を見据えた価値観を育てる

大学では、新時代のリーダーを目指す学生に向け、2021年度から新たな教育プログラムがスタートしている。「私たち人類の抱える課題は、高度化、複雑化、グローバル化しています。この変化の激しい時代の社会で活躍するには、単に知識を修得するだけでなく、発想力や提案力といった力をつけることが欠かせません」。三木千壽学長の言葉通り、新時代のリーダーには優れた専門性と実践力、国際性に加え、変化の激しい時代に対応して価値を創造する力が求められる。こうした人材を育成するために開発されたのが「ひらめき・こと・もの・くらし・ひと」づくりプログラムだ。

プログラムを構成するのは、①アイデアを生み出す力を養う「ひらめきづくり」、②他分野をつなぎ、いわゆる「こと消費」の物語や流行を生み出すシナリオ力を養う「ことづくり」、③文理横断・融合の学びを通じて知識やアイデアを形にする力をつける「ものづくり」、④グローバルで未来志向の判断力や多様な人と共創する力、自らマネジメントする力を身につける「ひとづくり」、⑤データを読み解き活用する力を養う「AI・ビッグデータ・数理・データサイエンス」、そして、⑥社会や生活をデザインする力をつける「くらしづくり」、の各科目群。

学部の垣根や大学教育に対する固定観念を取り払ったこのプログラムでは、問題発見や課題解決に力点を置いた授業がディスカッションを中心に進められていく。従来の大学の授業ではつながりの見えにくかった科目と、生活や環境、エネルギーといった課題との関係をより明確にし、体系的に学んでいく。その結果、幅広い教養と深い専門性を併せ持つ「知識集約型社会」を支える人材を育成し、卒業後の仕事に生かすことができる制度設計だ。 プログラムを受講する学生には、コーディネーターと学修アドバイザーが並走し、各人が思い描く理想のキャリア実現に向け、それぞれに合った履修計画を設計する際のサポートを行っている。2024年度には、23年4月新設のデザイン・データ科学部を除く全学部にこのプログラムが導入される予定である。

学部・学科の授業に「SD PBL」(Sustainable Development Project organized Problem Based Learning=問題解決学習に基づいた持続可能なプロジェクト)を加えたカリキュラム体制も整えられている。これは1年次より学生全員が取り組む同大独自の統合的な学びの科目で、特に3年次に学修する「SD PBL(3)」では、上述の6つの力を統合した学びの科目として、学部横断のチームを組み、学生主体で実社会の問題解決に取り組む。「変化の激しい時代に求められるのは、さまざまな科目で学んだ知識や技術を総動員し、多様な背景を持つ人々と協働して問題を解決する力です」と三木学長。「総合的な学びとしてSD PBLで培った力は、社会で必ず役立つでしょう」と自信を見せる。

さらに、グローバル人材育成プログラムとして、1、2年次向けの留学プログラム「TAP」(東京都市大学オーストラリアプログラム)も用意されている。100日間の語学準備講座履修を経て臨む約4カ月間のオーストラリア留学で、世界で活躍するための語学力と国際的な視野を身につける仕組みだ。

「ひらめき・こと・もの・くらし・ひと」づくりプログラムの様子。
「ひらめき・こと・もの・くらし・ひと」づくりプログラムの様子。

身についた力を可視化してキャリアにつなげる

東京都市大学は「就職に強い大学」としての顔も持つ。97.7%(2022年度卒業生実績)という高い就職内定率の背景にあるのは、社会に出て活躍できる力を養うカリキュラム構成ときめ細かなキャリアサポートだ。「自分自身のことを知り、社会の動きや仕事に関する知識を得て、さらに自らが目指す将来像のために必要な力を磨くことが理想の就職に結びつく」。この考えをもとに、東京都市大学は「(プレ・)ディプロマサプリメント」を具現化する「TCU FORCE」というキャリア形成支援のための独自のプログラムを用意し、これらを通じて各学生の目標達成度やさまざまな力を可視化して客観的に把握することで、キャリアの育成につなげる環境を整えている。的確なアドバイスを提供するカウンセラーも力強い味方だ。

「社会的・技術的な変革が同時多発的に起こっている現代は、いわばゲームチェンジ時代。従来型の価値観は転換を迫られています」と三木学長。この激動の時代に対応できる“新たな価値を生み出す人材”を世に送り出すべく、同大は進化を続けていく。

理工学系の教育研究施設が集まる10号館(2022年8月竣工)。
理工学系の教育研究施設が集まる10号館(2022年8月竣工)。
学長
三木 千壽
三木 千壽
みき・ちとし
工学博士(東京工業大学)1972年東京工業大学大学院博士課程土木工学専攻退学。東京工業大学教授、同工学部長を経て、同大副学長。2012年に東京都市大学総合研究所特任教授就任。2015年より現職。専門は構造工学、鋼構造学、橋梁工学。工学博士。土木学会論文賞、土木学会田中賞、土木学会出版文化賞、溶接学会業績賞、日本鋼構造協会協会賞などを受賞。著書に『橋梁の疲労と破壊 事例から学ぶ』(2011年/朝倉書店)など。