環境先進大学から「環境の文化が根付く大学」へ

 三重大学は大学の社会貢献度を指標とする「THE大学インパクトランキング2019」で総合ランキングの国内14位タイ、「SDG別ランキング」では11項目のうち10項目においてランクインし、SDG12(つくる責任つかう責任)において国内1位に位置づけられました。このような結果となった背景には、本学の地域社会や地球規模の環境問題に対する取り組みの積み重ねが評価されたのではないかと考えています。
 本学は、四日市ぜんそくという大きな公害病を経験した三重県にある唯一の国立大学として、「世界に誇れる環境先進大学」となることを目指してきました。研究面においては、地球温暖化防止や省エネの技術の研究を推進しており、近年は野生動物による農作物被害をドローンで防ぐ研究や、木材の環境配慮性、地域貢献度を定量化して利用促進につなげる研究なども行っています。また、大学として学内外の資源循環3R(Reduce、Reuse、Recycle)活動や低炭素活動にも積極的に取り組んでいるほか、学生が自主的に環境活動を推進する環境ISO学生委員会の活動も活発です。このように教員、職員、学生が連携協力し、環境活動に取り組んでいるのが本学の特徴のひとつと言えるでしょう。
 現在は、それをより成熟させ、「環境の文化が根付く大学」を目指しています。持続可能性はユニバーサルな課題であり、このような課題を解決するには将来、社会の中心となる若者が環境に関心を持つことが不可欠です。在学中に環境への関心を醸成し、環境マインドを持つ人材として社会に送り出すことは大学の重要な任務だと言えるでしょう。そのため、以下のような環境教育の全学展開を図っていきます。
 具体的な取り組みとしては、2020年度から、全学共通の教養基盤科目を「スタートアップPBLセミナー」としてリニューアルします。これはSDGsの169のターゲットから研究テーマを設定し、グループワークで自主的な調査活動・レポートをするアクティブラーニング型の授業で、本学に入学した学生が最初に受講する必修科目として位置づけています。三重大学は「すべての学生の環境マインドを高める大学」として独自性を高めていきたい考えです。

自学の機能改革のためにランキングを活用

 国際的なランキングで評価されたことは喜ばしいと感じていますが、順位を上げるために劇的に何かを変えるつもりはありません。ただ、本学の特徴を広く知っていただくエビデンスとして活用したいとは考えています。例えば、18歳人口の減少が進んでいる今、留学生の獲得に力を入れる必要があります。海外の大学を訪問する際は、「社会課題の解決に貢献する教育・研究はもちろん、スマートキャンパスづくり、地域の環境人材育成にも取り組んでいる」と説明し、エビデンスとしてインパクトランキングの結果も必ず伝えています。海外の学生はランキングに敏感ですし、SDGsは世界共通目標なので海外でも本学の強み、独自性を理解してもらいやすいからです。
 現在起こっている急速な社会変化を前に、大学はこれまでのように“進歩”していくのではなく、“進化”していかなくてはなりません。“進化”とは、言い換えれば「これまで持っていなかった機能を持つこと」。つまり、大学の機能改革が求められます。

三重大学 理事・副学長
梅川 逸人
梅川 逸人
うめかわ はやと
帯広畜産大学畜産学部畜産環境学科卒。1986年三重大学大学院医学研究科博士後期課程機能系薬理学専攻修了。名古屋大学医学部助手、三重大学生物資源学部助手、助教授を経て2007年三重大学大学院生物資源学研究科教授。2015年同研究科長を経て2019年より現職。専門は栄養化学、薬理学、生化学。