教育に真剣な大学を支援するランキング
Times Higher Education(以下、THE)のデータ・解析ディレクター、ダンカン・ロス氏が、まず、2年目を迎えた「THE世界大学ランキング日本版」について、その狙いをあらためて語りました。「世界版にランクインしている大学は日本の大学の一部。もっと多くの大学にスポットを当て、世界の大学の中で日本が果たしている役割を知らせたいと思いました」。日本の大学の優れた点として教育力に注目し、入試の難易度や倍率だけではなく、教育に真摯に取り組んでいる大学を支援するランキングをめざしたと言います。
続いて、ダンカン氏は、2017年版発表以降に日本の大学から集められた意見を踏まえ、2018年版の企画にあたって変更した指標について言及。「国際性」の指標に「日本人学生の留学比率」を加えた理由の一つとして、島国である日本では海外での経験が大きな財産となることを挙げました。スコア算出に際しては、留学期間(1か月未満/1か月以上)によって重みを変えているとのことです。
「教育成果」の「企業人事の評判調査」については、調査企業数が増えたことを紹介。卒業生が企業でどれだけ活躍しているかなど調査項目も増やし、出身大学の教育の質をより正確に反映するものになったため、「研究者の評判調査」と同じ重みにしたということです。
注目のランキング発表を挟んでダンカン氏は、大学生へのアンケート調査についても説明しました。大学生への調査は、2016年から発表しているアメリカ版、今年初めて発表する西ヨーロッパ版では指標に加えられています。日本でも今回初めての調査を実施しましたが、十分な調査数が集まらなかったため、指標入りは見送られました。2019年は指標への追加を検討しているとのことです。
「回答をアメリカや西ヨーロッパと比較することができるようになれば、日本への留学を希望する学生が、『自国の○○大学に似たタイプの大学は日本ではどの大学か』といった探し方ができるようになるのではないか」と、ダンカン氏はその展望を述べました。
大学、高校それぞれの意識の高まり
カンファレンスの冒頭で基調講演に立ったのは、文部科学大臣補佐官の鈴木寛氏。高等教育予算がアメリカの10分の1程度にもかかわらず、世界版のランクイン大学数が3位の日本の大学は、コストパフォーマンスに優れているとアピールしました。大学ランキングをエビデンスとして活用し、「授業料が安い割に教育の質が高い」という特徴を、海外の学生、企業、政府などに積極的に訴えるよう、大学関係者にメッセージを送りました。
THEのコマーシャルディレクターを務めるニック・ピログ氏は、2017年3月の日本版発表時の反響、また同年9月の世界版でランクイン数を20校増やした結果を引き合いに、「日本の大学の、ランキングに対する意識の高まりを感じます」と述べました。世界全体を見ると、海外に出向く学生が年々増え、日本の大学は世界に注目されるチャンスを迎えていると評しています。
2017年の発表後、多くの高校からのリクエストに応えてランキングポスターを制作、全国の高校に配布しています。進路指導室や廊下の掲示板等に、偏差値ランキングポスターと並んで貼られており、多くの高校が入試難易度だけでなく、大学の”中身”を可視化できる情報を求めていることがわかります。