「教育リソース」分野のランキングと大学の研究力の関係
日本版ランキング2018では、大学を多面的にスコア化し、それを基に4つの分野別ランキングを発表しています。
分野別ランキングの1つである「教育リソース」分野のランキングは、「どれだけ充実した教育が行われている可能性があるか」が読み取れます。このランキングの指標項目は5つあり、それぞれ「学生一人あたりの資金」「学生一人あたりの教員比率」「教員一人あたりの論文数」「大学合格者の学力」「教員一人あたりの競争的資金獲得数」です。このように、「教育リソース」分野のランキングは、その大学で行われている研究にも焦点を当てています。したがって、その大学で研究がどれだけ盛んに行われているかを知るためにも参考になります。
そこで、「教育リソース」分野のランキングにランクインしている大学の中から、自然科学分野で特徴的な研究を行う国立大学をピックアップして紹介します。
自然科学分野で特徴的な研究を行う国立大学
日本版ランキング2018の分野別ランキング<教育リソース>にランクインしている国立大学の中から、本記事では、自然科学分野で特徴的な研究を行う大学をピックアップします。
群馬大学:次世代モビリティの研究が盛ん
「教育リソース」分野のランキングで48位にランクインした群馬大学では、自動運転車両などの次世代モビリティの研究が盛んです。群馬大学は、次世代自動車産業振興に資する産学官金連携イノベーションの拠点形成を目指し、2016年12月に、自動運転の研究を主導する「次世代モビリティ社会実装研究センター」を設置。2018年には前橋市の荒牧キャンパスに本部を移し、公的機関では世界最大規模の試験走行路も併設しました。研究棟内にも、3D映像でのシミュレーション室や道路環境のデータを分析する施設を備えています。これらの施設では、限定されたルートでの完全自動運転の実現に向けて研究を行っています。
そのほか、さまざまな企業や団体と連携し、次世代モビリティを用いた社会問題の解決を目指しています。例えば、2018年3月には、株式会社ミツバおよびミツバグループ、桐生市と、「桐生市における地域の移動課題の解決に向けたモビリティネットワーク構築のための社会実装研究」を合意しました。これは、将来的に、住民が自動運転バスや電動パーソナルモビリティの車両で、最寄りバス停、商業施設、病院など生活圏内の移動を行うことを目的としています。さらに、実験段階でも、地域住民に参加、体験してもらえる実証実験を行っています。
また、2018年6月には、株式会社ケイエムオーと共同開発した自動運転バス車両が完成しました。これは、完全自動運転技術を公共交通機関へ導入することを検討するために開発されたものです。将来的には、自動運転バスが地域住民の移動をより便利にし、地域コミュニティを活発化させることが期待されます。
香川大学:防災に関する最先端の研究を行う
香川大学は、「教育リソース」分野のランキングで71位タイにランクインしています。
香川大学では、南海トラフ巨大地震の発生に備え、地域に結び付いた防災に関する研究に力を入れています。四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構の「危機管理先端教育研究センター」では、「レジリエンスサイエンス/エンジニアリング」を活用した最先端の研究を推進しています。
「レジリエンスサイエンス」とは、多様化・グローバル化する社会の中で、「南海トラフ巨大地震」や「首都直下地震」などの大規模広域地震災害に備え、臨機応変な対応で最悪の事態を回避し、早期の復旧・復興を図るための防災・危機管理の考え方です。「レジリエンスサイエンス」と、それを実践する「レジリエンスエンジニアリング」は、新しい危機管理の手法として、地域への貢献が期待されます。また、「地域強靭化研究センター」では、災害時でも企業や地域組織の事業を継続し、利益や知的財産、取引先との信用などを守るための取り組みを、地域に働きかけています。
さらに、香川大学は、徳島大学と共同で「四国防災共同教育センター」を設置し、社会が必要とする実践力を備えた防災・危機管理の専門家の養成に努めています。
2018年度、文部科学省の科学技術賞において、「危機管理教育における災害対応力訓練シミュレータ技術の振興」が科学技術振興部門で受賞、「地震津波観測監視システムの開発」が科学技術賞の開発部門で受賞しました。これらのことからも、香川大学の災害対策における研究が成果を得ていることがわかります。
琉球大学:国内で唯一、亜熱帯生物を研究
「教育リソース」分野のランキングで101位の琉球大学は、地域特性を生かす研究のキーワードとして「島嶼、海洋、亜熱帯、健康長寿」などを挙げています。
琉球大学の研究施設で特徴的なのは「熱帯生物圏研究センター」です。「熱帯生物圏研究センター」は文部科学大臣に認可された共同利用・共同研究拠点であり、国内唯一の亜熱帯気候帯に立地する「熱帯生物圏における先端的環境生命科学共同研究拠点」です。
この施設では、沖縄県の気候の特性を生かし、国内外の研究者に亜熱帯の生物や生態系を対象とする研究の場を提供しています。理学、農学、工学、医学系の教員が、以下のような多様な研究を展開しています。
・熱帯・亜熱帯に特徴的な生物・生態系の特性
・亜熱帯島嶼の高い生物多様性の成立・維持機構の解明
・生物多様性を活かした創薬や食品の開発
・ヒトの感染症等への対策
センターには「サンゴ礁生物科学部門」が所属し、サンゴ礁やマングローブなどの研究をメインに行っています。そのうちの「マングローブ学分野」では、土地改変の著しい海岸部に存在するために急速に破壊され続けているマングローブの、生態の解明や保全に取り組んでいます。2016年には、絶滅危惧種のマングローブである「Bruguiera hainesii」が雑種であることを明らかにするなどの成果を挙げています。好適な環境を最大限に生かし、生物を臨場感あふれる場で観察することに重点を置いた実習や研修が開講されているのも特徴です。
このように、各大学が様々に特徴的な研究を行っています。「教育リソース」分野のランキングから、気になる大学の研究について調べると、新たな魅力を感じることでしょう。