「教育充実度」に加え、慶早は「教育成果」が、上智は「国際性」が高い

 THE世界大学ランキング日本版2018では、慶應義塾大学が10位、早稲田大学が11位と、2017年の順位と比べて、大学の順位が逆転しました。上智大学は18位から15位に順位を上げています。また、私立大学のみのランキングでは、これらの3大学が上位3位を占める結果です。日本版ランキングが重視する「教育力」において、これらの3大学が日本でトップだと言えます。
 分野別スコアを見ると、3大学とも「教育充実度」のスコアが非常に高いと言えます。それに加えて、慶應義塾大学と早稲田大学は「教育成果」のスコア、上智大学は「国際性」のスコアが90以上と非常に高く、それぞれの分野別ランキングで上位10校に入っています。
 そこで、「早慶上智」でくくられることの多い、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学の3大学について、それぞれの大学が高いスコアを得た項目に注目し、上位ランクインの秘訣を見ていきましょう。

英語で学び、専門を深める人材育成の取り組み<慶應義塾大学>

 慶應義塾大学の「教育充実度」のスコアは99.1。「教育充実度」のスコアを基にランク付けした分野別ランキング<教育充実度>で、慶應義塾大学は6位(私立大学では2位)にランクインしました。
 「教育充実度」は「どれだけ教育への期待が実現されているか」を表すスコアで、その指標項目は「グローバル人材育成の重視」と「入学後の能力伸長」に関する、高校教員の評判調査です。そこで、慶應義塾大学が高校教員から評判を得た理由を「グローバル人材育成」の観点から見てみましょう。
 慶應義塾大学では、商学部、経済学部総合政策学部、環境情報学部などの学部に、英語で学べるグローバル人材育成コースが設置されています。例えば、商学部が提供する「Global Passport Program」は、全学部の3・4年生を対象とした選抜型プログラムです。大学院入門レベルの商学を英語で学ぶほか、外国人講師による少人数のワークショップで、問題解決型のプロジェクトに取り組める点が、このプログラムの魅力です。
 また、慶應義塾大学は、「教育充実度」のスコアと並んで、「教育成果」でも、97.2ポイントという高いスコアを獲得しました。分野別ランキング<教育成果>では4位にランクインし、私立大学のみでは1位です。
 「教育成果」のスコアは「どれだけ卒業生が活躍しているか」を表し、その指標項目は「企業人事の評判調査」と「研究者の評判調査」です。
 これらの評判調査から高いスコアを得た背景には、例年、人気企業に多くの卒業生を送り出す就職力の高さのほか、公認会計士の大学別合格者数が43年連続で1位、さらに、司法試験の法科大学院別の合格者数も2年連続1位といった、資格試験の実績もあるでしょう。

5つの能力「WASEDA式アカデミックリテラシー」を高める<早稲田大学>

 早稲田大学の「教育充実度」のスコアは、99.2ポイント。早稲田大学は、分野別ランキング<教育充実度>では5位(私立大学では1位)にランクインしています。
 「教育充実度」の指標項目の1つ、「入学後の能力伸長」に寄与していると考えられる取り組みの1つが、「WASEDA式アカデミックリテラシー」です。早稲田大学では、あらゆる学問や仕事のベースとして、「アカデミック・ライティング」「数学」「統計」「情報」「英語」の5つの能力を挙げ、全学生が習得することを支援しています。全学共通教育を受け持つ「グローバルエデュケーションセンター」が、リテラシー習得のための動画や授業を提供しています。
 「教育充実度」のもう1つの指標項目である「グローバル人材育成」を支えているのは、全国の大学で1位の外国人留学生数でしょう。2017年5月1日の時点で5072人にも上ります。入学者の約3割が外国人留学生である国際教養学部を中心に、授業や課外活動において、日本人学生と外国人留学生のコミュニケーションが行われています。
 さらに、早稲田大学は、「教育成果」で93.8ポイントを獲得。分野別ランキング<教育成果>では10位(私立大学では2位)です。上位ランクインの要因は、41種類もの「社会を学びの場とする実践的なプログラム」があります。その1つである「プロフェッショナルズ・ワークショップ」は、課題抽出・分析・フィールドワーク・グループワークを通じて課題解決学修を行うプログラムです。様々な学部や研究科に所属し学年もそれぞれ違う学生たちがチームを組んで、企業から参加する社会人の指導のもとで課題に取り組みます。プログラムは、学生たちが企業のトップに対して提案を行うことで完結します。このプログラムを通して、学生は表面的な就業体験では習得できない社会人基礎力や問題解決能力を身に付けます。

世界的な視野を獲得する機会が豊富<上智大学>

 上智大学の「教育充実度」のスコアは97.7ポイントで、分野別ランキング<教育充実度>では12位タイ(私立大学では4位タイ)です。指標項目のうち、「グローバル人材育成」の取り組みが非常に充実していることが、高いスコアにつながったと考えられます。
 取り組みの中心を担っているのは、グローバル社会に対応するためのプログラムや授業等を全学に提供する「グローバル教育センター」です。例えば、グローバル教育センターの「グローバル・コンピテンシー・プログラム」は、グローバル人材に必要な幅広い視野を身につけるためのプログラムです。国際機関等で働くことを目指す学生にむけた「国際協力」コース、グローバルなビジネスパーソンを目指す学生むけの「グローバル・ビジネス」コース、ジャーナリズムやメディアコミュニケーションを学べる「グローバル・メディア」コース、様々なグローバルイシューやその解決方法を学ぶ「グローバル・アクション」コースの4コースがあります。学生は、興味に応じて履修するコースを選択できます。
 また、上智大学は「国際性」のスコアも90.9ポイントと高く、分野別ランキング<国際性>では5位(私立大学では3位)にランクインしています。「日本人学生の留学比率」9.1%は、「早慶上智」3大学の中で最も高い数値です。2018年7月1日時点で70か国330校に及ぶ大学と協定が結ばれており、交換留学だけで例年300人以上が派遣されています。
 そのほか、ASEAN(東南アジア諸国連合)7大学のいずれかで、各大学が提供する授業を1学期間英語で学ぶ「Sophia AIMS Program(SAIMS)」、インド、コートジボワール、エストニアなど様々な国でボランティアやグループワークなどを行う「実践型プログラム」、中南米諸国で長期留学や短期研修を行う「LAP(Sophia Nanzan Latin America Program)」など、ユニークな留学制度が取り揃えられています。