時代とともに急成長するロボット産業

 日本では、少子高齢化により労働力が不足しています。厚生労働省によると、2018年度の有効求人倍率は1.61倍で、地域や業界によっては深刻な人手不足です。これに伴い、人の代わりに労働力を補うロボットに、さらに注目が集まっています。
 経済産業省によると、工場などで使われている産業用ロボットは、2013年から2017年の間に、世界での販売台数が2倍になりました。ロボット産業は急成長している分野だといえます。また、総務省によると、世界で使われる産業用ロボットのうち、6割弱が日本製です。
 さらに、近年では、人工知能を搭載した接客や介護用などのロボットの開発も進められています。
 今後も、さまざまな業界でロボットの需要が高まり、ロボット産業は拡大し続けると予想されます。

ロボット工学の教育・研究に力を入れる日本の大学

 ロボット工学についての教育や研究を行う大学を紹介します。

■3コースを統合した学科で幅広く学べる:首都大学東京
 首都大学東京の機械システム工学科は、「知能機械システムコース/学域」「機械工学コース/専攻」「経営システムデザインコース/学域」を統合して、2018年度に生まれ変わった新しい学科です。
 機械システム工学科は、メカトロニクスはもちろん、サービス工学、再生医療など幅広い分野を学べることが特徴です。サービス工学とは、工学によってサービスの質を高めたり、サービスを提供するためのコストを下げたりする考え方のことです。機械システム工学科では、分野横断的な知識と専門的な高い技術を身に付けた人材の育成をめざしています。
 学生は、2年次の後期から「知能機械コース」と「生体機械コース」の2つのコースに分かれて、専門分野を学びます。「知能機械コース」では、「機械制御・知能化システム」や「サービス情報・ロボット工学」など、システムを計画し、動かす仕組みを学びます。「生体機械コース」は健康の維持や医療の支援を実現するために、「医用工学・生体工学」や「人間工学・福祉工学」などを学びます。
 機械システム工学科では、産業界と連携したインターンシップやプロジェクト演習のカリキュラムが充実しています。なお、先述のとおり、機械システム工学科は、2018年に設立された新しい学科です。そのため、2019年現在では、在籍する学生は、1・2年生しかいません。高学年向けのプログラムであるインターンシップやプロジェクト演習は、まだ実施されていませんが、学科の前身の1つである「知能機械システムコース/学域」でのプログラㇺを見てみると、企業から出された課題を解決する「研究プロジェクト演習」や、多様な職種での「体験型インターンシップ」が行われています。
※首都大学東京は、2020年4月、「東京都立大学」に名称を変更します。

■国立大学で初めてのロボティクス学科:宮崎大学
 宮崎大学工学部には、ロボット、計測制御、機械設計、化学、材料物理、情報技術などを学べる環境ロボティクス学科が設置されています。環境ロボティクス学科は、国立大学では初めての「ロボティクス学科」です。
 環境ロボティクス学科では、「科学技術の分野が細分化されている現代でも、実際の『ものづくり(製品開発)』には、異なる科学技術分野で得られた成果をうまくまとめ上げる能力が不可欠」という考えのもと、統合化能力を養います。学科名に含まれる「環境」は「社会環境」「自然環境」「生活環境」を意味し、これらの分野のニーズをくみ取った製品開発などに向け、ロボティクスの教育・研究が行われています。
 例えば、社会環境のニーズに応える研究として、「下水管形状計測ロボットの開発」が挙げられます。これは、国内で課題となっている下水管の老朽化の状況を調査するため、レーザスキャナと画像計測技術の組み込まれた自動走行ロボットを開発しているものです。また、生活環境分野のニーズに応える研究としては、農業分野での屋内で植物を育てる「植物工場」や、漁業分野での陸上養殖システムの開発が行われています。
 学生は、実験・演習を多く取り入れたカリキュラムで、機械・電気・電子・化学・コンピュータと、幅広い分野で横断的な知識を身に付けます。

■コンピュータを活用した講義と教員の手厚いフォローが特徴:東京電機大学
 東京電機大学未来科学部ロボット・メカトロニクス学科は、「機械工学・電気電子工学・情報工学・制御工学の知識とスキルを修得したメカトロニクス・エンジニアの育成」を目的として、2007年に設立されました。
 カリキュラムの特徴として、入学してすぐに、ものづくりの基礎を体験できる「ワークショップ」という科目の設置が挙げられます。「ワークショップ」では、プロジェクト形式でロボットの製作を行います。講義・実習・設計・製作を通して、単なる「ものづくり」にとどまらないメカトロニクス技術の本質を体験的に学ぶことができます。
 また、ロボット・メカトロニクス学科には、「よろず相談室」が設置されていることも特徴です。これは、平日の夕方に所定の教室が相談室となり、4年生が学科の科目をフォローアップするというものです。また、学生生活やパソコンのトラブルなどに関しての相談の場にもなっています。
 教育の特徴としては、毎年、全学年で統一してアチーブメントテスト行うことが挙げられます。アチーブメントテストにより、学生は、自分の基礎力の伸びや、長所・弱点を知ることができます。

 この記事で紹介した首都大学東京、宮崎大学、東京電機大学の3大学は、THE世界大学ランキング日本版2019にランクインしています。総合ランキングだけではなく、どれだけ卒業生が活躍しているかを表す「教育成果」分野のランキングにもランクインしています。