日本の大学のランクイン・ランクアップ状況

 2019年9月12日、イギリスの高等教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は、THE世界大学ランキング2020を発表しました。
 THE世界大学ランキング2020は、世界で最も使われている大学ランキングといわれ、2020のランキングでは、92カ国1300校以上もの大学がランク付けされました。
 そのうち、日本の大学は、110校がランクインしました。日本のランクイン校数は、昨年度に続き、アメリカに次ぐ2位でした。
 日本の大学の中で、前回からランクアップした大学は、東京大学、関西医科大学、横浜市立大学、東京慈恵会医科大学の4校です。一方で、日本の大学は、前回よりスコアを落とした大学が多い結果となりました。「世界のエリート大学」と見なされるTHE世界大学ランキング2020上位200校にランクインした日本の大学は、東京大学と京都大学の2校のみでした。しかし、同じアジア圏内の中国、韓国、香港は、それぞれトップ200に5校以上がランクインしています。
 中国では、「産業界からの収入」分野でスコアを挙げた大学が目立ちました。特に、THE世界大学ランキング2020で24位にランクインした北京大学は、強みである分野に集中して投資することにより、順位を上げたと分析されています。
 このように、他国では大学改革が結果を出しているものの、日本ではまだ結果に結びつく改革が少ないため、相対的に順位が下がったと考えられます。

「国際性」のスコアを伸ばしたランクアップ大学

 THE世界大学ランキング2020でランクアップした日本の大学について、どの分野のスコアが伸びたのか、どのような取り組みをしているのかを見ていきます。
 まずは、東京大学です。「被引用論文」以外のスコアが増加しました。

■東京大学
 東京大学の「国際性」に注目してみましょう。スコアは2.3ポイント増加しています。
THE世界大学ランキングの「国際性」スコアは、「外国籍留学生の割合」「外国籍教員の割合」「国際共同研究」の項目からなります。
 東京大学には、2019年5月1日現在、4,267人の外国人学生と、649人の外国人教員が在籍しています。また、国際共同研究に関わるデータとして、2018年度の海外との研究者交流は、派遣・受け入れを合わせて16,339人に上ります。
 東京大学の国際性に関わる取り組みとして「戦略的パートナーシップ大学プロジェクト」が挙げられます。このプロジェクトは、海外の大学と分野横断的な交流事業を行うために、大学内の各部局・各分野における研究交流を束ね、総合的・互恵的な「戦略的パートナーシップ」を結ぶというものです。具体的には、スウェーデンのストックホルム大学群との「Healthy Ageing」をテーマにした、工学、医学、社会科学等の分野にまたがる交流などがあります。
 このように、教育・研究の両面で国際化を進める取り組みが、スコアアップにつながったのではないでしょうか。

「被引用論文」のスコアを伸ばしたランクアップ大学

 「被引用論文」のスコアが上昇した関西医科大学、横浜市立大学、東京慈恵会医科大学を見ていきます。

■関西医科大学
 関西医科大学は、THE世界大学ランキング2020において、2019の801-1000位から501-500位へとランクアップしました。スコアを見ると、「被引用論文」のスコアが、39.7ポイントも増加しました。
 関西医科大学では、臨床研究支援センターで研究支援を行っています。2018年8月からは、それまでの非常勤講師による相談会に加えて、関西医科大学の研究教授による相談会を開始しました。研究に関する基礎的な内容や、プロトコル作成支援、症例数の設定、予算獲得などの幅広い相談内容に個別対応しています。

■横浜市立大学
 横浜市立大学は、THE世界大学ランキング2020において、2019のランキングから「被引用論文」のスコアが、23.1ポイント増加しました。
 横浜市立大学は、先端医科学研究センターにトランスレーショナルリサーチ推進室を設置し、研究支援を行っています。「トランスレーショナルリサーチ」とは、基礎研究の成果を臨床現場へ応用するために行われる研究のことを指し、「橋渡し研究」とも呼ばれています。例えば、バイオバンク室では、動物実験や組織培養を人への医療に生かすための研究支援として、検体の保管・提供を行っています。

■東京慈恵会医科大学
 東京慈恵会医科大学は、THE世界大学ランキング2020において、2019のランキングから、「被引用論文」のスコアが9.6ポイント増加しました。
 東京慈恵会医科大学では、「先端医学推進拠点群」として、特色ある研究が行われています。例えば、蚊、マダニ、ハエなどの節足動物によって媒介される感染症の研究を行う「衛生動物学研究センター」や、身体からの危険信号という役割を果たさない慢性的な「痛み」の緩和方法を研究する「痛み脳科学センター」が設置されています。

 このような大学の取り組みが、研究活動を推進する助けとなり、ランクアップにつながったのではないでしょうか。