小規模大学のランクイン状況
THE世界大学ランキング日本版2019には、大きな大学だけでなく、小規模大学もランクインしています。
ここでは入学定員が1,000人以下の大学を小規模大学とし、THE世界大学ランキング日本版2019の総合ランキングにランクインしている大学を紹介します。
小規模の国公立大学によるグローバル教育の取り組み
この記事では、小規模な国公立大学ならではの、教員による手厚い語学学習支援や、地域に結び付いた取り組みなど、グローバル教育に関する先進的な取り組みを紹介します。
■小樽商科大学
(2019年度の入学定員:515名)
小樽商科大学では、グローバルな視点から地域経済の発展に貢献できる「グローカル人材」の育成を推進しています。
2019年度には、ギャップイヤー制度を開始しました。小樽商科大学のギャップイヤー制度は、入学前に外国の大学で一定期間学習する機会を与える制度です。2019年度のギャップイヤー制度利用者は、ハワイ大学カピオラニコミュニティカレッジに留学し、8月から12月までの間、語学やマーケティングなどについて学びます。大学は、対象者の学費・生活費等の一部の補助や、留学前の語学学習サポートなどの支援を行います。金銭面・語学面からのサポートが充実し、活用しやすい制度となっています。
また、2021年度に「小樽商科大学グローカルコース」を設置することが決定されました。これは、2015年度に導入した「グローカル・マネジメント副専攻プログラム」を発展させた主専攻プログラムです。「グローカル・マネジメント副専攻プログラム」は「専門知識を英語で学ぶこと」「異文化理解と言語能力の育成」「地域に根差した職業能力の育成」を3本柱としています。
現在は、副専攻プログラムとしての実施のみですが、小樽商科大学が独自に開発した、タブレット端末とオンライン学修サイトを利用した学修教材の使用や、小樽などの民間企業や公的団体と協力したPBL(Project Based Learning)など、グローカル人材育成に向けた様々な取り組みが行われています。
■新潟県立大学
(2019年度の入学定員:260名)
新潟県立大学では、英語教育に関して、手厚いサポートが行われています。
英語教育プログラムACE(Academic Communicative English)は、3つの科目群から成ります。文法や英会話など特定のスキルの伸長を図る「スキル・クラス」、学術的な英語のボキャブラリーやライティングなどを通して総合的にスキルの伸長を図る「総合クラス」、英語を使ってクリティカルシンキングなどを学ぶ「内容クラス」で、目標やニーズに応じて学生が科目を選択できます。「内容クラス」では、内容言語統合型学習(Content and Language Integrated Learning:CLIL)として、教材の理解と英語学習を両立させる授業が行われています。
また、セルフアクセスセンター・CALL教室など、自律学習や協同学習のサポートが充実しています。セルフアクセスセンターでは、レベル別のリーディング・リスニング教材の利用、学習や留学の相談をすることができます。CALL教室では、コンピュータを使ったe-learning教材、学習ポートフォリオが使用できます。
新潟県立大学では、学内ESL体験の機会を充実させています。ESLとは、第2言語としての英語で、母語が英語ではない人にとっての英語を示しています。語学クラス以外の授業や課外活動・特別講義などで、学生が日常的に英語を使う機会を設けています。
このような新潟県立大学の充実した英語教育の効果は大きく、中には、入学時から卒業時までで、TOEICの点数が400点以上伸びる学生もいます。
■福島大学
(2019年度の入学定員:945)
福島大学では、学生一人ひとりに向き合うアットホームなグローバル教育、語学学習サポートが特徴的です。
英語力向上を目指す海外留学希望者などの学生に対して、職員による語学学習相談および指導が行われています。この語学学習相談や指導は、語学学習に取り組む学生同士が交流する機会という面もあります。参加した学生の感想からは、学生同士で切磋琢磨する環境もいい刺激となっていることがわかります。
日本人学生と留学生の交流の機会も豊富です。留学生の講義の予習や履修登録、生活面でのサポートなどを行う「チューター制度」や「バディ制度」、国際交流活動推進事業など、学生がキャンパス内で国際交流にチャレンジする機会を生む制度が充実しています。
また、学類単位でのグローバル教育プログラムもあります。例えば、経済経営学類のグローバル人材育成事業では、経済、経営、会計などの専門科目を英語で学ぶ授業や英語副専攻、国際機関の職員や海外経験豊富なビジネスパーソンなどを講師とした「グローバルキャリア講座」などが行われています。
さらに、福島県、特に福島市近辺の小中学校や高等学校へ、授業講師として留学生を派遣する活動も行われています。福島大学の地元の子どもたちにとって、貴重な国際交流の経験になっているといえます。
このように、小規模大学の中にも、少人数であることを生かした独自の取り組みが功を奏し、上位にランクインしている大学があります。そのほかの大学のランクイン状況は、記事下の関連リンクよりご覧ください。