THE大学インパクトランキング2020で日本の大学が躍進

 イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)」は、2020年4月、THE大学インパクトランキング2020を発表しました。これは、大学の社会貢献の取り組みを国連のSDGs(エスディジーズ、持続可能な開発目標)の枠組みを使って可視化するランキングです。
 THE大学インパクトランキングでは、総合ランキングのほか、SDG別のランキングも発表されています。このランキングの「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」に、日本の大学が多くランクインしました。「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」のランキングは、技術革新やインフラストラクチャーの整備などに関する研究や取り組みをスコア化し、ランク付けしたランキングです。
 THE大学インパクトランキング2020の「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」のランキングでは東京大学が1位タイとなり、日本のイノベーション力を示す結果となりました。

 「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」にランクインした大学のうち、THE世界大学ランキング日本版2020ではトップ100に入っていない理工系私立大学に焦点を当て、取り組みを紹介します。

「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」にランクインした私立大学①千葉工業大学

 千葉工業大学は、「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」で301-400位にランクインしました。

 千葉工業大学の「未来ロボット技術研究センター・fuRo」は、独立行政法人 科学技術振興機構のロボット開発グループ(morph)チームが丸ごと千葉工業大学へ移籍した研究所です。質の高いロボット研究が行われています。fuRoで開発されたロボットには、社会や産業の問題の解決策となりうるものが多くあります。例えば、建設における鉄筋結束作業を自動で行うT-iROBO Rebarは、建設現場の労働者不足を補うため、実際の現場のニーズをもとに製作されました。
 また、惑星探査研究センター(PERC)では、宇宙科学・惑星科学にまつわる基盤技術研究を行っています。PERC は、JAXAやNASAなど国内外の機関の惑星探査研究に貢献。特に、主要な研究成果である小惑星探査機の「はやぶさ2」は、2014年に打ち上げられ、小惑星「リュウグウ」での採取活動を行い、2020年末に地球に帰還する予定とされています。
 さらに、人工知能・ソフトウェア技術研究センター(STAIR Lab)では、AIなどの研究が行われています。人間の日常的な動作について、誰が何をしているのか細かく認識するAIや、カメラをかざすだけで花の種類を識別するアプリなどが開発されています。

「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」にランクインした私立大学②東京都市大学

 東京都市大学は、「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」で301-400位にランクインしました。

 東京都市大学では、2研究機構・9研究センターを核に構成される総合研究所において、さまざまな分野の研究が行われています。特に、現代社会の課題を解決するような研究が盛んです。
 高効率水素エンジン・エンジントライボロジー研究センターでは、資源不足や温室効果ガスの対策となる、効率的なクリーンエンジンについて研究しています。特に、エンジンの摩擦損失を低減することで効率的にエネルギーを利用できるようにする技術や、水素エンジンの開発に力を入れています。
 また、都市基盤施設の再生工学研究センターでは、都市インフラ構造物の劣化・老朽化に対応するためのセンサー技術や点検診断支援システムを構築。社会問題となっている土木構造物の老朽化による損失や事故を防ぐため、点検のためのセンサー技術や、補修技術を研究しています。
 先端食品プロセス研究ユニットでは、高齢者向け栄養機能性食品の開発と消化シミュレーションの研究を行っています。高齢者が水に溶けにくい栄養成分を吸収しやすくするための食品技術など、食品の機能化・高品質化を実現する技術開発を目指しています。

「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」にランクインした私立大学③東京農業大学

 東京農業大学は、「SDG9産業と技術革新の基盤をつくろう」で301-400位にランクインしました。

 東京農業大学の生物資源ゲノム解析センターは、強酸性の環境でも生存できる藻類のゲノムを解析し、過酷な環境に耐えうるための適応機構を明らかにしました。藻類は生長が早いため、機能性食品や次世代バイオ燃料としての利用が期待されます。この研究のゲノムの解析が、さらなる研究や技術革新に役立つと考えられています。
 生物機能・制御化学分野 応用微生物学研究室では、食品由来微生物や腸内共生微生物を使った、薬などのデリバリーベクターの開発を行っています。口にしても安全な乳酸菌や納豆菌などで治療薬やワクチンを運ぶ技術により、病気の治療や予防、アレルギーの治療などに役立つことが期待されます。
 さらに、産官学共同研究事業の発展を目的に、農生命科学研究所の傘下に設立された「総合研究所研究会」では、生命・食料・環境・健康・バイオマスエネルギーなどに関連した分野の研究や、生物資源ゲノム解析などの先端研究が行われています。