1位は5年連続でオックスフォード大学

 イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」は日本時間9月2日20時、17回目となる2021年の「THE世界大学ランキング」を発表。過去最多の93か国1527校がランク付けされました。トップは前年と同じオックスフォード大学です。
 日本からは東京大学と京都大学が引き続きトップ100入りし、東京大学は前年と同じ36位タイ、京都大学は11ランク上げて54位タイでした。私立大学では産業医科大学、藤田医科大学、帝京大学が500位以内にランクインしました。日本のランクイン数は、前年より6校多い116校で世界2位です。
 今回も中国はじめアジア勢の台頭が目立ち、THE幹部は「新型コロナウィルス問題によってアジアの優秀な人材の欧米への流出にブレーキがかかると、アジアの大学がさらに優位に立つかもしれない」と指摘します。

中国の清華大学が20位タイ、アジアから初のトップ20入り

 「THE世界大学ランキング2021」におけるオックスフォード大学のトップは5年連続です。2位のスタンフォード大学は2つ、3位のハーバード大学は4つ、それぞれ順位を上げました。
 トップ10のうち9校は前年と同じ顔ぶれです。カリフォルニア大学バークレー校が前年13位から7位に上がってトップ10入りする一方、前年10位のインペリアル・カレッジ・ロンドンは11位に下がりました。トップ10のうちイギリスの大学は2校に減ってアメリカは初めて8校になりました。ケンブリッジ大学が3ランクダウンで6位になったことも含め、トップグループにおけるイギリスのポジション低下を印象づける結果になりました。
 中国の清華大学は、前年の23位から20位タイにランクアップしました。現在のランキング指標が導入された2011年以降、アジアの大学として初のトップ20入りを果たしました。

京都大学の11ランクアップは「目覚ましい快挙」とTHE

 日本のランクイン数116校は、アメリカの181校に次いで2位です。設置者別に見ると国立57校、公立12校、私立47校となっています。
 36位タイをキープした東京大学は、現在のランキング指標が導入されて以来、毎年トップ50に入っています。毎回ランクアップし、今年は11ランクアップで54位タイとなった京都大学について、THEは「目覚ましい快挙」と称賛。国内大学3位の東北大学は前年の251~300位から201~250位に上がり、2015年以来のトップ200返り咲きをうかがいます。
 東京工業大学は前年の251~300位から301~350位に、名古屋大学と大阪大学はいずれも前年の301~350位から351~400位とそれぞれ1バンド落ちました。私立大学最上位は前年と同じ産業医科大学で、順位は変わらず 351~400位です。私立でこれに続くのは、いずれも前年の401~500位から501~600位になった藤田医科大学と帝京大学です。
 日本はランクイン数では2位ですが、トップ200の大学は2校のみで、アメリカ(59校)、イギリス(29校)、ドイツ(21校)に大きく水をあけられています。世界トップ大学の層を厚くしていくことが課題といえるでしょう。

アジアの台頭の一方、米英はトップ層が順位を下げる

 今回のランキングでは、アジア勢の台頭を受けて米英の地位が低下するという状況が浮かび上がりました。アジアからはランキングが始まって以来、最多となる16校がトップ100入りし、うち13校は前年から順位を上げるか維持しています。
 中でも中国は清華大学がアジアから初のトップ20入りしたのに加え、トップ100の大学が前年から3校増えて6校、トップ200の大学は2016年から5校増えて7校と勢いづいています。インドの躍進もめざましく、初ランクインの全141校中、最多の14校を占め、ランクイン数は過去最多の63校となりました。
 これに対し、イギリスではオックスフォード大学が圧倒的強さを誇る一方で、前年トップ20に入った大学のうち順位が上昇したのは5校のみです。アメリカはランクイン数やトップクラスのランクイン数では揺るぎない位置を占めているものの、前年トップ20に入っていた大学の半数が順位を下げ、2016年からの5年間でトップ200が4校減るなど、じりじりとアジア勢の攻勢を受けています。トップ200に入るヨーロッパの大学も毎年減少し、この5年間で9校減りました。
 THEチーフ・ナレッジ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は、コロナ禍による高等教育への影響について「特に欧米諸国の大学にとって最悪の状況がしばらく続き、アジアの台頭はさらに加速するだろう」と予測。「学生と教員の国際的流動性が下がることによって欧米の有力大学の資金調達が難しくなれば、アジアの大学はさらに勢いづく。アジアの優秀な人材がアメリカやイギリスの有力大学に流出せず域内に留まるようになると、グローバルな知識経済(knowledge economy)の勢力図がアジア優位へと変わっていくかもしれない」と指摘します。

5分野13指標でスコアを算出

 「THE世界大学ランキング2021」は基本的に前回と同じ指標を用い、教育、研究、被引用論文、国際性、産業界からの収入の5つの分野について、13の指標で各大学のスコアを算出しています。今年のランキングでは8600万件の論文引用、1360万本の論文を分析し、世界2万2000人の研究者による評判調査も反映しています。

 各分野・指標の比重は以下のとおり。

◇教育(教育環境) 30%
・評判調査<教育> 15%
・学生に対する教員比率 4.5%
・学士課程学生に対する博士課程学生比率 2.25%
・教員に対する博士号取得者比率 6%
・大学の総収入 2.25%

◇研究(量、収入、評判) 30%
・評判調査<研究> 18%
・研究関連収入 6%
・学術生産性 6%

◇被引用論文(研究影響力) 30%

◇国際性(教員、学生、研究) 7.5%
・外国籍留学生の割合 2.5%
・外国籍教員の割合 2.5%
・国際共同研究 2.5%

◇産業界からの収入(知の移転)2.5%