コロナ禍の規制緩和を受け、留学の実施が再開

 日本学生支援機構が実施している「日本人学生留学状況調査」によると、大学等が把握している日本人学生の海外留学状況は、2021年度で10,999人(対前年度比9,512人(739.7%)増)でした。2022年から各国の入国の要件も緩和され、日本でも2023年5月には新型コロナウイルス感染症に係る水際対策措置が終了したこともあり、今後日本人留学生はさらに増加していくと予想されます。
 また、コロナ禍を通して現地留学だけでなく、オンライン留学・ハイブリッド型留学などさまざまなタイプの留学方法が生まれました。こういったコロナ禍での留学の施策を踏まえて独自の取り組みを行っている大学もあります。今回はその中から、千葉大学、工学院大学、関西外国語大学の3つの大学の取り組みについて紹介します。

千葉大学の取り組み

 まず、千葉大学の取り組みについて解説します。
 千葉大学は、THE 日本大学ランキング2023総合19位にランクインしています。また、THE 日本大学ランキング2023 「国際性」分野では68位にランクインしています。2021年は83位、2022年で72位だったことから、着実に国際性分野の順位を伸ばして来ていることがわかります。
 千葉大学は、2020年度入学者から海外留学を必修化していますが、新型コロナウイルス感染症の流行により2021年度の「全員留学」は見直しになりました。その代替措置として、「オンライン留学プログラム」を実施しています。2022年8月からは、「全員留学」のプロジェクトが再開し、カナダのレジャイナ大学とイギリスのヨーク大学への留学を皮切りに、さまざまな地域への留学を開始しています。留学中は、「スマート・ラーニング」というeラーニングを活用した教育システムを使って、海外にいながら国内の授業を受けたり、日本にいる教員の指導を受けたりすることができます。2023年度には、100科目以上のスマート・ラーニングの科目が開設されました。コロナ禍中に発展した「いつでもどこでも学べる仕組み」が、留学にも応用されているといえます。
 また、千葉大学は日本社会のグローバル化をけん引する「スーパーグローバル大学」に選ばれています。個々の語学レベルに応じたプログラムを用意しており、英語に自信がなくても、自分の能力に応じたプログラムに参加することが可能です。

工学院大学の取り組み

 工学院大学は、THE 日本大学ランキング2023 総合141-150位、「国際性」分野では140位にランクインしています。
 工学院大学は、独自で開発した留学プログラムである「ハイブリッド留学」を実施しています。コロナ禍による2年間の延期期間を経て、2022年度より本格的にハイブリッド留学が再開しました。
 ハイブリット留学では、海外留学を行いつつ、専門科目は渡航する教員が日本語で実施します。海外経験が積める一方、海外で日本人教員による授業を受けられることから、専門科目習得のための高度な英語力は求められないため、留学へのハードルが下がるのが特徴といえます。コロナ禍で海外交流ができず、英語力に不安がある学生でも挑戦しやすい仕組みです。
 また、ハイブリッド留学の次のステップである「ディプロマット留学」も2022年より再開しました。大学院生が専門知識を深めるためのプログラムであり、二つの留学制度の組み合わせによって将来的な米国大学院留学などへのステップアップをサポートしています。

関西外国語大学の取り組み

 関西外国語大学は、THE 日本大学ランキング2023 総合56位タイ、「国際性」分野では4位にランクインしています。
 関西外国語大学は2022年夏から、留学派遣約1,000人(長期留学者は約470人)、外国人留学生受け入れは560人に達しています。
 関西外国語大学は、留学派遣が中止となったコロナ禍においても、独自の国際交流プロジェクト「Global Talent Development」を通して、海外大学の教授による講座の開催や、海外の大学生との交流会など、さまざまなオンラインを用いた国際交流イベントを実施。このプロジェクトを通して多くの学生が海外の大学の学生との交流や協働企画に参加し、現在もオフラインも交えて多種多様な交流が実施されています。
 また、留学奨学金が支給されるプログラムでは、選考試験や資格審査が実施され、所定の基準を満たせば奨学金(給付型)を受けながら留学することができます。