人々とのかかわりが育む「対人力」と「行動力」

秋田大学は、国際資源学部、教育文化学部、医学部、そして理工学部の4学部と大学院4 研究科を有する国立大学。日本版ランキングでは、分野別の教育成果で24 位にランクされた。

折しも2017年に日本経済新聞社と日経HRが実施した大学イメージ調査では、「採用を増やしたい大学」の第1 位にも選ばれている。とりわけ、学生の「対人力」と「行動力」に対する企業の評価が高い。

背景には、地域社会との接点を大切にした教育の実践がある。地場の産業や経済とリンクしたり、地元の人たちと一緒に行ったりするPBL の機会が、秋田大学には潤沢にある。

2016 年にオープンした地方創生センターでは、地域協働・防災と地域産業研究の分野で、多彩なプロジェクトが進む。教育文化学部の学生は、地方新聞や不動産業者とともに、新聞離れや空き家の問題に取り組む。

理工学部の学生も、ものづくり創造工学センターを通じて、ハイレベルな工学プロジェクトの傍ら、秋田が誇る米から餅を作って製品化を目指す。学部横断的に有志
学生が参加し取り組んだ無農薬米の栽培や、秋田大学オリジナルブランドいぶりがっこの製品化などは、文字どおり、地元の生産者や農家とのコラボレーションの賜物だ。

地域の人たちとの協働の中で、学生たちは対人力や行動力を自然と身につけていく。「地元での経験をもとに、卒業後も秋田に残って活躍する若者が増えるとすればうれしい」と、山本文雄学長も期待を寄せている。

アジアからアフリカまで、世界が舞台の海外資源フィールドワーク
アジアからアフリカまで、世界が舞台の海外資源フィールドワーク

「国際資源学部」を筆頭に英語教育の底上げも着実

国際性の指標分野にも、今後の伸長を予感させる要素が多い。その1 つが2014 年に誕生した国際資源学部だ。

秋田鉱山専門学校を起源とする秋田大学は、資源に関する教育研究に100年以上の歴史をもつ。しかも、資源の調査から安全にプラントを閉じるところまで、あらゆることを教えられる大学としては国内唯一といってもよい。

その積み重ねた知見を礎に、国際資源学部は開設された。資源輸入の安定化、資源国への技術教育支援、国際的な人材育成など、テーマや使命はグローバルかつ多岐にわたる。この分野で世界的なハブ大学を目指す布石として、世界各地にオフィスをつくり、現地大学とのネットワーク構築や留学生の受け入れを進めてきた。

また、国際資源学部の学生も3 年生の夏休み以降、全員が約4 週間の海外資源フィールドワークを通して、世界の現場を体験する。国際資源学部では英語は必須だ。2年次以降の専門科目の授業はすべて英語で行われ、教養課程では、学部独自の集中英語教育プログラム( I-EAP)で基礎力を養う。

一方、全学的な英語教育の底上げも順調だ。外国人教員や留学生と自由に話せるALL Roomsの設置、TOEIC 対策、短期海外語学研修と、恒常的に英語を学び続ける仕組みを「イングリッシュ・マラソン」と位置づけて運用。2017年のスタートだが、学生によってはTOEICスコアが300点前後アップするなど、すでに目に見える成果を上げている。

昼休みなどを利用し、気軽に英会話の練習ができるALL Rooms
昼休みなどを利用し、気軽に英会話の練習ができるALL Rooms

少子化時代の大学、地方の大学に求められるもの

少子化が進む中、出願者数の維持に向け、まずは秋田大学を知ってもらおうと山本学長が動き始めた。自ら県内の高校を精力的に回ると、先端を行く国際資源学部ですら、何をやっている学部か外部にはほとんど理解されていないことがわかったという。

すぐに各学部の紹介DVDを制作し、各高校に配布。各教員の研究内容を高校生に理解できる形で冊子にまとめ、高校との懇談会には、4 学部の代表者が臨んだ。こうした努力の結果、高校側の理解はだいぶ進んだという。

地方の大学は、あらゆる領域で地元のオピニオンリーダー的存在であるべきだと、山本学長は考える。「教育面をより充実させ、研究面でも各分野の最先端を目指したい。だから、私はランキングにも敏感。順位を基に実情を丁寧に分析すれば、問題点が炙り出され、改善の道が見えてくるからです」。

若者はIoT やAIとともに、未知のSociety 5.0(政府が科学技術政策で提唱する未来社会)を生きていく。入学時の偏差値はまちまちでも、4 年後には全員が自信と誇りをもって社会に羽ばたいてもらいたいと、山本学長は願う。そのためにも、各学問領域の基礎をしっかり教え、何があっても負けない応用力を育てることが、これからの大学に期待されるのである。

地域振興の一環として多彩なプロジェクトに学生たちが参加
地域振興の一環として多彩なプロジェクトに学生たちが参加
学長
山本 文雄
山本 文雄
やまもと ふみお
1979年鳥取大学医学研究科 博士課程修了。鳥取大学医学部附属病院助手、国立循環器病センター厚生技官を経て、1998年秋田大学医学部教授に就任。大学院医学系研究科教授、学長補佐(病院機能拡充担当)、副学長(国際戦略担当)、理事(研究・国際・産学連携・情報担当)を歴任し、2016年より現職。医学博士。