常に誠実さと真心をもって患者さんと向き合う

昭和大学の前身である昭和医学専門学校は、創立者・上條秀介博士ほか、平均年齢35歳という若き先駆者たちにより、1928(昭和3)年に開学した。学問・研究に偏りがちだった、それまでの医学教育に対して、治療や検査などの実践に強い医師、患者に寄り添い、医療で社会に貢献する医師の養成を、上條博士たちは目指したのである。

建学からおよそ1世紀、教育力を可視化する日本版ランキングにおいて、昭和大学は「教育リソース」分野で国内40位、私立大学としては13位と上位にランクした。加えて、研究力を可視化する世界版ランキングでも、「教育環境」で世界上位250位にランクイン、その健闘が光る。

この優れた教育力・研究力の源泉をたどると、建学の精神であり学是でもある、「至誠一貫」の4 文字に行き着く。昭和大学における「至誠一貫」とは、人の痛みを理解し、常に誠実に、真心をもって患者と向き合う、医療人のあるべき姿勢を示している。

「医は仁術」にも通じるその精神は、医療を志すすべての学生が胸に刻むべき、基本的な心得とされ、単なる標語で終わることはない。よき医療従事者には、高度な専門知識と技術に加えて、他者を深く思いやる心や、丁寧に粘り強く意思の疎通を図る力が欠かせないからだ。

「患うという字は、心の上に串と書きます。病に苦しんでいる人は、心も同じように辛いのです。だから医療を施すことによって、患者さんの心に刺さった串も、抜いてあげる。それがみなさんの、仕事の一つだということを、私は学生たちに話しています」と、久光正学長は「至誠一貫」の大切さを語る。

【初年次全寮制】自然に恵まれた富士吉田キャンパスでの寮生活。
【初年次全寮制】自然に恵まれた富士吉田キャンパスでの寮生活。

体系的な学部連携教育でチーム医療に備える

昭和大学のカリキュラムには、人間力を深めて「至誠一貫」に近づくトレーニングの機会が、さまざまな形で設けられている。その一つが、入学と同時に始まる「1年次全寮制」。新入生は全員が、富士吉田キャンパスで、1年間の寮生活を送る。異なる学部学科の学生4人が同じ部屋で共同生活をし、一緒に勉強したり、グループワークに臨んだり、余暇を楽しんだりする中で、人間形成に欠かせない社会性やコミュニケーション力が自然と鍛えられていく。

「1年次全寮制」は、それ自体が50年以上も続く昭和大学独特の教育手法だ。医、歯、薬、保健医療という4つの学部の学生を、各寮室に混合で配置することにも、明確な教育的な意味がある。他学部に対する関心や、学部を超えた連帯感を早い段階で身につけさせるためだ。これは、そのままチーム医療に向けた基礎訓練であり、複数の医系学部を持つ昭和大学ならではの「学部連携教育」の第1段階でもある。

「学部連携教育」の代表例としては、全学年で実施される「PBLチュートリアル」がある。4学部混合の小グループに分かれ、与えられた医療関連の課題について、互いの専門知識やスキルを共有しながら力を合わせて解決のアプローチを探っていくという、問題解決型学習だ。上級生の課題では、実際の患者の症状や検査データを基に治療計画を立てるなど、「チーム医療」の実践を強く意識した内容が出されている。

もう一つ特筆されるのは、実習の充実ぶりだ。合計約3200床を擁する8つの附属総合病院を舞台に、約3700人の全学部生が、病院実習を経験する。臨床教員を務めるのは、その病院に勤務する医師や、各分野の専門家。第一線の医療人の指導の下、学部での学びと連携した実習が展開される。高学年次では全学部について、クリニカル・クラークシップ(診療参加型実習)も実施。医療チームの一員として実務を経験し、高い専門性を培うことができる。

【学部連携教育】PBLチュートリアル等、4学部混合で実施される。
【学部連携教育】PBLチュートリアル等、4学部混合で実施される。

確かな研究実績で国民の健康に寄与

産学連携で質の高い医薬品開発に取り組む昭和大学では、昭和大学病院臨床試験支援センターを中心に、「昭和大学8病院臨床試験(治験)ネットワーク」を形成。各附属病院内には「臨床試験支援室」も設置され、8病院で年間100件近い治験が稼働している。

教育・研究の充実は、確かな研究実績としても結実している。2019年2月には、昭和大学横浜市北部病院消化器センター長・工藤進英特任教授らが開発した、「AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウ ェア」が脚光を浴びた。内視鏡を覗くだけで診断までできる画期的な技術で、大腸がんの早期発見・早期治療に役立つと、熱い期待が集まっている。そして2020年2月にも、昭和大学先端がん治療研究所の今村准教授らのグループが、国際的な論争「乳がんタモキシフェン療法におけるCYP 2D6遺伝子型に基づく個別化治療は必要か」に、決着をつける臨床試験結果を発表して話題となった。

教職員の多くは、臨床の現場で仕事をしているため、研究分野も患者を題材とした臨床研究が中心だ。そこで大学では「昭和大学統括研究推進センター」を設置して、研究推進、臨床研究支援、研究支援事務の3領域から、彼らの研究を手厚くサポートしている。社会が求める医療職の学び舎として、また、国民の健康に寄与する研究拠点としても注目したい。

【チーム医療人の育成】時代のニーズに対応できる医療人を育成。
【チーム医療人の育成】時代のニーズに対応できる医療人を育成。
学長、医学博士
久光 正
久光 正
ひさみつ・ただし
1981年昭和大学大学院医学研究科修了。同大学医学部第一生理学助教授、教授を経て、2008年から学校法人昭和大学理事、2012年からは昭和大学医学部長を務める。2017年に同大学副学長、富士吉田教育部長、医学部附属看護専門学校長に就任。2019年より現職。