ランク差は約50大学分、総合スコア差は約13ポイント

 4大学とも総合で150位以内にランクイン。ランク順に並べると「近龍産甲」となります。近畿大学と甲南大学のランクには約50大学分の差がありますが、総合スコア50前後は数ポイントで順位が大きく変動するスコア密集地帯ですので、ランクの差ほどは総合力に違いはないと言えるでしょう。
 さらに分野別スコアを見ると、大学間で特徴の違いがあります。資金力が大きく影響する「教育リソース」は、近畿大学のみがランクインしました。「教育満足度」は4大学とも比較的高スコアですが、近畿大学と龍谷大学が頭一つ抜けています。「教育成果」は、甲南大学がやや低いスコア。「国際性」は、京都産業大学がやや高い一方、近畿大学はランク外となりました。

※「=」は同順位の大学あり。101位以下は10位ごとのランク表示。
※「=」は同順位の大学あり。101位以下は10位ごとのランク表示。

実学教育に定評の近畿大学、学びのケアが厚い龍谷大学

 近畿大学は4大学の中で唯一、世界ランキングにもランクインしています。世界版でスコアが高いのは、「研究の影響力」「産業界からの収入」の2分野。日本版において、4大学中唯一「教育リソース」でランクインしたのは、資金力だけでなく、研究力の高さも影響したと考えることができます。
 「教育満足度」のスコアは4大学中、最も高く、全体でも23位と上位です。クロマグロの完全養殖に代表される実学教育の徹底が、入学後に伸びる大学として高校教員に理解されている様子がうかがえます。グローバル教育の面ではやや立ち後れていたものの、2016年度に国際学部が新設され、今後に期待が持てます。

 龍谷大学は、「教育満足度」が近畿大学に次いで高いスコアです。学習をサポートする制度の充実が特徴的で、例えば、ラーニングコモンズ(グループワーク、調べ物、語学学習などに使える学習スペース)には、レポート等のライティング支援を行う大学生、英語のレッスンを行う交換留学生などが配置されています。また、「学生部チューター制度」を導入。学業と課外活動の両立に悩んでいる学生を対象に大学院生が個人指導を行う制度で、無料で利用できます。
 一方、「国際性」のスコアは伸びていません。ランク上位大学と比べると、外国人の学生、教員の割合が高くないことを示しますが、受け入れ留学生数は2016年後期の時点で435人で、2020年に750人規模に拡大することを目標に掲げています。

国際性が特色の京都産業大学、研究に期待の甲南大学

 京都産業大学は、4大学の中で最も「国際性」のスコアが高い大学です。外国語学部には専攻できる言語が10言語あり、多数の外国人教員が在籍しています。1年次の春休みには、約3週間の海外実習プログラムが学部生全員に開かれています。こうした学びによるグローバル人材の育成力は、「教育満足度」のスコアにも影響を与えているでしょう。
 こうした外国語学部の「国際性」が大学全体のスコアにつながっている面もあります。他学部を志望先として検討する場合は、その学部の環境、学びが希望に沿っているか確認することが大切です。
 理系3学部には、外国語学部とのコラボレーションにより、英語を武器に世界に挑むことのできる人材を育成するグローバルサイエンスコースが設置されました。このように、外国語学部のリソースを生かした学部横断的な取り組みに注目したいところです。

 甲南大学は、4大学の中で抜きんでたスコアはありませんが、「教育満足度」は全体の中で78位と、上位につけています。
 文理8学部を持つ総合大学でありながら、学生数は約9000人と4大学の中では最少です。大学も少人数教育やアットホームさを特色として打ち出し、各種メディアの「面倒見の良い大学」ランキングにランクインすることも珍しくありません。入学直後からスタートする、1クラス20名前後で行われるゼミ形式の授業は少人数教育を象徴するものです。また、前期末と後期末に「授業改善アンケート」を実施。教員は、改善したい点や学生へのコメントを大学ポータルサイト上で返すなど、コンパクトさを生かしたきめ細かな対応が見られます。
 『大学ランキング2018』(朝日新聞出版)によると、理学部の大学院進学率は全私立大学の中で3位。こうした実績を土台とした研究力の高さが認められれば、教育リソースや教育成果のスコアも上がっていくと考えられます。