分野別ランキング<教育充実度>で見えてくる高校教員からの信頼

 THE世界大学ランキング日本版2018(以下、日本版ランキング2018)の「教育充実度」分野のランキングでは、「どれだけ教育への期待が実現されているか」を見ることができます。これは、高校教員への評判調査の結果をスコア化したものです。調査の内容には「グローバル人材育成の重視」と「入学後の能力伸長」の2つがあります。
 このような調査項目のため、「教育充実度」分野にランクインしている大学は、高校教員から特に期待度が高い大学と言えそうです。一方で、ランクインしている大学の中には、設立からまだ数十年の、比較的“若い”大学も見られます。歴史が浅くても、高校から一定の評判を得ている背景には何があるのでしょうか?
 「教育充実度」分野にランクインした大学の中で設立20年以内の大学に焦点を当て、学問分野が融合したカリキュラムや新しい学びの形式に則った教育など、「教育充実度」に関連する取り組みを紹介します。

設立20年以内の大学が取り組んでいる教育内容

 「教育充実度」分野にランクインしている大学の中から、設立20年以内の大学をピックアップし、教育の特色や取り組みを紹介します。

立命館アジア太平洋大学
 2000年に設立された立命館アジア太平洋大学は、「教育充実度」分野のランキングで21位にランクインしています。
 立命館アジア太平洋大学は、「自由・平和・ヒューマニズム」「国際相互理解」「アジア太平洋の未来創造」を基本理念とし、グローバル教育に取り組んでいます。その成果は、日本版ランキング2018の「国際性」分野のランキングで2位という上位ランクインを果たしていることにも表れています。
 立命館アジア太平洋大学のキャンパスは日本語と英語が公用語で、授業科目のおよそ90%は日英二言語で開講されます。また、学生の半数近くが外国人留学生で、教員も約半数が外国籍という多文化な環境を誇っています。
 特徴的なプログラムとして、Honors Program for Global Citizenship(以下、HPGC)が挙げられます。これは、立命館アジア太平洋大学の人材育成のモデルとなる学生を育成するため、2016年度の秋セメスターから開始した、4年間にわたるプログラムです。
 HPGCは3つのコアで構成されています。1つめのコアは、GPA・単位数・言語スコアにおいてプログラムに定める基準を維持・達成する「アカデミック・コア」。2つめがリーダーとしての資質を伸ばすための定期セミナー、合宿、外部講師や校友会による講演やワークショップに参加する「フューチャーリーダー・コア」。そして、3つめが地域社会に現存する社会問題や課題に取り組むサービスラーニングに取り組む「サービスラーニング・コア」です。4年間のプログラムを受けた学生は、集大成として卒業制作を行い、発表します。
 これらの取り組みが、グローバル人材はもちろん、これからの社会を支える人材を育成しているとして、高校教員からの評判につながったのではないかと考えられます。

公立はこだて未来大学
 2000年に設立された公立はこだて未来大学は、「教育充実度」分野で112位にランクインしています。
 公立はこだて未来大学は、システム情報科学部の1学部からなる単科大学です。情報技術だけでなく、デザイン、アート、コミュニケーション、認知心理学、複雑系、人工知能といった、それぞれ独立したジャンルを有機的に融合させた学問を扱います。さらに、従来の「知識獲得」のみを目指す教育ではなく、社会に出てから役立つ、「解のない複雑な問題に対する問題解決能力」の育成を目指しています。
 大学教育の特色として、「オープンスペース、オープンマインド」があります。これは、教室の仕切り・科目の仕切り・教育を受ける人と授ける人の仕切りを取り払い、共同作業として学修を行うことを指しています。この理念を実現するため、公立はこだて未来大学の施設・設備には、吹き抜けやガラス張りが取り入れられ、アクティブラーニングを行いやすい教室のデザインが採用されています。
 「オープンスペース、オープンマインド」の理念は、建築などハード面に限りません。教育理念を反映した学修として、3年次に行う「プロジェクト学習」が挙げられます。このカリキュラムは、実社会の中で学生が自ら問題を見いだし、チームワークを発揮しながら、1年間をかけてモノづくりやシステムづくりで解決をめざすというものです。学生は、解決に必要な知識・スキルを得るところから始め、実際にプログラムや製品を制作したり実験をしたりして、その結果を様々な機会で発表します。
 このように、公立はこだて未来大学の「解のない複雑な問題に対する問題解決」や「共同作業」の取り組みが、高校教員からの評判につながったのではないでしょうか。

共愛学園前橋国際大学
 共愛学園前橋国際大学は、1999年に、前身の共愛学園女子短期大学を全面改組する形で設立されました。「教育充実度」分野のランキングにおいて、126位にランクインしています。
 共愛学園前橋国際大学は、大学名になっている「共愛=共生の精神」を建学の理念としています。その理念のもとで、「国際社会の在り方について見識と洞察力を持ち、国際化に伴う地域社会の諸課題に対処することのできる人材の養成」を目的とした教育を行っています。共愛学園前橋国際大学では、このような大学の教育理念に基づいた、ユニークなプログラムが多数あります。
 特徴的なのは、学生同士が助け合う活動が多いことです。例えば、チューターの学生がコンピュータの不具合への対処やソフトの使い方やパソコン購入のアドバイスなどを行う「ITサポート」、学生が英語学習のサポートをする「英語アカデミック・ピア・チューター」、留学生の学修やキャンパスライフを支援する「留学生チューター」などです。大学全体で、このような学生同士がサポートし合う取り組みを推進しています。
 また、教育の面では、「電子商取引演習」も特徴的です。この授業で、学生は数人のチームに分かれて仮想の企業を作り、商品を開発して、インターネットを通じた電子商取引を体験します。売れそうな商品ができた場合には、支援企業の判断で実際の製造販売が行われる場合もあります。
 過去には、共愛学園前橋国際大学が位置する群馬県の名産品である絹製品を開発・販売する仮想企業「繭美蚕(まゆみさん)」が商標登録されました。「繭美蚕」は、ゼミを通して引き継がれ、現在でも学生の手による商品の販売や新商品開発が続いています。
 これらの取り組みによって、学生は共生や社会の仕組みに目を向けることができたため、高校教員からの評判につながったのかもしれません。

 このように、この20年の間に設立された大学では、新しさを生かした様々な教育の取り組みが行われています。
 日本版ランキング2018には、歴史の古い大学だけでなく、高校教員や保護者の方々が大学選びをする頃には、まだ設立されていなかった新しい大学もランクインしています。気になる大学を見つけたら、ぜひ、詳しく調べてみてください。