日本版ランキング2019で新しくランクインした国公立大学の顔ぶれ

 2019年3月27日、日本版ランキング2019が発表されました。日本版ランキング2019の総合ランキングでは、15校が新しくランクイン。設置区分の内訳は、国立1校、公立3校、私立11校でした。
 国公立大学で新しくランクインを果たした4校は、いずれも西日本の大学です。国公立大学は「教育リソース」のスコアが高い傾向にあり、新しくランクインした4校もすべて「教育リソース」分野のランキングにランクインしています。

総合ランキングに新しくランクインした各大学の取り組み

 日本版ランキング2019で総合ランキングに新しくランクインを果たした国公立大学のうち、3校の取り組みを紹介します。

■奈良女子大学
 奈良女子大学は、1908年に設置された奈良女子高等師範学校を前身とする歴史ある国立大学です。
 「教育リソース」分野のランキングで67位タイにランクインしています。また、「国際性」分野にもランクインし、110位タイです。
 「国際性」は、どれだけ国際的な教育環境になっているかを示す指標で、「外国人学生比率(5%)」「外国人教員比率(5%)」「日本人学生の留学比率(5%)」「外国語で行われている講座の比率(5%)」という4項目からランク付けされています。
 奈良女子大学では、様々な留学・海外研修プログラムが制度化されています。さらに、グローバル教育で特徴的なのは、学生の海外活動準備や語学学習、大学内での国際交流の機会など、様々な面でのサポートが行き届いていることです。これらの情報はすべて、在学生向け情報サイト「“ならじょ”から留学‼」にまとめられています。このような環境が、学生にとっての海外に対する「敷居」を低くし、海外への挑戦を後押ししているのではないでしょうか。
 奈良女子大学では、毎年約20人に1人が留学や研修等で海外を訪れ、外国人留学生の受け入れ数も年々増加しています。これらは、学生と国際交流をつなぐ様々な取り組みの成果だといえるでしょう。

■滋賀県立大学
 滋賀県立大学は、「教育リソース」分野で93位、「教育成果」分野で129位に、それぞれランクインしました。
 「教育成果」はどれだけ卒業生が活躍しているかを示す指標で、「企業人事の評判調査(8%)」と「研究者の評判調査(8%)」からスコア化されています。
 滋賀県立大学で特徴的なのは、「人が育つ大学」を目指すという教育方針です。
 例えば、専門科目を4年間にわたって学べるようカリキュラムを編成し、4年一貫教育を実施しています。これにより、それぞれの学部に入学した学生は、1年次から専門分野の講義を受けることができます。
 フィールドワークや実験・実習などにおいて、少人数による対話・討論型の授業が多くあることも、「人を育てる」教育の一つです。滋賀県立大学では、教員と学生の日常的な触れ合いを重視するという基本方針のもと、教育の原点である人間と人間の触れ合いの機会を提供しています。
 このような教育により、滋賀県立大学の2017年度卒業生の進路状況は、大学院進学希望者の進学率が100%、就職希望者の内定率は、全国平均(97.6%)を上回り、98.7%でした。また、2017年度の国家試験合格率は、看護師、保健師、助産師、管理栄養士のそれぞれで100%を誇ります。

■山口県立大学
 山口県立大学は、「教育リソース」分野137位、「教育充実度」分野114位、「国際性」分野79位にランクインしています。新しくランクインした4大学の中で、唯一、「教育充実度」分野でのランクインを果たしました。
「教育充実度」は、どれだけ教育への期待が実現されているかを示す指標で、学生調査(18%)と高校教員の評判調査(12%)をもとにスコア化されています。
 山口県立大学では、地方の公立大学ならではの地域密着と、教員と学生の距離の近さが特徴です。その特徴を生かし、正課の授業科目だけでなく、それぞれの学部学科ならではの正課外教育にも積極的に取り組んでいます。
 その一つに、看護栄養学部栄養学科の学生による「食育プログラム開発チーム 食育戦隊ゴハンジャー」の活動があります。これは、地域の子どもたちに、楽しみながら食について学べる食育プログラムを提供するものです。毎回、学生たちの工夫に溢れる活動がなされ、2017年度に「第1回食育活動表彰」(農林水産省)において農林水産大臣賞を受賞しました。
 そのほかにも、産学官連携として、公的団体や地元の企業と共同で研究を行ったり、受託研究を行ったりしています。特に、地域振興に関する研究が盛んです。代表的な例としては、山口県産品の販売促進の取り組みや、地域のバリアフリーマップの作製などが挙げられます。
 また、中国地方の大学・短期大学、企業、公的団体と連携し、地元の中小企業でのインターンシップや就職支援も進められています。
 このような地域密着型の実践的な取り組みが、学生自身が実感できる成長につながり、「教育充実度」分野におけるスコア伸長につながったのではないでしょうか。

 日本版ランキング2019で、関心ある大学の4分野のスコアを比較すると、それぞれの特徴の違いが浮かび上がってくるはずです。