大学の社会貢献の取り組みをSDGsの枠組みで可視化

 「THE大学インパクトランキング2019」は、国連のSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の枠組みにより、大学の社会貢献度をランク付けしたものです。
 SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に明記されている2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するために達成すべき目標(ゴール)が、「貧困」「教育」「ジェンダー」「エネルギー」「気候変動」など17項目で設定されています。SDGsは、先進国を含む全ての国が行動する「普遍性」、地球上の誰一人として取り残さない「包括性」、全てのステークホルダーが役割を担う「参画型」などがコンセプトとして掲げられています。
 「THE大学インパクトランキング2019」では、これらSDGsの17の目標のうち、大学と関係が深い11の目標に関する取り組みが指標化されました。このランキングには各国から560の大学がエントリーし、462位までの総合ランキングとして2019年4月3日に初めて発表されました。

SDG別のランキングに日本の大学が多数ランクイン

 「THE大学インパクトランキング2019」の指標となっているSDGsの11の目標のうち、SDG17(パートナーシップで目標を達成しよう)は総合ランキングのエントリーの必須項目です。各大学は、SDG17(パートナーシップで目標を達成しよう)に加えて任意の3つ以上のSDGについてデータを提出し、SDG17以外でスコアの高い3つが総合ランキングに反映されます。
 総合ランキングには、日本の大学の41校がランクインしました。
 また、総合ランキングとは別に、SDGごとのランキングも発表されています。SDG別のランキングにも、日本の大学が多数ランクインしました。下の表はSDG別のランキングにランクインした日本の大学の数と、その中で特に上位にランクインした大学を示しています。

SDG別のランキング上位大学の社会貢献に関連する取り組み

 100位以内にランクインした日本の大学数が最も多い、SDG12(つくる責任つかう責任)で、日本の大学トップは三重大学でした。その取り組みを紹介します。

■SDG12 31位:三重大学
 SDG12という目標からは、責任ある消費と、資源の持続可能な利用に対する「大学の研究の貢献度」がわかります。
 三重大学では、2016年度から地域で活躍できる環境人材を育成する「科学的地域環境人材育成事業」を行っています。この事業は、環境を網羅的にカバーする講義群「地域環境科学分野」の受講修了者に、「科学的地域環境人材(アナリスト)」の称号を付与するものです。地域の環境を保全し、環境価値を利活用して地域活性化を図ることを主な目的としています。
 環境について深く学ぶ機会を提供したことが、SDG12へのランクインにつながったのかもしれません。

 一方で、日本の大学の上位ランクインが少ないSDGもありました。SDG5(ジェンダー平等を実現しよう)では、日本の大学のうち100位以内のランクインがなく、SDG4(質の高い教育をみんなに)とSDG10(人や国の不平等をなくそう)では、100位以内にランクインした大学は、それぞれ1校のみでした。
 SDG4で日本の大学でトップの神田外語大学と、SDG10で日本の大学でトップの宇都宮大学について、特徴的な取り組みを紹介します。

■SDG4 62位:神田外語大学
 神田外語大学がランクインしたのは、SDG4という目標です。地域における教育リソースの公開、社会人向けプログラム開講など、生涯学習の機会提供における貢献度などが表れています。
 神田外語大学では、定期的に、社会人を対象に英会話講座をはじめ中国語、韓国語、スペイン語を教える教育講座や、高等学校・中学校英語教員を対象とした「英語教育公開講座」を実施しています。また、地域住民とのコミュニケーションをめざして、琴や三味線の教室や、文化講座も行っています。
 さらに、日本の学生食堂で初めてNAHA(日本アジアハラール協会)より「ムスリムフレンドリー・ハラール証明」を取得した学生食堂「食神」を一般に開放しています。神田外語大学では、この食堂の一般開放によって、アジアの食文化について学ぶ機会を提供しています。
 教育の機会を、大学内だけではなく大学外に向けても開くことが、SDG4の上位ランクインにいい影響を与えたのではないでしょうか。

■SDG10 82位:宇都宮大学
 宇都宮大学がランクインしたのは、SDG10という目標です。社会的不平等に関する大学の研究、差別に関する方針、発展途上国からの職員や学生を勧誘するなどの社会貢献度合いを見ることができます。
 宇都宮大学では、日本の先住民族であるアイヌの文化・歴史について深く学ぶ教育プログラムの開発を行っています。アイヌ民族は長い間、日本で差別的な扱いを受けていました。そのアイヌ民族の文化や歴史を学ぶことにより、民族間の差別を無くそうという取り組みです。
 そのほかに、HANDSプロジェクト(外国人児童生徒支援事業)という事業を発足しました。このプロジェクトでは、外国人児童生徒教育を担当する教員が情報を交換する場を提供し、教育支援を行っています。外国人児童を受け持った教員の戸惑いや不安に対してサポートを行う体制が、外国人児童・生徒への充実した教育に役立っていると考えられます。
 このような取り組みが、宇都宮大学のSDG10への上位ランクインにつながったのではないでしょうか。

 「THE大学インパクトランキング2019」にランクインした大学を見てみると、社会のためになる取り組みをさまざまな形で行っていることがわかります。紹介した3校のほかにも、多くの大学が社会貢献につながる活動を展開しています。興味を持った人は、インパクトランキングを見てみてはいかがでしょうか。