THE世界大学ランキング日本版の「外国語で行われている講座の比率」とは何か

 THE世界大学ランキング日本版のWebサイトでは、THE世界大学ランキング日本版2021のデータをもとに、ランクインした大学の「外国語で行われている講座の比率」を公開しています。
 この比率には、外国語を教える科目数ではなく、外国語を用いて授業を行う科目数を用いています。具体的には、「2019年度に外国語で行われた科目数(語学を除く)/全科目数」で算出されます。
 日本人学生にとっては、グローバルな環境に身を置くことができるため、さまざまなメリットがあります。例えば、リスニングやスピーキングの能力が身に付き、外国語を生きた言語として使いこなせるようになります。また、外国語で行われる授業は、留学生にとっても学びやすい環境だといえます。
 「外国語で行われている講座の比率」が特に高い大学は、立命館アジア太平洋大学(77.8%)と、国際教養大学(75.2%)です。その2大学に東京工業大学(55.8%)が続きます。比率が高い10校を見てみると、国立大学が半数以上を占めています。国立大学は、開かれた大学をめざす取り組みの一環で、「国籍を問わず学べる場」を提供しているため、「外国語で行われている講座の比率」が高い傾向にあると考えられます。
 THE世界大学ランキング日本版2021の、「国際性」分野のランキングにランクインした大学の中から、「外国語で行われている講座の比率」が高いトップ3校を紹介しましょう。

外国語で行われている講座の比率が高い大学3選①立命館アジア太平洋大学

 立命館アジア太平洋大学は、THE世界大学ランキング日本版2021の「国際性」分野のランキングで2位でした。外国語で行われている講義の比率は77.8%です。国際性の優れた、立命館アジア太平洋大学における、特徴的な教育の取り組みを紹介します。
 世界中から学生が集う立命館アジア太平洋大学は、講義の多くを日英の二言語で開講しています。そのため、英語で専門分野について学べます。入学後は、英語のテストを受験し学生一人ひとりのレベルに応じた英語教育が行われるという特徴があります。
 さらに、学んだ語学を実生活で活用するための、コミュニケーション能力を高める教育にも力を入れています。例えば、新入生向けの「ピアリーダートレーニング入門」という科目では、対人関係能力や日英二言語でのディスカッション方法、時間管理についてなど、多文化環境を活用していくためのスキルを学ぶことができます。
 なお、大学院では、全講義を英語で行っています。分野を問わず、実践的な英語に触れられる点も魅力でしょう。
 このように、立命館アジア太平洋大学には、学術的な語学力に加えて、海外でも通用するコミュニケーション能力を培うことができる教育環境が整っています。学生たちは、必然的に外国語に触れる機会が増えるため、国際性が身に付きやすいといえるでしょう。

外国語で行われている講座の比率が高い大学3選②国際教養大学

 国際教養大学は、THE世界大学ランキング日本版2021の「国際性」分野のランキングでトップでした。外国語で行われている講座の比率は75.2 %です。
 国際教養大学は、「全ての授業を英語で開講している」という大きな特徴があります。さらに、1クラスあたり18名ほどの少人数授業を徹底しているため、教員と学生のコミュニケーションの機会が多いことも特徴の一つです。「英語で学び、英語で考える」という考えのもと、学生が自ら考え、意見を述べる環境が整っています。
 また、「イングリッシュビレッジ」と呼ばれる取り組みも、主な特徴として挙げられます。「イングリッシュビレッジ」とは、事前に教員からトレーニングを受けた学部生(や留学生、院生)が、中高生に対して英語で授業をする取り組みです。これによって、英語を学ぶと同時に、教える視点からの気づきが得られ、自律的・能動的な学習につながります。

 国際教養大学は、コロナ禍の影響を受けている大学の一つです。2020年度までは、1年間の海外留学が卒業要件でした。しかし、コロナ禍の影響を受け、2021年春学期はオンラインによる「バーチャル留学」、または大学が認定する「Independent Study: Study Abroad Alternative」の履修により、卒業要件である留学を免除する非常時対応を行っています。留学を希望する学生には、渡航留学が可能になり次第、あらためて留学する機会が提供される予定です。
 このように、国際教養大学では、優れたコミュニケーション能力を持った、実践力のある人材を育成するという目的を達成するため、グローバルかつ柔軟な取り組みが豊富に行われています。

外国語で行われている講座の比率が高い大学3選③東京工業大学

 東京工業大学は、THE世界大学ランキング日本版2021の「国際性」分野のランキングにて、25位にランクインしています。また、外国語で行われている講座の比率は55.8 %でした。東京工業大学の教育の主な取り組みを紹介します。 
 東京工業大学では、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2020年4月から、海外協定校等との交流実績をもとに、オンラインをこれまで以上に活用した国際教育を実施することになりました。オンライン教育の一つとして、2018年から行われている、ジョージア工科大学の講師による共同授業が挙げられます。グループワークやディスカッションを取り入れた授業は、学生たちが講師・ティーチングアシスタント(TA)・クラスメートと積極的に交流できるように設計され、13時間の時差の壁を超えたコミュニケーションを実現しています。オンラインを通じて積極的な交流が図られ、学生からは、「オンラインでの共同授業になってから、より気軽に参加できるようになった」という声が挙がっています。
 また、東京工業大学は、2021年1月末まで、「ハブ・インターナショナル・コミュニケーションズ・スペース(以下、HUB-ICS)」と呼ばれる、国際交流の場を設けていました。HUB-ICSでは、日本人学生や留学生、教職員などが集まり、国籍や年齢、専門分野を問わず、多言語での会話が行うことが可能でした。
 そして、2021年2月には、「Hisao & Hiroko Taki Plaza」という新たなランドマークが誕生。HUB-ICSの役割や機能が受け継がれるとともに、グループ学習、留学の情報交換の場が設けられるなど、より多角的なサポート体制が整えられました。今後は、「Hisao & Hiroko Taki Plaza」が拠点となり、これまで以上に活発な国際交流が行われることが期待されます。
 このように、東京工業大学は、対面の授業にとどまらず、国際的な交流の場が豊富であるといえます。