西日本で「教育充実度」分野のランクを上げた私立大学は?

 THE世界大学ランキング日本版の指標の一つである「教育充実度」とは、「どれだけ教育への期待が実現されているか」を表します。実際にその大学に通う在学生への学生調査と、高校教員の評判調査の結果が指標化されています。
 「教育充実度」分野で上位に入る大学は、授業・指導の充実度はもちろんのこと、教員・学生の交流や、協働学修の機会の確保、学修を進める上でのサポート体制の整備など、さまざまな視点から評価されているといえます。
 2022年度の世界大学ランキング日本版において、「教育充実度」分野のランクを上げた西日本の私立大学は、17校ありました。
 そこで、その17校のうち、大幅に順位を上げた3校をピックアップして特色をご紹介します。

教育充実度の順位が上昇した大学の取り組み①甲南大学

 西日本の私立大学において、教育充実度の順位が大きく上昇した3校の取り組みについて紹介します。
 最初に、甲南大学の取り組みについて説明します。甲南大学の「教育充実度」スコアは61.9で、分野別のランキングでは12位上昇し103位となりました。
 甲南大学は人文科学・社会科学・自然科学の3分野8学部を備え、少人数制の授業を基本としています。また、専門性だけでなく、学部の垣根なく交流しさまざまな専門に接する、「融合力」を身につけることを目標としているため、多数の専門分野について広く学ぶことができることが特色として挙げられます。
 この目標のもと、「全学共通教育センター」が設置されており、全ての学生を対象に、基礎共通科目、国際言語文化科目、外国語科目、保健体育科目、キャリア創生共通科目など、充実した全学共通教育を提供しています。例えば、基礎共通科目の中で選択必須科目となっている「共通基礎演習」では、学部を超えた学生同士が少人数のグループを作り、ひとつのテーマについて協働して取り組むプロジェクト型学習を行います。この演習を通して、自分と専攻が異なる学生とも密接にコミュニケーションをとることができます。
 また、受験希望者やその保護者など、未来の学生への支援を行う「アドミッションセンター」があるのも特色のひとつです。甲南大学受験に関わる情報提供・相談受付や、キャンパスを見学できるフリーキャンバスビジットの実施を行っています。

教育充実度の順位が上昇した大学の取り組み②福岡大学

 次に、福岡大学の取り組みについて紹介します。
 福岡大学の「教育充実度」スコアは64.0、分野別ランキングは9位上昇して92位でした。
 共通教育科目の履修を通して、学部・学科を横断した教養を身に付けることができるのが福岡大学の大きな特徴です。
 また、教員による授業のフォローアップが充実していることも、特色のひとつです。例えば、各教員が学生の相談に応じる専用の時間帯として「オフィス・アワー」が設けられており、学生が学習の方法や研究上の指導を受けたり、学生生活等を相談したりすることができます。さらに、円滑な授業の実施のための「授業支援システム」があり、講義レジュメや資料の確認、レポートの提出、意見交換などをオンラインで行うことができます。これらのサポート体制により、教員と受講者間のコミュニケーションが活発に行われています。
 そして、福岡大学では、大学院生による大学生へのサポート制度を整えています。学生の図書館の利用をサポートする「ライブラリー・アシスタント」は、レポートや論文を書くために必要な情報の選択方法、論理的な文章の書き方指導やパソコンの操作方法の説明などを行います。
 このように、学生間の交流だけでなく、対教員、対院生の交流といった幅広い分野の人達からサポートしてもらうことができることが、学生の学修意欲や満足度の向上につながっていると考えられます。

教育充実度の順位が上昇した大学の取り組み③関西大学

 最後に、関西大学の取り組みについて紹介します。
 関西大学の「教育充実度」スコアは71.3、分野別ランキングでは6位上昇して53位タイでした。
 関西大学は、自ら考え行動する力「考動力」の育成に力を入れており、自主的な学修をサポートする体制が整っているのが特徴です。
 例えば、初年次の学生向けの共通科目である「スタディスキルゼミ」では、少人数のゼミ形式で情報の探し方やレポート作成に必要な思考法、文章力などを学ぶことができます。
 また、「ラーニング・コモンズ」「コラボレーションコモンズ」の2種類の自主・協働学修の場が設けられています。ラーニング・コモンズは目的別の4つのエリアに分かれ、少人数のグループ学習や発表準備、ワークショップなど幅広い用途に用いることができます。一方、コラボレーションコモンズは、課外活動や授業外学習に取り組む学生を支援するために開設されています。サークルのメンバーとの打ち合わせや、留学経験者との交流などに利用することができるため、キャンパスの外でも学びや活動の幅を広げたい学生に適している施設です。
 このように、学修のサポートだけでなく、課外活動や学生同士のコミュニケーションへのサポートが手厚いことから、関西大学の学生の充実度が上昇していると考えられます。