Q 取り組みの背景は?

 本校では、10年以上前から海外大進学を推進しています。国境の敷居が低くなれば、さまざまな出会いや経験を求めて、若者が海外に出ていくのは当然です。そんな彼らに、海外で学ぶための技術や機会を提供することは、学校の責務だからです。
 ここ数年は毎年、学年の1割にあたる30~40人が海外大に進学しています。2018年度入試では34人でした。進学者が1割程度いるということは、希望者は2、3割はいるということです。元々、海外進学クラスを設けていましたが、この規模まで希望者が拡大したため、2018年度入試から、海外進学クラスを廃止しました。今は各クラスにいる希望者を学年全体で指導しています。

Q 指導のしかたは?

 指導をするにあたっては、大学の校風、入試や授業のレベル、住環境や費用等の現地情報が欠かせません。そのため、留学経験のある教員や、7つ*1の外国語コースの言語専門の教員が、それぞれの情報源を活用して、情報収集に努めています。本校の教員でカバーできない大学は、「世界教室」*2で交流のある21か国・地域のパートナー校からも情報を集めています。
 志望校選びでは、世界中の大学が選択肢になります。そのため、自分が学びたいことを実現できる大学はどこかを、とことん突き詰めて考えさせます。当然、指導は個別に行います。しかし、生徒の動機付けには、あまり手間はかかりません。海外進学での大学選びでは、費用やさまざまな手続きにかかる労力など、国内進学よりも大きなパワーが必要になります。生徒もそれを理解していて、本気で大学選びに向き合うからです。
 受験予定大学が決まれば、そこで必要とされる語学力などのスキルの習得にも、生徒は本気で取り組みます。自分に必要なものだとの自覚があるからです。

*1 英語、中国語、ロシア語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語。
*2 同校が主導する学校間ネットワーク。各国・地域の代表生徒が2週間共に過ごす「世界教室国際フォーラム」や、交換留学を実施。

Q 進学者の特徴は?

 「自分の人生を自分でつくっていく」という意識が強いのが特徴です。そのため、中途半端な勉強はしたくないとの考えを持っているようです。
 一方で、日本の大学には多様なメニューが用意されていますが、そこでどんな力が身に付くのかがぼんやりしているように感じます。夢を本気で実現しようとする生徒は、海外の大学のほうが実現できそうなイメージを持っているようです。

Q 日本の大学に一言

 韓国の大学に進学した本校の卒業生で、在学中にタイ、ラオスなど東南アジアに留学して、そこで多数のネットワークを築いた女子生徒がいます。今、韓国の外務省や領事館、タイの大使館などが彼女の争奪戦をしています。
 中学校での彼女の成績は、学年の真ん中くらい。そんな彼女が日本の大学に進学したとして、今の状況があり得たでしょうか。少子化が進む中、より一層、一人ひとりの可能性に注目した人材育成が求められていると思います。

関東国際高校 副校長
黒澤 眞爾
黒澤 眞爾
くろさわ・しんじ
1989年韓国嶺南大学大学院修士課程修了。アジア学生文化協会アジアセミナー韓国語主任等を経て、2013年より現職。