英語スキルの大衆化と大学の外国語教育

 1990年ごろから、グローバル化の進展により、グローバル教育の必要性が唱えられています。
 文部科学省は「学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050年ごろには、(中略)国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される」と発表しています。また、英語が使えることを目標とした教育を行うのではなく、「『コミュニケーションの手段』としての英語」「仕事で英語が使える人材の育成」という観点での英語教育を重視しています。
 このようなグローバル社会で役立つコミュニケーション能力の必要性の高まりに伴い、大学では、さまざまな英語教育改革が行われています。
 大学の研究やビジネスでも、英語は必須のスキルで、「英語を話せることより、英語で何を話すか」が大事とされています。
 今後、音声認識や機械翻訳の質が向上し、将来的に英語スキルに関しては、人はAIに勝てなくなるとも考えられています。実際に、学校で、英語スキルのある教員の不足を補うために、ロボットを教員の代替として、導入している事例もあります。

特徴ある教育を行う外国語大学

 外国語スキルの獲得のみをめざすのではなく、さまざまなグローバル教育を行う外国語大学を紹介します。

■東京外国語大学
 東京外国語大学には、言語文化学部、国際社会学部、国際日本学部の3学部があります。
 国際社会学部の現代世界論コースでは、グローバルスタディーズを中心とする「世界認識論」、哲学・社会思想、政治理論、エスノポリティクスを中心とする「政治社会論」、ジェンダー論、社会人類学、教育社会学、歴史社会学を中心とする「社会関係論」の3つの柱から、現代社会のさまざまな思想・理論を学ぶことができます。
 また、特徴的な教育プログラムとしては、全学向けの「山形スタディーツアー」が挙げられます。日本の地方の魅力を海外に発信し、優秀な留学生獲得を推進するための取り組みです。地方創生への貢献と、人材育成を目的に実施されています。学生は「果たして地域活性化は『観光』で成し遂げられるものなのか」「地域の方々のためになる『観光』とはどのようなものか」「地域産業活性化の一環として地域の産物を海外に輸出するにはどのような工夫が必要か」という問題意識持ち、フィールドワークをします。8日間のスタディーツアーを通し、学生たちの持つ異文化の視点を観光に役立てることと、学生たち自身が日本の観光を取り巻く構造を体験することの両面が目的とされています。

■関西外国語大学
 関西外国語大学には、外国語学部、英語国際学部、英語キャリア学部の3学部があります。
 英語キャリア学部英語キャリア学科の教育課程には、3年次に1年間の専門留学が設定されています。学生は、英語キャリア学科および留学先の大学で、英語のスキルだけでなく、社会科学の専門知識を学びます。英語キャリア学科のカリキュラムには、3つの分野があります。ビジネスで生かせる英語力を養う「英語プロフェッショナル」、ビジネスや経済、マネジメントなどを学ぶ「グローバル・ビジネス」、多文化共生社会で活躍できる人材を育成する「国際教養」です。
 英語キャリア学科では、教育の目標として「英語を学ぶから"英語で学ぶ"へ」の転換を掲げ、学科の全学生を対象に、専門プログラム「EIP(English Intensive Program)」を行っています。英語4技能を学ぶ科目は、すべてネイティブ講師から英語科目を学ぶ講義です。また、オール・イングリッシュで教養科目や専門科目を学ぶ授業も多数開講しています。
 また、英語キャリア学部以外の学生も受講できる「Super IES プログラム」があります。これは、専門分野を留学先で学ぶことを見据えて開発された、 関西外国語大学オリジナルの英語教育プログラムです。ノーステキサス大学、アラバマ大学、ウェスタンオーストラリア大学、アデレード大学と協働で開発されました。これらの大学は、「英語を母語としない人への英語教育」に定評があります。関西外国語大学は、「Super IES プログラム」により、海外留学さながらの学修の機会を学生に提供しています。

■京都外国語大学
 京都外国語大学には、外国語学部と国際貢献学部があります。
 国際貢献学部は、国際政治や経済学などを社会に応用することをめざす「グローバルスタディーズ学科」と、旅行・ホテル・航空のほか「多文化間交流」としての観光を学ぶ「グローバル観光学科」の2つの学科で構成されています。国際貢献学部のカリキュラムの中心を担う「Community Engagement」では、学生たちが自らプロジェクトを計画し、それを社会の中で実践します。例えば、グローバルスタディーズ学科では、マレーシアにおいて、国立マレーシア科学大学での講義、フィールドワーク、社会福祉施設での実務や現地の家庭訪問を通して、現地の課題解決に取り組みます。
 また、京都外国語大学では、「ピカ☆イチProject」を実施しています。地域貢献や国際貢献に関する学生の自主企画活動を支援するものです。該当する企画は学生によって選考され、採用された企画には、上限20万円の奨励金が支給されます。2018年度の採用プロジェクトでは、滋賀県内のブラジル人学校で進学および日本語学習のサポートを行う活動や、学生が地域の人々や商店と交流する機会としてハロウィンイベントが採用されました。

 今回、紹介した東京外国語大学、関西外国語大学、京都外国語大学は、THE世界大学ランキング日本版2019の総合ランキングにランクインしています。
 詳しいスコアを知りたい方は、ランキングページか各大学のプロフィールページをご覧ください。