小規模な私立大学のランクイン状況

 大学ランキングには大規模大学が名を連ねると思われがちですが、THE世界大学ランキング日本版2019には、小規模な大学もランクインしています。
 ここでは入学定員が1,000人未満の大学を小規模な大学とし、THE世界大学ランキング日本版2019の総合ランキングにランクインしている大学を紹介します。

小規模な私立大学によるアクティブ・ラーニングの取り組み

 小規模な私立大学で、学生同士の協働学修や、学生と教員の双方向の質問タイムなど、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業の事例を紹介します。

■名古屋商科大学
 (2019年度の入学定員:800名)
 名古屋商科大学では、早くからアクティブ・ラーニングに取り組んでいる大学です。2014年には、中部地域の23大学とともに「アクティブ・ラーニング失敗事例ハンドブック」を刊行するなど、アクティブ・ラーニングの実施方法についての研究を重ねています。
 アクティブ・ラーニングを用いた講座の一つに「BBAプログラム」があります。BBAとは「Bachelor of Business Administration」の略で、経営学士のことです。従来、日本で主流の座学による経営学の学修ではなく、欧米のようにケースワークやプロジェクトを通して実践的に学ぶ学修課程であることを示しています。
 名古屋商科大学は、ビジネススクール教育で長年培ったノウハウを生かし、2016年度、日本で初めて教養科目から専門科目までを全てアクティブ・ラーニングで実施する「名古屋キャンパス(BBA)」を開始しました。
 また、名古屋商科大学のアクティブ・ラーニングでは、社会人基礎力を身に付けるための「予習」「グループ討議」「クラス討議」という3ステップを定めています。授業におけるグループやクラスでのディスカッションはもちろん、予習にも力を入れることにより、学生は、自分の考えを深めて論理的にまとめたうえで授業に臨むことができます。
 さらに、アクティブ・ラーニングで学んだことを応用するため、インターンシップへの参加を推進しています。学生からは、インターンシップで実際に社会人とともに働き、将来の目標を明確化できたという声も挙がっています。

■福岡工業大学
 (2019年度の入学定員:915名)
 福岡工業大学は、アクティブ・ラーニングで、2014年度の文部科学省「大学教育再生加速プログラム」に選出されています。「大学教育再生加速プログラム」とは、大学と社会との接続や、大学教育の質向上を目的とした、先進的な取り組みを支援するプログラムです。
 福岡工業大学は、アクティブ・ラーニング型学修により、自律的に考え、行動し、さまざまな分野で創造性を発揮できるような「実践型人材」の育成を目的としています。また、全授業科目のうち80%に、アクティブ・ラーニングの要素を取り入れることを目指して、教授法の質的転換を図っています。
 福岡工業大学のアクティブ・ラーニング型では、知識の定着や、学生からのフィードバックを重視していることが特徴的です。まず、授業1回ごとに学修する内容についての達成目標が提示されます。学生は授業内で学んだ内容について「ミニッツペーパー」(短いレポート)にまとめて提出、教員は学生の理解度を把握します。また、学生同士がグループで学修内容を振り返る時間や、学生と教員が双方に質問をする時間を設けて、学びを深めます。
 さらに、福岡工業大学では、アクティブ・ラーニング型の授業において、学生や先生のサポートをする先輩学生である「クラス・サポーター」の育成を行っています。「クラス・サポーター」は、グループ学習のファシリテートやアドバイスを行ったり、資料の整理などの業務補助を行ったりします。「クラス・サポーター」の導入によって、授業を受けている学生の理解度が上がるほか、サポーターである学生自身にも学びの効果が出ます。例えば、コミュニケーション力や、話し合いを進めるファシリテーションスキルが身に付くと感じています。

 この2大学は、共通して「教育充実度」分野で高いランクを得ています。そのほかの大学の小規模な大学のランクイン状況は、記事下の関連リンクよりご覧ください。