THE世界大学ランキング日本版2020でエリアごとのランキングがわかる

 日本版ランキング2020のWebサイトでは、北海道・東北、北関東・甲信越、首都圏、北陸・東海、近畿、中国・四国、九州・沖縄という7つのエリア別にランキングを見ることができます。
 総合ランキングにランクインしている大学のうち、西日本にキャンパスを構える139校を北陸・東海、近畿、中国・四国、九州・沖縄の4つのエリアで区切り、ランクイン状況や特徴をさぐります。

「中国・四国」と「九州・沖縄」エリアのそれぞれのランキング上位校は?

 中国・四国エリアの上位5大学は、すべて国立大学です。
 上位5校のスコアを見てみると、上位2校の広島大学と岡山大学は、バランスよくどの分野のスコアも高く、鳥取大学、愛媛大学、山口大学は共通して、国際性分野と他の3分野のスコアに乖離があります。ここでは、上位5校の中でトップである広島大学の取り組みを見てみましょう。
 広島大学は「教育充実度」分野、「教育成果」分野で特に高いスコアを獲得しました。
 これらのスコアに関連する取り組みとして、広島大学では、学生がスムーズに大学での学修や研究を行うためのサポート体制が整っていることが挙げられます。
 例えば、学習支援室においては、学生が大学での学修でつまずかないために、英語・数学・物理・化学・生物・地学の学修サポートを行っています。また、情報科目に関する学修サポートも、メディアセンターで行っています。また、メディアセンターでの講習会では、大学生活に必要不可欠なパソコンの基本操作を教えています。さらに、メディアセンターでは、学生スタッフによるオンライン授業の環境サポートも行っています。そのほか、ライティングセンターで学術文章の書き方を解説するなど、学生たちが高校までとは違う大学での学びに対応するための支援が行き届いていることが特徴的です。

 九州・沖縄エリアでは、エリア2位に私立の立命館アジア太平洋大学がランクイン。公立の福岡女子大学もエリア5位にランクインしています。
エリア1位の九州大学を見てみましょう。
 九州大学は総合ランキングでも5位と、上位にランクインしています。特に、教育成果のスコアが高いことが特徴的です。
 九州大学では、九州大学の在学生のための就職活動情報誌を発行し、インターネット上およびスマートフォンアプリで公開しています。学生に人気の就職先についての業界研究など、就職に関する基本的な情報だけでなく、中小企業やBtoB業態の企業など、学生にとって知名度は低いものの安定した就職先の情報や、インターンシップの情報、関西地方や関東地方など遠方での就職活動の仕方など、九州大学の学生に合った情報を届けています。
 また、特徴的な取り組みとして、九州大学オリジナルの「就活手帳」や、九州大学の先輩による就職活動の体験記を掲載した冊子を無料で配布していることが挙げられます。「就活手帳」には、就職活動の基礎知識が載っているページや、便利な就職活動に関するメモページ、九州大学の就職活動支援を紹介するページなどがあります。先輩の体験記は、九州大学の学部や学府を網羅し、さまざまな業界へ就職した先輩の体験記が載っているため、学生は自身の進路や希望に近い体験記で知識を得ることができます。

「近畿」と「北陸・東海」エリアのそれぞれランキング上位校は?

 近畿エリアは、西日本で最もランクイン校数が多いエリアです。THE世界大学ランキング日本版2019で、全国の大学のうち単独1位だった京都大学をはじめ、51大学がランクインしています。また、エリア別の上位8大学が、すべて総合ランキング50位以内ということも特徴です。
 中でも、エリア2位の大阪大学は、どの分野でも比較的高いスコアを獲得しています。「教育リソース」分野に関わる取り組みに注目しましょう。
 大阪大学の「教育リソース」分野に関わる代表的な取り組みとして、研究の企画やマネジメントを行うURA(University Research Administrator)活動が挙げられます。大阪大学では、2009年に「大型教育研究プロジェクト支援室」を設置し、URA活動を始めました。現在、大阪大学の経営企画オフィスURA部門では、英語論文投稿支援、共同研究の立ち上げ支援や研究員ネットワーク構築の支援、外部資金獲得支援を行っています。
 また、さまざまな分野で、ほかの大学にはない特徴的な研究が行われています。例えば、社会経済環境の革新と人々のQOL(Quality of Life:生活の質)向上を目指すライフデザイン・イノベーション研究拠点が挙げられます。ここでは、人々の医療・健康情報であるパーソナル・ヘルス・レコード(Personal Health Records: PHR)と、日常生活、職場や学校での活動、食事、スポーツ活動など、日常生活の様々な活動データを加えたパーソナル・ライフ・レコード (Personal Life Records: PLR)をデータベース管理し、病院やさまざまなセンサーのネットワークとつなげることによって社会全体での健康促進に取り組む研究が行われています。

 北陸・東海エリアでは、工業系の大学が多くランクインしました。
 エリア5位の名古屋工業大学には、生命・応用化学科、物理工学科、電気・機械工学科、情報工学科、社会工学科の5学科があります。
 名古屋工業大学は、「教育充実度」「教育成果」分野で高いスコアを獲得しました。これらの2分野に関係する取り組みを見ていきましょう。
 創造工学教育課程を中心とする教育活動を発展させるプロジェクトが文部科学省の「Society5.0に対応した高度技術人材育成未来価値創造人材育成プログラム(b)科学技術の社会実装教育エコシステム拠点の形成事業」に採択されました。これは、自律的学修のための教材、教育方法、システムの開発といった教育企画や、インターンシップのためのネットワークづくりなど産学官連携教育の推進、海外への学生派遣など国際連携教育の推進にむけた活動を行うものです。
 創造工学教育課程は、学部4年間と大学院博士前期課程2年間を接続した過程で、工学部の全体から8分野8研究室のそれぞれを、1年後期から2か月ずつ体験します。また、工学分野混成のグループによるPBLなど、複数分野を組み合わせて考える機会や、協同学修の機会が豊富です。